Project/Area Number |
22K15140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 44030:Plant molecular biology and physiology-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
肥後 あすか 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 助教 (70812387)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 有性生殖 / 老化 / 茎頂分裂組織 / 花成 / シグナルペプチド / 受容体キナーゼ / ペプチド |
Outline of Research at the Start |
多細胞生物では、器官間での情報伝達により個体全体の成長が協調的に制御される必要がある。植物の地上部の起源となる茎頂分裂組織の生殖成長への運命転換である花成後には、有性生殖の成功に向けて様々な器官で生じるが、成長変化を個体全体で協調的に制御するメカニズムは不明である。「花成をきっかけに作動する個体統御プロセス」を分子メカニズムとして理解するという新しい研究分野を開拓するために、花成をきっかけに茎頂分裂組織で発現が上昇する分泌型ペプチド性シグナル分子の網羅的な探索と機能解析を行う。また、花成に伴う成長変化のうちで有性生殖の進行との調節が特に重要であると考えられる個体の老化現象の理解を深める。
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Outline of Annual Research Achievements |
植物の地上部の起源となる茎頂分裂組織は、発芽後は栄養器官である葉を形成するが、適切な環境下では一定期間ののちに生殖器官である花を形成する生殖成長へと移行する。この茎頂分裂組織の運命転換である花成の後には、有性生殖の成功に向けて様々な器官で成長様式の変化が知られている。次世代である種子を十分に形成するためには、各器官での成長変化の進行を個体全体で把握して協調的に調節するメカニズムが必要であると考えられるが、そのようなメカニズムは不明である。有性生殖の成功に向けて個体全体での成長変化を調節する様な制御機構の解明に向けて、花成をきっかけに茎頂分裂組織で発現が上昇する分泌型ペプチド性シグナル分子のスクリーニングを進めた。また、花成後にみられる成長変化のうちでも有性生殖の進行との調節が特に重要と考えられる老化の開始の調節機構に関する研究を進めた。 花成後の茎頂分裂組織付近で発現が変動する遺伝子を独自のRNA-seqデータからリストアップし、それらのレポーター系統の観察により花成前後の茎頂分裂組織付近での詳細な発現解析をすすめた。興味深い発現パターンを示した遺伝子について、遺伝子の欠損変異体の整備を進めた。 また、有性生殖の進行との調節が特に重要であると考えられる老化開始時期の調節機構の解明に向けて、老化開始時期の調節に機能することを示唆している新規受容体キナーゼファミリーの機能解析を進めた。着目している受容体キナーゼのリガンドもしくは制御標的の同定に向けて、着目している受容体キナーゼと物理的に相互作用する因子の網羅的な探索を免疫沈降-質量分析 (IP-MS)解析により行うための実験系の確立を行った。さらに、順遺伝学的なスクリーニングによっても着目している受容体キナーゼのリガンドや制御標的の探索を進め、早期老化開始表現型を抑圧する変異体候補が複数えられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
花成をきっかけに茎頂分裂組織で発現が上昇する遺伝子の探索について、初年度の結果を受け、興味深い発現パターンを示した遺伝子の機能欠損変異体の整備を進めた。分泌型ペプチドをコードする遺伝子は、遺伝子領域が小さい場合や機能冗長的に機能することが予測される配列が類似した遺伝子がタンデムに並んでいる場合が多いために、利用可能なT-DNA挿入変異体ストックには目的遺伝子の変異体が登録されていない場合が多い。そのために、候補因子の多くはCRISPR-Cas9システムを用いて、独自に変異体を作成した。標的配列を認識するgRNAを発現するカセットをタンデムに並べたコンストラクトを工夫して作成することで、標的遺伝子全体を欠失した変異体を効率よく作出することができた。また、同様のコンストラクトを用いることで、隣接して並んだ類似遺伝子を一度に欠失させた変異体も得られている。変異体の整備等に予定よりも時間がかかったために、今年度は、有性生殖との進行の調節が特に重要であると考えられる老化についての研究を重点的に進めた。初年度に得られた結果から老化の開始時期調節に関わることを示唆した新規受容体キナーゼファミリーの機能解析を進めた。初年度に得られた結果より、着目している受容体キナーゼは老化開始時期の決定に機能していることが示唆されたことから、この受容体キナーゼの受容するリガンドや制御標的を明らかにすることが、老化開始時期の調節機構の解明につながると考え、プロテオーム解析および順遺伝学的なスクリーニングを実施した。プロテオーム解析のためには着目している受容体キナーゼの免疫沈降実験の系を確立した。順遺伝学的なスクリーニングは、受容体キナーゼの変異体の種子をEMS処理した集団から早期老化開始表現型を抑圧する変異体候補を複数得た。
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Strategy for Future Research Activity |
花成前後の茎頂分裂組織付近で興味深い発現パターンを示す遺伝子の欠損変異体の整備と表現型の観察をすすめ、花成後の成長に異常が見られた変異体について、研究計画に沿ってその機能解明を順次進めていく。 興味深い結果が得られつつある老化の開始時期の調節に関わっていると考えられた受容体キナーゼについては、その制御標的の同定を行うことで、植物の老化開始時期の調節機構の解明を進める。IP-MS解析による相互作用因子の探索および順遺伝学的なスクリーニングをさらにすすめ、受容するリガンドや制御標的の同定を目指す。順遺伝学的なスクリーニングでは、得られている早期老化開始表現型を抑圧する変異体候補の表現型の再現性の確認および原因遺伝子の同定に向けた交配などを進める。物理的な相互作用の面から探索する実験については、IP-MSを実施し、同定した因子との相互作用の確認やその機能欠失変異体の老化表現型の解析を進め、着目している受容体キナーゼと老化開始時期の調節において協働しているかを検証する。上記の実験により同定した因子については、その欠損変異体他の老化に関する表現型解析などから、老化開始時期の調節における機能を解析し、植物の老化開始時期調節機構の解明をすすめる。
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