Project/Area Number |
22K15185
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内海 邑 日本大学, 医学部, 助教 (30827887)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 相利共生 / オルガネラ化 / 垂直伝達 / 水平伝達 / 進化ゲーム理論 / 進化 / 数理モデル |
Outline of Research at the Start |
相利共生系の進化では、利益を搾取する一方で相手に協力しない「タダ乗り」を防ぐ必要がある。これまで、共生者を環境中から獲得する水平伝達型の場合は共生者選択が、親から受け継ぐ垂直伝達型の場合は垂直伝達自体がタダ乗りを防ぐとされてきた。近年、水平・垂直の両方を行う混合伝達が相次いで報告され、各伝達型を統一する革新的研究が必要とされる。そこで、申請者は混合伝達の複雑な状況を新たな理論的手法で縮約し、混合伝達下での協力の進化機構を解明する。本研究がもたらす共生系進化の統一的な知見は、多様な共生様式の包括的な理解とともに、共生者のオルガネラ化をもたらす水平伝達型から垂直伝達型への移行過程の解明に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、相利共生系における、共生者選択によって維持される水平伝達型から、垂直伝達自体によって維持される垂直伝達型への進化的な移行過程を明らかにすることである。そのために、水平伝達と垂直伝達が混在した下での、宿主による共生者選択と、共生者による協力の共進化モデルを構築した。このモデルを縮約し、どのような条件で水平伝達型から垂直伝達型へ移行できるのかを理論的に解析した。 本年度は、すでに得られていた数値計算の結果に対し、解析的な側面から、さらなる分析を進めた。昨年度の結果から、進化的移行にともない相利関係が崩壊するか否かは、共生の利益の大きさや、宿主が裏切り者の共生者を排除する具体的な方法(共生前に選別するのか、共生後に関係を打ち切るのかなど)に依存することが示唆されていた。本年度は、同モデルの分析を進め、定性的ではあるものの、その依存性を解析的に示すことに成功した。この過程では、宿主内での共進化動態について、具体的な関数形を仮定することなく分析することができ、当初の想定よりも、広く一般的な条件下で、本研究の結果が成り立つことが明らかになった。このような解析的な評価によって、進化動態をより深く理解し、どのような状況で進化的移行が失敗するのかを直感的に説明することが可能になった。 加えて、縮約のないフルモデルの研究および、垂直伝達の共進化にも着手し、その分析を始めた。その結果、フルモデルにおいても、縮約モデルと定性的に類似した進化動態になることが示唆された。また、宿主が垂直伝達率を操作する場合には、予想通り、進化的自殺に至る場合があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縮約のないモデルのシミュレーションについてやや遅れがあるものの、その一方で、解析的な分析が大きく進展し、当初の想定より一般的な状況下での進化的移行の条件についての理解が得られたため、「おおむね順調に進展している」と評価した。 すでに着手していた縮約したモデルの分析については、解析的な側面からの分析がさらに進んだ。その結果、当初の想定よりも、時間がかかったものの、進化的移行が起きる定性的な条件を解析的に示すことができ、一般的な仮定のもとでの進化的移行の過程を、当初の想定以上により深く理解できるようになった。 また、本年度は、縮約をしない、より一般的な仮定によるフルモデルの分析を進めた。縮約モデルと異なり、フルモデルは解析的に扱いにくいため、これまでの手法と変わり、数値計算によるシミュレーションが基本となる。このフルモデルの分析については、当初想定していた解析の全ては完遂してないものの、本年度に縮約モデルの結果を再現する一定の成果が得られており、今後の見通しは立っている。また、この分析を通して、新たな研究方策についての着想を得るに至っている。 さらに、垂直伝達の進化動態を加えた拡張については、昨年度までにその前提となる個体群動態を導入した拡張がなされていたこともあり、現在までに、宿主が垂直伝達率を決める場合について、一定の成果が得られている。今後は、共生者が垂直伝達率を決める場合を含め、さらに分析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に着手した、フルモデルの分析と垂直伝達の進化についての分析をさらに進める。どちらも、すでにある程度の結果が得られているため、それらを整理し、まとめる予定である。 また、個体ベースモデルによる分析を新たに行う。本年度の分析を通して、現在得られている結果には、関数形などにあまり依存しない、一般性があることが明らかになった。そのため、さらなる一般性を検討するため、協力/非協力や共生者選択をする/しないといった二値的な形質を仮定した現在のモデルを、協力度や共生者選択度といった連続形質を仮定した拡張することが有意義であると考えられる。そこで、申請時の計画にはなかったものだが、個体ベースモデルでのシミュレーションを行い、このような一般性についての検討を行う。 加えて、可能であれば、申請時の計画にあった、突然変異率の進化も導入したモデルの分析も行う。これについては、垂直伝達の進化と同様に、すでに構築されているモデルをベースに進める予定である。
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