淡水魚類の遺伝的撹乱実態の解明:環境DNAによる地域集団の多種同時検出技術の開発
Project/Area Number |
22K14908
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 39060:Conservation of biological resources-related
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
伊藤 玄 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90925447)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 環境DNA / 国内外来種 / タナゴ亜科魚類 / mtDNA / ミナミアカヒレタビラ / 鑑賞魚メダカ / ヤリタナゴ / 遺伝的撹乱 / 淡水魚類 / 伊勢湾周辺域 / 外来種 |
Outline of Research at the Start |
淡水魚の地域集団は、進化的に重要な単位として保全されるべきであるが、他地域由来の外来集団の移植により多種・広範囲に渡り交雑している。水中に放出されたDNA断片から生物の在不在を検出できる手法(環境DNA分析)をうまく応用すれば、水を汲むだけで水系内の在来・外来および遺伝的撹乱集団の分布実態を、簡便かつ多種同時に把握できる可能性がある。 本研究では、1)淡水魚類の地域集団を多種同時に識別できる技術を開発し、2)遺伝的撹乱が著しい伊勢湾周辺域における在来・外来・遺伝的撹乱集団の分布範囲の特定と存在量の定量的な比較を行う。これらの研究により、駆除対策が必要な地域と、保全が必要な地域を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
塩基配列解読時に異なる塩基が偶発的に取り込まれるエラーを除去し、正しい配列を読み取る技術の確立に向けた実験を行った。ブルーギルの組織から抽出したゲノムDNAをサンプルとして、1st PCR時に少ないサイクルでサンプルが増幅する系を確立するため、DNAポリメラーゼ、プライマー除去試薬、PCRのサイクル数、温度、時間の検討を行った。通常より多いサイクル数に設定した2nd PCR後の電気泳動において、各実験系におけるサンプルの増幅の有無を確かめた。その結果、特定の実験系において、目的の位置に増幅した電気泳動像を確認した。 次に、環境DNAサンプルを用いて上記の実験系による再現を試みた。電気泳動の結果、上記の実験と同じ位置に増幅した電気泳動像が得られたが、非常に薄かった。シーケンスにおいて良好な結果を得るためには、PCR時の濃度を高める工夫が必要であると考えられた。 国内外来種としてどのような魚種がどの地域に分布しているかを明らかにするため、文献調査、標本調査およびDNA分析を行った。これらの調査により、大阪府のミナミアカヒレタビラ、宮城県のヤリタナゴ、岐阜県の観賞魚メダカ類など、新たな地域における国内外来種を発見し、論文として報告した。 国内外来種としての移入例が多いイチモンジタナゴを対象に、環境DNA種特異検出法による種内系統を識別可能な検出系の開発を行った。東海地方と近畿地方に分布するイチモンジタナゴの種内系統を一塩基多型(SNP)のジェノタイピングにより可能であることを示し、学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度には、主に塩基配列解読時に異なる塩基が偶発的に取り込まれるエラーを除去し、正しい配列を読み取る技術の確立に向けた実験を行った。組織から抽出したゲノムDNAにおいて、1stPCR時に少ないサイクル数でDNAを増幅させる技術を確立した。一方で、環境DNAでは非常に薄い電気泳動像であったため、DNA濃度を濃くする実験系を確立することが今後の課題である。 標本およびDNA調査により、今まで確認されていなかった地域から新たな国内外来種を確認し、論文として報告することができた。これらの国内外来種のDNA塩基配列は、本研究テーマで開発する新たなプライマー設計に利用する。 イチモンジタナゴを対象とした種内系統を識別する検出系の開発に成功した。本研究により、環境DNA分析技術を用いて種内系統を簡便に識別することが可能であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、正しい配列を読み取り技術の開発において、環境DNAサンプルを分析に耐えうる濃度に増幅できる実験系の確立を目指す。人工合成遺伝子を用いて5段階の希釈系列を作成し、2022年度に確立した実験系でのPCRがどれだけの濃度のDNAを増幅できるかについて、定量PCRを用いた検討を行う。 ミトコンドリアDNAのシトクロームb領域対象とした多種同時検出可能な環境DNAプライマーの設計においては、コイ科を中心とした魚類が増幅できるか否かについて検討を行う。タナゴ亜科魚類をはじめとしたコイ科魚類の組織サンプルについては、琵琶湖水域および伊勢湾周辺域から1~3個体程度を収集済みであり、実験を行う体制は整っている。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)