Project/Area Number |
22K15025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 42030:Animal life science-related
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
北野 泰佑 北里大学, 獣医学部, 助教 (10925027)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | FANCL / 統合失調症 / 中枢神経系 / 遺伝子改変マウス / 行動異常 / アストロサイト / 細胞肥大化 / 酸化ストレス / DNA損傷修復 |
Outline of Research at the Start |
統合失調症は、国際的に問題視されている精神疾患の1つであるが、その発症メカニズムや根本的な原因は解明されておらず、確定診断法や十分な治療法は確立されていない。近年の網羅的な遺伝子解析の結果、統合失調症患者の脳ではDNA損傷修復タンパク質として知られるFANCLの発現や機能が低下している可能性が示唆されている。しかし、これまで中枢神経系におけるFANCLの役割はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、fancl遺伝子改変マウスや各種中枢神経細胞を用いて、FANCLの統合失調症病態への関与や中枢神経系における機能の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
FANCLは「DNA鎖間架橋」という重篤なDNA損傷の修復に不可欠なE3ユビキチンリガーゼである。近年、大規模な網羅的ゲノム解析により、FANCLが統合失調症のリスク因子である可能性が示されたが、本症の病態形成メカニズムにおけるFANCLの関与は疎か、中枢神経系におけるFANCLの役割は明らかになっていない。本研究では、「中枢神経細胞において、FANCLが酸化ストレス誘導DNA損傷の修復に役割を果たし、その欠損は酸化ストレスに対する細胞の脆弱化、ひいては統合失調症病態の形成や悪化をきたす」という仮説を検証し、FANCLを軸とする統合失調症の新たな病態形成メカニズムを解明することを目的とした。本年度は、fancl遺伝子改変マウス(FVB/NおよびC57BL/6J系統、雄)を用いて行動解析を実施し、統合失調症様の行動変化がみられるかを予備検討した。また、このマウスの新生仔の脳よりアストロサイト(グリア細胞の1種)を初代培養し、FANCLの機能解析を行った。その結果、fancl(-/-)FVB/Nマウスでは、空間作業記憶力が有意に低下し、自発行動の増加傾向や社会性の低下傾向もみられた。また、fancl(+/-)C57BL/6Jマウスでは、不安様行動が増加し、精神病誘発剤(MK-801)に対する反応性にも差が認められた。さらに、アストロサイトにおいて、FANCLがDNA鎖間架橋修復に機能することを確認でき、その欠損により細胞増殖能が低下することに加え、細胞が肥大化するという不思議な現象も観察することができた。これらの結果は、FANCLが中枢神経細胞においても機能的に発現し、マウスの行動を変化させるほどに中枢神経系で重要な役割を果たしていることを示唆しており、次年度以降も本研究を進めていく上で、非常に興味深く、価値のある成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、fancl遺伝子改変マウスの戻し交配に用いていたブリーダー由来のFVB/Nマウスに意図しない遺伝子変異が見つかり、それを除去する必要性等の理由から、実験に使用できる遺伝品質のマウスを作出するのにやや時間を要した。そのため、行動解析の開始時期が遅れ、予備検討しかできなかった。しかしながら、fancl(-/-)FVB/Nマウスに加えて、当初の計画には入れていなかったfancl(+/-)C57BL/6Jにおいても行動異常を確認できた。本研究では、これら遺伝子改変マウス自体に行動異常がみられなかった場合には、統合失調症のモデルを適用して検討する計画であったため、これを実施する必要がなくなった分、おおよそ計画通りに研究が進んでいるといえる。また、中枢神経機能に重要な細胞の1つであるアストロサイトにおいて、FANCLが機能的に発現していることに加え、その欠損による機能や形態の異常を確認できた点は、本年度内に期待していた以上の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
Fancl遺伝子改変マウス(FVB/NおよびC57BL/6J、雄、8~10週齢、各遺伝子型8-10匹)を用いて、行動解析を実施し、本検討を行う。また、これらマウスの脳において、酸化ストレス状態の評価や、免疫組織学的解析を実施する。加えて、セルソーティングを用いて脳より分取した各種細胞群において、トランスクリプトーム解析や種々の生化学的解析を実施し、中枢神経系の機能および形態的変化を組織・細胞レベルで評価して、行動変化との関係や統合失調症様病態の有無を検討する。さらに、脳の各種細胞の初代培養系を用いて、酸化ストレスおよびそれにより誘導されるDNA損傷に対する細胞応答(状態や機能変化)において、FANCLの機能を評価する。以上より得られたin vivoおよびin vitroの結果を統合し、学会や学術論文にて発表する。
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