Project/Area Number |
22K15107
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 44010:Cell biology-related
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
川波 しおり (赤羽しおり) 京都産業大学, 生命科学部, 研究員 (70793355)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | ミトコンドリア / ミトコンドリア品質管理 / ストレス応答 / PINK1 / ミトコンリア品質管理 / 低酸素環境 |
Outline of Research at the Start |
障害を受けたミトコンドリアは品質管理機構によって細胞から選択的に排除される。申請者はこれまでに、ミトコンドリア品質管理が細胞質のcAMP/PKA経路により制御されていることを明らかにした。しかしながら、細胞環境に応じて調節されるミトコンドリア品質管理の分子機構には、未解明な点が多く残っている。本研究では、ミトコンドリアにおけるストレス環境適応(①低酸素環境、②ROS障害による低膜電位)と品質管理の関係を明らかにする。これまで考慮されていなかった「ミトコンドリア内部環境の変化を介して品質管理を制御する」という観点から、ストレス環境に応じたミトコンドリア品質管理の新たな分子機構の解明を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアは生命活動のためのエネルギーを産生するが、同時に活性酸素種(ROS)を発生するため常にROSによる障害にさらされている。そのため細胞には、障害が蓄積したミトコンドリアを選択的に排除するための品質管理機構が備わっている。ユビキチンリン酸化酵素 PINK1とユビキチンリガーゼParkinはミトコンドリア品質管理において中心的な役割を果たしており、協同的に働くことでミトコンドリア外膜上にユビキチン鎖を付加し、最終的に障害ミトコンドリアのオートファジーによる分解を誘導する。これまでの研究からPINK1とParkinの詳細な機能が明らかになってきたが、一方で、ミトコンドリア品質管理が細胞内の生理的ストレス環境に応じてどのように制御を受けているのかは不明な点が多く残っている。本研究では、ミトコンドリアにおけるストレス環境適応と品質管理の関係を明らかにすることを目指し、特に、「ミトコンドリア内部因子による品質管理の制御」という観点から新たな分子メカニズムの解明に取り組む。 令和5年度は、 ROS 障害により膜電位が低下したミトコンドリアにおける品質管理の制御機構の解明に取り組んだ。質量分析や免疫沈降によりPINK1と相互作用する因子を網羅的に解析したところ、ミトコンドリア膜透過装置構成サブユニットTIM23との相互作用が検出された。さらに解析を進めたところ、PINK1の活性化にはTIM23が重要であり、TIM23はミトコンドリア内膜プロテアーゼOMA1による分解からPINK1を保護する機能を持つことが明らかとなった。また、パーキンソン病の病原性変異を持つPINK1変異体においてTIM23と相互作用の低下が示され、本結果はPINK1の機能不全を原因としたパーキンソン病の病態発症メカニズムの解明につながると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、膜電位が低下したミトコンドリアにおけるPINK1の活性化の制御機構について解析を行った。膜電位が低下したミトコンドリアにおいてPINK1 は高分子複合体を形成して活性化するが、複合体の構成因子の全容は明らかではなく、活性化の分子メカニズムも不明であった。免疫沈降や質量分析による解析の結果、PINK1複合体に膜透過装置構成サブユニットであるTIM23が含まれることを同定した。さらに、TIM23の発現抑制下ではミトコンドリア上の PINK1の量が減少することでParkinのミトコンドリア移行が抑制されることが明らかになった。TIM23の発現抑制下では、ストレス誘導性プロテアーゼのOMA1によりPINK1が分解されることでPINK1の量が減少することが示され、TIM23はOMA1による分解からPINK1を保護する役割を持つことが明らかになった。TIM23は内膜の膜透過装置複合体を構成するサブユニットであるため、TIM23以外の他のサブユニットのPINK1活性化への関与を解析したところ、TIM17を含む他のサブユニットのノックダウンはPINK1の量に影響を及ぼさないことが示され、PINK1の安定化において、TIM23は膜透過装置とは別の固有の機能を持つことが示された。 パーキンソン病の病原性変異を持つ24種類のPINK1変異体を対象としてTIM23との相互作用を解析したところ、3種類のPINK1変異体ではTIM23との相互作用の低下が見られ、OMA1による分解を受けることでPINK1の量が減少することが示された。さらに、上記3種類の変異体の発現下において、OMA1をノックダウンすることでPINK1とParkinの機能の回復が見られた。本結果より、OMA1の抑制やTIM23とPINK1の相互作用の強化がパーキンソン病の新たな治療戦略につながると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
低酸素環境は、がんなどの病態下に加え過度な運動でも生じる日常的なストレスである。低酸素下では細胞内のエネルギー生産はミトコンドリアによる酸素呼吸から細胞質の解糖系にシフトする。これまでに、細胞質の解糖系の抑制はPINK1とParkinの機能阻害につながることが報告されており、ミトコンドリア品質管理は細胞内のエネルギー生産のバランスによって制御されることが示されている。上記を踏まえ令和6年度では、低酸素環境でエネルギー生産への貢献度が低下したミトコンドリアにおいて品質管理がどのように働いているのか明らかにすることを目指し、低酸素環境でのPINK1とParkinの機能制御メカニズムの解明を推進する。 酸素濃度1%以下の低酸素環境において24時間細胞を培養し、細胞抽出液のWestern blotを行うと転写制御因子HIF1aを介した低酸素ストレス応答の誘導が確認される。この条件下でParkinの細胞内局在を観察したところ、Parkinのミトコンドリア移行が促進することを見出している。そこでこの低酸素下で見られるParkinの未解明の現象に着目して、以下の2つの観点から解析に取り組む。 1. 低酸素下のミトコンドリア分解は、低酸素特異的に発現量が増加するマイトファジーレセプターBNIP3が中心的な役割を果たす。そこで、BNIP3を介したマイトファジー経路とPINK1/Parkin経路の相互関係を解析する。 2. 低酸素下で誘導される統合的ストレス応答とミトコンドリア品質管理の相互関係を明らかにするために、HRIをはじめとした統合的ストレス応答因子のノックダウンによるParkinの細胞内局在への影響を解析する 3. 低酸素と常酸素でのPINK1の量や局在および活性化状態の比較により、低酸素下でのParkinのミトコンドリア移行の分子メカニズムを明らかにする。
|