冬眠様選択的スプライシング制御による低体温障害耐性メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K15009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 42020:Veterinary medical science-related
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
堀井 有希 岐阜大学, 糖鎖生命コア研究所, 助教 (20888531)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 低温ショックタンパク質 / CIRBP / 冬眠 / スプライシング / 低体温 / 選択的スプライシング |
Outline of Research at the Start |
冬眠する哺乳動物は低体温により障害を生じない。Cold-inducible RNA-binding protein(CIRP)は冬眠動物の低温障害耐性機構に関与する可能性がある。冬眠中のハムスターでは、CIRP遺伝子の選択的スプライシングに特徴的な変化が起こる。本研究は、CIRPの各スプライシングバリアントの機能の解明と選択的スプライシングの制御によってCIRPが保護作用を発揮するメカニズムの解明を目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
多くの哺乳動物は体温恒常性により37度付近の体温を維持している。一方、ハムスターやジリス等の一部の哺乳動物は、冬の環境下で体温を自発的に低下させる冬眠を行う。多くの哺乳動物は低体温時に生命活動を維持することができないが、冬眠動物の冬眠時には低体温による障害がない。低温ショックタンパク質の一つであるCold-inducible RNA-binding protein(CIRP)は低温によって誘導され、細胞保護作用に関与するタンパク質であり、冬眠動物の驚異的な低温障害耐性機構に関与する可能性がある。申請者は、冬眠動物であるシリアンハムスターにおいて、冬眠中のCIRP遺伝子に特徴的な選択的スプライシングの変化が起こることを明らかにした。本研究は、CIRP遺伝子の各スプラシイングバリアントの機能とその制御によるCIRPの低温障害耐性メカニズムを解明することを目的とした。 これまでの研究により、冬眠時には選択的スプライシングの変化により、CIRP mRNAが効率よく発現している可能性が明らかとなった。また、非冬眠動物であるマウスにおいて、人為的に軽度の低温で維持することによって冬眠様の選択的スプライシングを再現することに成功してきた。CIRP遺伝子のスプライシング変化による機能を明らかにするため、CIRP遺伝子のスプライシングモチーフを編集したゲノム編集マウスを作製した。常に冬眠型のスプライシングパターンを発現している系統と、スプライシングモチーフが欠失・変異し、常に冬眠時に消失するスプライシングバリアントのみを発現する系統の作出に成功した。これらの系統のマウスには、低体温時の心機能における障害への耐性に違いが見出された。CIRPの冬眠様スプライシングは低体温時の心拍動維持に寄与する可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CIRPの冬眠様選択的スプライシングが障害耐性に寄与するとすれば、本研究で作出されたゲノム編集マウスについて、常に冬眠型発現をするマウスは、常に冬眠様の障害耐性を発揮すると想定される。一方、常にスプライシングバリアントを発現するマウスは、冬眠様の障害耐性を発揮できないことが予想される。 本研究では、冬眠時に起こりうる状況を想定したさまざまな障害モデルを作出した。冬眠動物は低温環境下で生存するため、低温環境での飼育をおこなった。また、エサの供給の少ない状態が想定されるため、絶食をおこなった。さらに、虚血再還流モデルを作出した。しかしながらいずれの実験においても、各系統の障害に明らかな違いは見られなかった。一方、冬眠時の低体温を再現するため、麻酔下での冷却により体温を低下させたところ、冬眠型は不整脈の発生頻度が少ないことがわかった。このきっかけをとらえたため、来年度はターゲットを心機能に絞り、次の実験に進むことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム編集マウスによって低体温への誘導時に発生する不整脈の発生頻度に違いが見られたため、低温時の心機能に寄与するCIRPの作用機序を解析する。まず、ゲノム編集マウスにおけるin vivo及び摘出心臓のex vivo実験により、冬眠型のスプライシングを呈するマウスが最も保護作用を示す刺激の条件を決定する。その条件において、心臓や脳におけるRNA-seqやRNA干渉等を行い、CIRPに関連して障害耐性に関わる分子を明らかとする。 野生型のマウスにおいては、麻酔を用いた方法により冬眠様のスプライシングバターンを誘導することができている。そのため、野生型マウスにおいても、スプライシングを変化させる処置の後に、指標となる心臓に対する障害耐性が見られるのかを探索する。障害耐性が見られない場合にも、ゲノム編集マウスとの比較を行い、障害耐性に重要な役割を担う因子を明らかとする。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)