きのこ類における非飢餓シグナリングを介した生殖成長ブロック機構の解明
Project/Area Number |
22K14819
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 38020:Applied microbiology-related
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
吉田 裕史 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 研究員 (70879709)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 発茸抑制 / グルコース / ウシグソヒトヨタケ / 担子菌類 / 飢餓 |
Outline of Research at the Start |
きのこ類は菌糸体としての栄養成長を経たのち,種々の刺激に応じて生殖成長を開始し子実体を発生(発茸)する。しかし多くの場合,非飢餓下では種々の刺激が無効化され,発茸が強力に抑制される。このような発茸抑制機構はきのこ類の生存戦略においては有利に働き得るが,人為的な発茸管理を考える上では障壁となる。本研究では,モデル担子菌ウシグソヒトヨタケを材料に,発茸初期に働くメカニズムのうち非飢餓下で抑制される律速因子の存在に着目し,さらに非飢餓下での発茸抑制に拮抗する化合物や非飢餓下で発茸抑制されない突然変異体を発見したことを足掛かりとして,発茸抑制機構の生化学的・細胞生物学的レベルでの解明に取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
高グルコース下では発茸が抑制され,光等の刺激を与えても子実体形成は通常起こらない。しかし,ラパマイシンを添加した高グルコース培地においては発茸が可能となることから,高グルコース下での発茸抑制にはTORが介在することが示唆された。そこで,TOR下で負に制御される経路のうち,オートファジーの働きが発茸に必要であるという仮説のもと,オートファジーの発茸への関与について検証を行った。オートファジー全般に関与し得る因子群の遺伝子を破壊したところ,生育が幾分遅くなると同時に発茸が著しく抑制された。また,マクロオートファジー関連因子としてAtg13,ミクロオートファジー関連因子としてVps27を破壊したところ,いずれも高栄養の培地において野生型株並の生育を示しつつ,前者の破壊では発茸への大きな影響が生じず,後者の破壊によって発茸が顕著に抑制された。さらに,Vps27のTORC依存的リン酸化部位を推定し,これをアラニンに置換した「非リン酸化型」Vps27を発現させたところ,高グルコース下でも発茸初期反応が生じるという結果が得られ,同残基のリン酸化が発茸抑制の一端を担うことが示唆された。
また,高グルコース下でも発茸が抑制されない突然変異体が複数得られており,そのうち1株について,後代の遺伝子多型解析によって原因候補遺伝子を一つに絞り込み,同遺伝子のノックアウトによって高グルコース下で発茸するという表現型が再現されることをもって原因遺伝子の同定に至った。同定された原因遺伝子は糖の輸送あるいはセンシングに関与する膜タンパク質をコードすると予測された。興味深いことに,同遺伝子を欠損した株は高グルコース下での発茸抑制が恒常的に解除された状態でありながら,菌糸体栄養成長の面でのトレードオフを示さず,むしろ野生型株に比べて顕著に早い生育を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発茸抑制経路の一端として,TORを介したVps27経路の抑制が高グルコース下での発茸抑制に部分的に関与することを明らかにした。また,糖の輸送ないしセンシングのメカニズムに欠損を生じることで,発茸抑制を恒常的に解除できることを明らかにした。前者は,発茸抑制因子の除去にミクロオートファジーが部分的に関与することを示唆する重要な知見であると考える。また,後者は,発茸抑制の解除と旺盛な栄養成長を両立できることを示した点で有用な成果であると考える。 一方,これまでのところ発茸抑制因子の特定には至っていないため,これを特定することが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究では,発茸抑制の経路の一端が明らかになったが,発茸抑制因子の特定には至らなかった。今後は発茸抑制因子の特定に向けて,高グルコース下で発茸可能な突然変異体のさらなる解析・原因遺伝子同定を進める。また,発茸抑制の律速となることが見出されている遺伝子を出発点として,同遺伝子の転写抑制に直接関与する制御因子(発茸抑制因子)の探索を生化学的手法により進める。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)