Project/Area Number |
22K15038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43010:Molecular biology-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
牛島 由理 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80812297)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 核様体 / ストレス耐性 / 遺伝子制御 / 病原性 |
Outline of Research at the Start |
黄色ブドウ球菌の制圧困難さの背景にはその独自のストレス耐性・病原性発現メカニズムがある。申請者らは、本菌の核様体(染色体)に着目した研究を行い、酸化ストレスによって核様体が凝集することで様々な遺伝子の発現が変化することを初めて見出した。これらの遺伝子の多くは酸化ストレスとは異なるストレスに対する耐性遺伝子や病原遺伝子であり「核様体凝集を引き金とした宿主環境への適応」という新たな感染戦略が示唆された。本研究はこの仮説の検証を目的とする。本研究により、病原細菌の新たな感染戦略が明らかとなるとともに、核様体の構造変化が遺伝子発現を制御するという核様体ダイナミクスの新しい役割が明らかとなる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「黄色ブドウ球菌は酸化ストレスに曝されると、核様体を凝集することでゲノム複製開始点周辺の遺伝子発現に影響を与え、それによって宿主環境に適応する」という細菌の新たな感染戦略の仮説を立証することを目的としている。 令和5年度は、【計画1:核様体凝集能を持たないMrgA変異タンパク質とmrgA変異株の作製】および、【計画2:核様体凝集の複合ストレス環境下での生存への寄与の証明】を完了する計画であったが、全体的にやや遅れが生じている。 昨年度より引き続き、計画1では、SpyCatcher-SpyTagを用いた系の確立に向け、Spy tagの位置やリンカー配列の有無が異なる様々な変異体MrgAタンパク質をデザインし、SpyCatcherタンパク質も加え、組換えタンパク質シリーズの準備に取り組んだ。一部発現が認められなかった変異体もあったものの十分な発現が確認でき精製段階に入ったところである。 計画2は、昨年度明らかにし、本研究の仮説を大きく支持する例となる「酸化ストレス+酸」への核様体凝集の役割について、分子遺伝学的な解析を進めているところである。他の複合ストレスへの関与については未検証となっているので、今年度着手する予定である。 計画3の複合ストレス耐性の制御基盤となる遺伝子発現メカニズムの解明に向けては、複製開始点周辺の遺伝子群を他の位置へ移動させ、その発現変化が核様体凝集依存的かどうか検証するための変異体作製に着手し、現在進行形である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度計画していた実験は以下の3項目である(うち、計画1および2は完了を計画していたもの)。 計画1: 核様体凝集能を持たないMrgA変異タンパク質とmrgA変異株の作製 計画2: 核様体凝集の複合ストレス環境下での生存への寄与の証明 計画3: 凝集による遺伝子発現制御のゲノム位置依存性の有無の解明 計画1においては、SpyCatcher-SpyTagを用いた系の確立のため、Spy tagの位置(N末、C末)やリンカー配列の有無を変えたMrgA変異体タンパク質の発現確認および精製へと進んでいる。当初の計画では、変異体タンパク質の機能を確認し、変異体タンパク質がDNAへの結合を阻害されるか否かまで確認する予定であったので、進捗は遅れている。ただし、バックアップ案であるMrgAホモログの大腸菌DpsのDNA結合欠損体を用いた計画2の表現型の確認は進めている。また、この変異体を用いることで、菌本来の「酸化ストレス誘導MrgAによって起こる核様体凝集」以外の人工的な凝集では、変化する遺伝子が異なるのか、凝集の度合いによる影響はあるのか、という観点から本仮説の検証を進めている。計画2においては、昨年度明らかになった核様体凝集の「酸化ストレス+酸」の複合ストレス耐性への寄与のメカニズム解明へと進めている。ただし、当初の計画では、凝集によって変化する遺伝子リストから病原性などの他の表現型も探索する予定であったので、この点が遅れている。最終年度で新たな表現型への関与(少なくとも予想される病原性)を検証する。計画3においては、複製開始点Ori周辺の領域をゲノム上の別の位置へ移動させるために、まずはメチシリン耐性ブドウ球菌カセット染色体(SCCmec)の移動に必要なatt配列と自然形質転換を組み合わせたゲノム編集システムのセットアップに着手した。ただし、試行錯誤の段階であり時間を要する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
計画1のSpyCatcher-SpyTag系の確立が遅延しているため、バックアップ案である大腸菌DpsのDNA結合欠損体を導入した検証を中心に進めていく。現在、複製開始点Ori周辺の遺伝子発現がどう変化しているかPCRやRNAseqによって解析しており、結果をまとめる。その結果、菌本来の酸化ストレス誘導MrgAが起こす核様体凝集から得られた遺伝子群とは異なっていた場合、直接的ではないが仮説を支持するデータとなり得る。tetプロモーターによってMrgA発現量とタイミングをコントロール可能な変異体も作製したので、これを用いて、本菌にとって「意味のある核様体凝集」があるのかを明らかにしていく。 一方、計画2で明らかになった核様体凝集が寄与する「酸化ストレス+酸」の分子メカニズムの解明にむけて引き続き検証を続けつつも、少なくとも病原性への関与については検証したいと考えている。計画3は原理的には可能であるはずなので、技術的な問題を一つずつクリアしながら、まずはatt配列変異体の完成を目指す。
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