HP1によるAurora B複合体の動的構造解析とその空間制御機構の解明
Project/Area Number |
22K15043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43010:Molecular biology-related
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
迫 洸佑 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (00838469)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 染色体分配 / Aurora B / INCENP / HP1 / 天然変性領域 / 構造解析 / キネトコア / CPC / 液中構造解析 |
Outline of Research at the Start |
分裂期キナーゼのAurora Bを含むChromosomal Passenger Complex (CPC)は、染色体分配時においてその活性到達範囲が局在範囲に比べてはるかに広いが、その差が生じる要因は現在まで不明である。 我々は先行研究で、CPCの正常な機能にHeterochromatin Protein 1 (HP1)の結合が必要であることを見出しており、この結合がCPCの活性到達範囲を拡張・規定する可能性が考えられた。よって本研究では、HP1が結合するCPCの足場タンパク質であるINCENPの『天然変性領域』に着目し、動的分子構造解析と細胞生物学的解析を駆使して、その可能性を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
染色体分配時において、Aurora Bキナーゼを含む染色体パッセンジャー複合体(CPC)はインナーセントロメアに濃縮し、動原体/微小管の結合異常を補正する役割を持つことが知られている。興味深いことに、Aurora Bは濃縮範囲から70 nm弱も離れた動原体タンパク群を基質とするが、「濃縮範囲外」に活性が届く分子背景は未だに不明である。我々は先行研究で、CPCの活性制御におけるHP1結合の必要性を見出していた。HP1はCPCの足場タンパク質であるINCENPの天然変性領域(IDR)中のPxVxL/I-motif (以下PVI)に結合するため、我々は「HP1結合時にIDRが構造変化し、CPCの活性到達範囲を広げる」という作業仮説を立てた。 このIDRの構造変化について、PVI周辺約30アミノ酸残基の「局所」領域がHP1結合時に変性状態から特定構造へと変化してCPCの細胞内活性に寄与することを突き止め、本年度に論文投稿へと至った(Sako et al., 2024, JCB, in revision)。 一方で、INCENP「全長」の構造変化については、Aurora B-INCENP組換えタンパク質を用いたHigh-Speed (HS-) AFMによる液中構造解析により、1) HP1の結合がINCENPの伸長反応を促進し、2) その反応にはINCENPのIDRが関与していること、が昨年度までの研究から明らかとなっていた。加えて、ラパマイシン介在型のFKBP/FRBヘテロダイマー形成を利用した屈曲誘導型のINCENP変異体を作製し、その恒常発現細胞株の表現型解析の準備も行なっていた。本年度は、ヘテロダイマー誘導剤の添加時に、動原体タンパク質のリン酸化が低下することを明らかにし、INCENP「全長」の構造変化がCPCの細胞内活性に必要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「HP1結合時にIDRが構造変化し、CPCの機能を補助する」という作業仮説を検討するため、まずはHP1の正確な結合領域の決定とその構造変化の有無を先行研究(若手研究:19K16047)および昨年度までの研究で検証していた。その結果、1) HP1/INCENP結合は、これまで報告されてきた典型的な結合様式(PVIのみを介したHP1との結合)ではなく、PVIの下流領域(2nd-site)も使用する二連結合様式を持つこと、2) この領域がHP1結合時にのみ構造変化すること、3) 2nd-siteは培養細胞中でも機能し、CPCの活性(動原体タンパク質のリン酸化)維持にも必要であること、が判明した。新たに「SSHドメイン」と名付けたこの領域について、その機能欠損、あるいは典型的なPVI-motifへの置換は染色体分配の異常を増加させたことから、INCENP SSHドメインがCPCの機能および細胞分裂の恒常性にまで必要であることを明らかにした。本年度はこの内容について論文執筆/投稿を行い、米国JCB誌にて改訂審査中である。 一方で、INCENP「全長」の構造変化については、Aurora B-INCENP組換えタンパク質を用いたHS-AFMによる液中構造解析により、HP1の結合がINCENP IDRの伸長反応を促進することが明らかとなっていた。加えて、ラパマイシン介在型のFKBP/FRBヘテロダイマー形成を利用した屈曲誘導型のINCENP変異体を作製し、その恒常発現細胞株の表現型解析の準備も行なっていた。本年度は、この変異体を恒常発現する細胞株に対し、ヘテロダイマー誘導剤を添加した際の表現型解析を行ったところ、Hec1やDsn1といった動原体タンパク質のリン酸化が低下することを明らかにした。このことから、INCENP「全長」の構造変化がCPCの細胞内活性に必要である可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進するにあたり非常に重要な背景として、Aurora Bの局在範囲と活性到達範囲に乖離があり、その活性制御機構が長年にわたり議論の的となっている点が挙げられる。HP1が結合するとINCENPの構造が局所的/全体的に変化し、それがCPCの活性にも必要であるという結果は、INCENPの構造変化がAurora Bの活性到達範囲を規定する重要なファクターであるということを示唆している。 ラパマイシン介在型のFKBP/FRBヘテロダイマー付加型INCENPが薬剤添加なしの状態で正常に機能していることは判定済みであるが、実は薬剤添加時にINCENPの局在量が増加するという現象が見えている。これはINCENPの構造変化がCPC分子の挙動にどのような影響を与えるかを考察する上で非常に重要な観察結果であり、高解像度顕微鏡での観察/解析をさらに進める必要があると考えている。 また、微小管/動原体間の距離は時間の変化により異なる距離を示すことが知られている。それに伴い、動原体タンパク質のリン酸化量も分裂期の前半と後半で異なることが知られており、INCENPの構造変化が分裂期のどの時期に必要な分子機能なのか、今後さらに検証することが必須であると考えている。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)