人工的代謝ネットワークを用いた静止相における細胞代謝ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
22K15069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
姫岡 優介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70903160)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 力学系 / 化学反応 / ネットワーク / システム生物学 / 代謝モデル / 休眠状態 |
Outline of Research at the Start |
どのような生物も外部から何らかの形でエネルギー源や物質を取り込み、それを使用することで自己複製や自己維持を行なっている。そのような一連の化学反応を一般に「代謝」というが、代謝ネットワークの構造とそのネットワークを持つ細胞の示す振る舞いの間にどのような関係があるのかということはあまりよく分かっていない。本研究では、細胞の「休眠状態」という状態を示すネットワークはどのような構造を持つのかということを数理科学的アプローチによって明らかにしていく。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、微生物が静止相などにおいて示す「長い時間スケール」が、(個々は非常に短い時間スケールを持つ)化学反応ダイナミクスからどのように出現するかを、ボトムアップ手法を主に用いて明らかにすることである。「長い時間スケール」は微生物細胞の示す記憶様の現象や、抗生物質耐性にも関係があるということが実験的に報告されており、「長い時間スケール」がどのように生じるのかを解明することは、微生物学といった基礎研究のみならず、応用分野も含めて広い分野へのインパクトを与え得るものであると考えられる。微生物のもつ実際の反応経路を網羅的に調べることでこの問いに迫るというトップダウンアプローチだけではなく、本研究のようにボトムアップによるアプローチを採用することで、存在する代謝反応データにバイアスされないような、ネットワークとして一般的な性質が得られると期待される。 初年度は「人工的化学反応ネットワーク」という、2体1反応のみで構成された非常に単純な化学反応ネットワークのクラスを構築し、その構造的特徴とネットワーク上で起こる化学反応ダイナミクスの間の関係を網羅的に調べた。人工的化学反応ネットワークは、非常に単純なルールで構成されるにもかかわらず、定常状態への緩和に①指数緩和、②指数緩和+プラトー、③べき緩和という3通りの定性的に異なるダイナミクスを示すことが分かった。 緩和ダイナミクスとネットワーク構造の関係を調べた結果、化学反応量論係数行列(反応ネットワークの構造を表す行列)の①ランク、②保存量、そして③Stoichiometric Coneと呼ばれる量が緩和の定性的特徴を決定しているらしいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
人工的代謝ネットワークの構造的特徴と、そのネットワーク上における化学反応ダイナミクスの定性的特徴に関して本年度は理解を深めることが出来た。これは当初の想定以上の進捗である。 また、人工的代謝ネットワークを用いた理論研究を、申請者が所属する、東京大学 生物普遍性研究機構の『全学自由ゼミナール 生命の普遍原理に迫る研究体験ゼミ』において2名の学部学生と共に行っている(2件学会発表済み)。これら2つの研究課題は化学反応ダイナミクスの研究ではなく、フラックスバランス解析などを用いた静力学的解析ではあるが、ネットワーク構造と化学反応の定常状態の間にどのような関係があるのかを明らかにするうえで重要な研究であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、人工的代謝ネットワークの構造的特徴とダイナミクスの関係を、化学反応ネットワーク理論などを援用してより数学的に詳細に調べていく。また、申請者は別課題で「長い時間スケールの出現」を、実際の大腸菌代謝経路のモデリングを通じて調べる、トップダウンアプローチの研究も行っており、その成果として「長い時間スケール」を出現させるためのミニマルモデルが得られた。このミニマルモデルと同じ数、あるいはより少ない代謝物質・代謝反応をもつネットワークを全探索することによって、「長い時間スケール」を出現させるネットワーク構造を列挙することが可能であると考えられる。その解析を通じて、「長い時間スケール」を出現させるために必要なネットワークの構造の解明を目指す。 また、昨年度より継続している学部学生との共同研究については、本人の意向を聞きながら学生の学業に影響が出ない範囲で継続する。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)