近赤外二光子吸収能を持つベンゾピラン型ケージド化合物の開発と生理学実験への応用
Project/Area Number |
22K14785
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 37010:Bio-related chemistry
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
千歳 洋平 九州大学, 工学研究院, 助教 (60911534)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | D-π-D / チオクマリン / 2光子吸収 / ベンゾピラン骨格 / ケージド化合物 / 活性物質 / 2光子吸収能 / 光解離性保護基 / 光励起状態 |
Outline of Research at the Start |
本研究では,理論計算を用いることで高い近赤外2光子吸収能を有する光解離性保護基を設計し,実際に合成を行う.はじめに合成した光解離性保護基の有機溶媒中における光脱保護効率の確認を行う.光反応量子収率や光反応により生成する脱離基の収率を評価したのち,保護基部位に十分な水溶性を有する置換基を導入することで細胞実験への応用を試みる.生物活性物質として,グルタミン酸や抗がん剤などを保護したケージド化合物を合成し,生体内において,近赤外光を照射することで,活性物質の濃度上昇を時空間的に制御し,これまで未解明であった活性物質の活性発現機構の解明に貢献する.
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Outline of Annual Research Achievements |
生体透過性が高く、細胞毒性の低い近赤外領域(680-1050 nm)に2光子吸収能を有する光解離性保護基を開発するためには、保護基の1光子極大吸収波長がおよそ700 nm以上に位置することが望ましい。本研究で設計した電子供与基を有するD-π-D型ベンゾピラン型保護基について、DFT計算から、430-470 nm付近に吸収極大波長を有することが予測されている。発色団の合成を行うため、ローソン試薬を用いて、市販の7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン(1)からクマリンの2位のケトン基をチオニル基に変換し、チオクマリン(2)の合成をすでに達成していた。チオクマリン(2)とBis[4-(dimethylamino)phenyl]methane(3)との反応によってベンゾピラン誘導体の合成を試みたが、反応は進行しなかった。電子供与型メチレン3の代わりに、電子求引型メチレンである3のナトリウム塩(4)を用いて、同様の反応を行ったが、こちらの反応についても進行しなかった。チオクマリン2とフッ素化剤試薬であるTFDAとの反応により、クマリンの2位にジフルオロメタン構造の導入を試みたが、反応は進行しなかった。そこで、カルボン酸とボロン酸のカップリング反応が報告されていることに着目し、チオクマリン2から既存のジシアノベンゾピラン体を合成し、その後シアノ基部位の加水分解反応によってカルボキシル(COOH)基への変換反応を行った。しかし、加水分解反応は進行しなかった。そこで、シアノ基からCOOH基への変換反応の代わりに、チオクマリン2とマロン酸ジエチルのナトリウム塩(5)を反応させ、ベンゾピラン骨格を形成させ、加水分解によってクマリンの2位にCOOH基の導入を試みた。2と5の反応は進行し、生成物を質量分析法によって検出した。今後、反応溶媒と反応温度の検討によって収率を向上させる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の目的である新規ベンゾピラン型ケージド化合物の2光子アンケージング反応を行うためには、既存のチオクマリン誘導体から新規ベンゾピラン型保護基への変換反応を達成し、アミノ酸などの生物活性物質を保護したのち、1光子と2光子励起による光脱保護反応効率を算出する必要がある。発色団の合成において、出発原料である7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリンからチオクマリンへの変換反応は達成しているが、その後の電子供与基を有するメチレンユニットの導入が進行しなかった。この理由として、反応させるメチレンユニットの不安定性が挙げられる。過去に報告されている類似の反応においては、電子求引型メチレン誘導体が反応に用いられており、系中でメチレン基のCH2部位のプロトンが脱離した後、生成するアニオンが電子求引基により安定化され、チオクマリンとの反応が進行すると考えられている。一方、電子供与型メチレンユニットは、上記のような安定化が得られないため、反応系中で分解してしまい、反応の進行を妨げた可能性がある。そのため、発色団の合成経路において、用いる試薬(特にメチレン基)や反応温度、用いる溶媒の検討などの反応条件についてさらなる改善が必要となっている。電子供与型メチレン基とチオクマリンとの反応が進行しない場合、チオニル部位とジアゾ体との環化付加反応か、チオクマリンのハロゲン化を行い、鈴木宮浦カップリングによって目的となるベンゾピラン骨格の形成反応を成功させる必要がある。もしくは、クマリンとメチレン基のチオニル誘導体同士でのカップリング反応によってベンゾピラン保護基を合成する。発色団の合成を達成後は、トルエン溶液中での2光子励起蛍光法を用いた2光子吸収断面積の算出を試みる。さらに、ベンゾピラン型保護基を用いたケージド安息香酸の合成を行い、フェムト秒レーザーによる2光子アンケージングを実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で目的とするベンゾピラン型発色団の合成について、当初の計画通り反応が進行しておらず、合成の反応条件等を見直す必要がある。具体的には、まず、既に合成を達成しているチオクマリン(2)と、マロン酸ジエチルのナトリウム塩の反応収率を向上させ、続く加水分解反応によってCOOH基への直接変換を行う。そのため、反応に用いる溶媒の変更(溶媒の極性やプロトンの有無による収率変化の調査)、溶液の脱気方法(脱気時間や不活性ガスの圧力調整)、ナトリウム塩の精製方法などについて再度見直し、目的物を安定に単離する方法を探索する。また、合成したCOOH誘導体とジメチルアニリンのBpin体もしくはニトロベンゼンのBpin体との鈴木宮浦カップリング反応についても試みる。ニトロベンゼンのBpin体との鈴木宮浦カップリングによりベンゾピラン骨格が得られた場合、ニトロ基を還元させ、その後、アミノ基のメチル化によってジメチルアニリン部位への変換を行う。また、プロトンスポンジとTFDAを試薬として用いたチオクマリン2のチオニル基からのハロゲン化の反応についても、試薬と溶媒、反応温度を見直し、ジフルオロ誘導体の生成を目指す。ジフルオロ体が得られた場合、ジメチルアニリンのBpin体との鈴木宮浦カップリング反応によって目的とするベンゾピラン誘導体の合成を行う。ベンゾピラン型発色団とケージド安息香酸の合成を達成したのち、1光子励起(365-405 nm励起)によるアンケージング反応の効率と近赤外領域における2光子吸収断面積の算出を行う。アンケージング反応効率や2光子吸収断面積が十分でない場合、発色団部位の電子供与基の改良(共役の拡張やベンゼン環の架橋による平面性の向上)を行う。また、光反応効率の励起波長依存性を調査し、発色団部位の最適化を図る。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)