Project/Area Number |
22K14876
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 39020:Crop production science-related
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮本 託志 新潟大学, 日本酒学センター, 特任助教 (30903835)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | フェルラ酸 / アラビノキシラン / 高温登熟 / 追肥窒素 / 酒造好適米 / 細胞壁 / 窒素 / 日本酒 / 米 / 穂肥 |
Outline of Research at the Start |
近年、日本酒の海外輸出量が増加傾向にあり、さらなる海外市場の拡大に向けた日本酒の品質の向上と安定化が求められている。それと同時に、国内需要の増加を目的とした日本酒の新たな価値の創出もまた重要である。原料米の胚乳細胞壁に由来するフェルラ酸は日本酒として好ましくない風味を呈するが、強い抗酸化活性を有することでも知られる。したがって吟醸酒などではフェルラ酸量の低減による風味の改善が、他方で薬酒などではフェルラ酸量の増強による機能性の向上が求められる。本研究では酒造りの志向に応じた原料米生産技術の確立を目的として水稲生育後期における窒素施肥条件が胚乳細胞壁結合型フェルラ酸量に及ぼす影響を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本酒の風味改善と機能性向上を目的として、水稲の生育後期における追肥窒素の施肥量および施肥時期の違いが酒米の胚乳細胞壁結合型フェルラ酸量に及ぼす影響を明らかにする。2023年度は、2022年度に引き続き、屋外での小規模栽培設備を用いて異なる追肥窒素施肥量[窒素量として1平方メートルあたり1グラム(N1)または12グラム(N12)]でのイネ(酒造好適米品種‘越淡麗’)栽培試験を実施し、玄米と精白米(精米歩合70%)、およびそれを原料として用いた日本酒小仕込み試験後の酒粕のフェルラ酸量とその他の細胞壁成分組成を調べた。2023年度は本研究を実施した新潟県がイネの登熟時期に猛暑に見舞われたことで、2022年度とは異なる興味深い結果が得られた。すなわち、2023年度ではN1処理区とN12処理区での玄米乾物重量(1グラム)あたりの細胞壁結合型フェルラ酸量がそれぞれ544.6マイクログラム(前年比35%増加)と524.7マイクログラム(前年比30%増加)であった。また、2023年度は、2022年度と比べて、フェルラ酸の主要な結合多糖であるアラビノキシランの含量も高かった。これらの結果から、高温登熟により玄米の細胞壁結合型フェルラ酸量が増加すること、また平年並みの登熟気温では追肥窒素施肥量の違いによる玄米の細胞壁結合型フェルラ酸量への大きな影響はないが、高温登熟条件では追肥窒素施肥量の増加により玄米の細胞壁結合型フェルラ酸量が有意に減少すること(4%減少)が示された。さらに、同様の結果が精白米およびそれを用いた日本酒小仕込み試験後の酒粕からも得られたことから、高温登熟と追肥窒素施肥による酒米のフェルラ酸量の変化が日本酒の酒質にも影響を及ぼす可能性が示唆された。現在、日本酒に含まれるフェルラ酸関連化合物の分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に適用した分析法では玄米試料のフェルラ酸含量の値が安定せず、また精白米試料のフェルラ酸含量については検出限界を下回るといった複数の問題点があった。また、2022年度はフェルラ酸の定性・定量分析にGC-MSを用いていたが、キャリアガスのヘリウムの価格高騰により、運用が困難となった。そこで、2023年度は細胞壁試料の調製方法(澱粉除去処理方法と溶媒抽出方法)を最適化し、GC-MSの代わりにLC-MSを用いた分析系を確立した。細胞壁試料調製方法の最適化の結果、玄米、精白米、および酒粕のフェルラ酸含量について安定した分析値が得られるようになった。またGC-MSからLC-MSへの変更により、分析コストが抑えられ、さらに試料の誘導体化が不要となったことから作業効率の向上につながった。また、2023年度の記録的な猛暑により、登熟気温と追肥窒素量の相互作用に関する新しい知見が得られた。この発見により気候変動と日本酒の酒質との関連についての理解が深まっただけでなく、栽培時期(田植時期)と追肥窒素量を同時に調節することで酒米中のフェルラ酸量を制御できる可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、これまでのポット栽培試験(2022年度)および屋外小規模栽培試験(2022年度および2023年度)の結果を受けて、(1)屋外小規模栽培試験により追肥窒素施肥量の酒米フェルラ酸への影響の再現性を確認するとともに、(2)複数のイネ品種(酒造好適米品種‘越淡麗’と低グルテリン米品種‘春陽’)への影響の違いと(3)追肥窒素の施肥時期(施肥から出穂までの日数)の影響についても詳細に検討する。また、当初は予定していなかったが、(4)人工気象器を用いた栽培試験により登熟時期の気温が酒米中のフェルラ酸量に及ぼす影響を詳細に検討する。さらに(5)日本酒に含まれるフェルラ酸関連化合物の分析を進める。(1)から(5)の結果を包括的に解析することで、酒米の栽培方法による日本酒の風味と機能性の制御を可能にする方策の提案につなげる。
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