Project/Area Number |
22K14816
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 38020:Applied microbiology-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井上 真男 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (90906976)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 呼吸鎖複合体 / ヒドロゲナーゼ / 分子進化 / 微生物ゲノム / 好熱菌 |
Outline of Research at the Start |
ミトコンドリアの呼吸鎖複合体IはNADHの酸化を介して中央代謝系と電子伝達系を繋ぎ、呼吸の根幹を担う。しかし、どのような過程を経て巨大酵素複合体の形成に至ったのか、その進化プロセスは謎である。本研究では、NADH酸化モジュールを欠失した呼吸鎖複合体Iが多くの微生物ゲノムに存在することに着目し、このような「非ミトコンドリア型呼吸鎖複合体I」の生理・分子機能解明を通して、微生物祖先が有していたと推測される新たな呼吸経路を解明し、呼吸酵素複合体の分子進化に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ミトコンドリア呼吸鎖複合体 I の祖先型と予想される NADH 酸化モジュールを欠失した非ミトコンドリア呼吸鎖複合体 I (Nuo11) に着目し、その微生物ゲノム分布や分子進化、さらには機能解明を通して微生物祖先が有していたと推測される新たな呼吸経路を解明し、呼吸酵素複合体の分子進化に迫ることを目的とする。今年度の主な研究成果は以下の 3 点である。(1) バイオインフォマティクス解析によって、Nuo11が幅広いバクテリアおよびアーキアゲノムに分布していることが明らかとなった。Nuo11はミトコンドリア型とは異なる系統群を形成していたほか、[NiFe] ヒドロゲナーゼにより近縁なNuo11とは異なる新たな非ミトコンドリア型の系統群も存在していた。また、Nuo11の立体構造予測からキノン結合部位やイオン輸送体についてはミトコンドリア型と同様に保存されていることが分かったが、NADH酸化モジュールとの相互作用界面に構造上の大きな違いがあることが推定できた。(2) 好熱性 Bacilli 綱細菌について、Nuo11のマーカーレス遺伝子欠損株の構築を試みた。完全な遺伝子欠損には至らなかったものの、増殖阻害を示す野生株のゲノムと欠損株のゲノムが混入した株を取得できたことから、Nuo11が本菌の増殖に関与する可能性が示唆された。(3) Strepタグを導入したサブユニットC、D、Iについて、過剰発現株を取得することに成功し、その一部について可溶化条件の検討を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにゲノムデータベースを用いたバイオインフォマティクス解析によって、バクテリア14門・アーキア5門において、NADH 酸化モジュールを欠失したNuo11をコードする遺伝子クラスターを見出した。これらはいずれも複数のイオン輸送・電子伝達サブユニットをコードしており、立体構造予測の結果からも呼吸酵素としての機能を示唆するものであった。さらに、ミトコンドリア型とNuo11に特徴的な構造モチーフの存在を明らかにした。好熱性 Bacilli 綱細菌の培養株を用いた実験については、培養系の確立と遺伝子組換え系の基盤構築に成功し、増殖阻害を示す野生株のゲノムと欠損株のゲノムが混入した株を取得できた。さらにStrepタグを導入したサブユニットC、D、Iについて、過剰発現株を取得することに成功し、その一部について可溶化条件の検討を行うことができた。以上の進捗から現時点で当初の研究目標に向けて十分な成果を得ているため上記の評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオインフォマティクスについては、論文発表に向けて大規模データセットの統合を行う。細胞レベルの解析については、Nuo11遺伝子欠損株の表現型解析のデータを取得するほか、構造機能解析に向けて構築済みのタグ付きサブユニットの過剰発現株からの複合体の精製を試みる。研究成果を取りまとめるとともに新たなシーズの発見を見越して、2024 年度は以上について研究を推進し、得られた成果を発表したい。
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