Project/Area Number |
22K14722
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 35010:Polymer chemistry-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
一二三 遼祐 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50910147)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 低誘電特性 / ホスフィンスルフィド / 接着性 / 絶縁材料 / 誘電率 / 誘電正接 / 分極機能性ポリマー / 高接着性 |
Outline of Research at the Start |
情報処理/通信の高速化を図る観点から、電子回路に用いられる絶縁材料には低誘電特性/高接着性が求められている。しかしながら、既存の高分子材料では両特性がトレードオフにある場合が多く、性能限界に直面している。 これに対し本研究では、リン・硫黄間に二重結合を有するホスフィンスルフィド(P=S)材料を用いることで従来のトレードオフを打破し得ると期待しており、新たな低誘電/高接着材料群を見出せると考えている。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「低誘電・高接着を志向したホスフィンスルフィド材料の開発」と題し、最先端電子機器等で活用の見込まれる新規絶縁材料を開発することを目指している。 電気信号の低遅延・低損失の観点から近年、絶縁材料の低誘電特性化/高接着化が進められているが、既存の高分子材料では両特性がトレードオフにある場合が多く、性能限界に直面している。これに対し本研究では、リン・硫黄間に二重結合を有するホスフィンスルフィド(P=S)材料の、1)構成元素間の電気陰性度差が小さく極性が低い、2)金属配位性を有するため高い接着性が期待できる、という性質を活用し、従来の限界を突破した材料を実現する。 初年度は、我々が既に合成法を確立していたP=S基含有芳香族ポリエーテルを初期検討の対象として選択し、主鎖構造の対応する市販ポリマー(ポリエーテルスルホン等)と比べて、低い誘電率/誘電正接と、同等以上の接着性を両立し得る結果を見出した。 二年次は、ポリエーテル系材料において、P=S基含有モノマーおよびコモノマー種の構造チューニングを行い、誘電特性の更なる改良を目指した。その結果、産業上のターゲットとなる誘電特性(誘電率2.5、誘電正接0.002)を概ね達成する組成を見出すに至った。また、ポリエーテル系以外の材料として、P=S基含有ポリスチレン誘導体を合成し、同様に優れた誘電特性を見出した。一方で、誘電特性・接着性の改良を狙って設計したポリチオエーテル系材料では、ポリエーテル系に比べて誘電特性が悪化する結果のみが得られた。これらの合成的検討に加えて、計算科学的手法を用いてP=S基含有高分子の低誘電特性の起源を考察し、当初の仮説通り、P=S基の低極性特性が鍵であることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では二年次において、芳香族ポリエーテル以外のP=S基含有高分子の合成法確立とそれら材料の誘電特性を含む各種物性の評価、ならびに、P=S基含有材料と電子回路の配線等に用いられる金属種(Cu、Ni、Ag等)との配位/接着相性を体系的に整理することに取り組む計画であった。 これに対して、①P=S基含有ポリチオエーテル材料およびポリスチレン誘導体の合成を行い、初年次に開発した材料に比べて、前者では誘電特性が悪化する結果に終わったものの、後者においてはより優れた低誘電特性を達成した。さらに本年度の計画の内ではないものの、②初年次から検討を継続していたポリエーテル系材料において組成最適化を進めた結果、本事業の最終到達目標として設定していた誘電特性(誘電率2.5、誘電正接0.002)を概ね達成し、これは大きな進捗と考えている。一方、③接着性については、ポリマー構造と接着性の相関を一部検討したものの、体系的に整理するには至らなかった。 したがって、一部に計画未達な部分があったものの、他の領域では計画前倒しで目標を達成しており、総じて順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三年次では、ポリエーテル系以外の基本骨格をもつ材料を中心に、更なる特性向上を目指して分子設計の高度化を進める。具体的には、優れた誘電特性を示すものの接着性・難燃性に課題を抱えるシクロオレフィン系ポリマーにP=S基を導入することで、諸性能を高い次元でバランスする材料の開発を目指す。シクロオレフィン系ポリマーは一般に遷移金属触媒を用いたプロセスで合成されるが、それら金属触媒に対するP=S基の(悪)影響に関する知見はほとんど解明されておらず、場合によっては新規合成法の開拓を含めた合成化学的検討が必要であると考えている。 また、新たな展開としてP=S基を有する架橋材料の合成も行う計画である。本研究成果の想定応用先である絶縁材料は、製造プロセス耐性やデバイスの長期信頼性の観点から架橋系で用いられる。従来の架橋材料には架橋性と低誘電・高接着性を両立するものが限られており、実用上のボトルネックとなっている。したがって、上記特性を兼ね備える架橋材料の開発は重要な課題であると考えている。
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