Project/Area Number |
22K15245
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 47010:Pharmaceutical chemistry and drug development sciences-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥海 尚之 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (70827659)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | フタロシアニン / 遷移金属 / 芳香族性 / 近赤外光 / 近赤外色素 / 機能性分子 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、大きな芳香族系を持つ分子に対して遷移金属原子を組み込むことで、さまざまな外部刺激に応答する優れた機能性近赤外有機色素の創製を目指す。さらには、創製した多種多様な錯体を用いて、近赤外光触媒反応、太陽電池、生体イメージングといった、反応化学から物質科学・生命科学に至る近赤外光を用いた応用研究に挑戦する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ターゲット分子である遷移金属ー芳香族錯体の創製を目指し、新規の大環状芳香族配位子の合成および物性解析に取り組んだ。フタロシアニンの類縁体であるテトラアザポルフィリンの一つのピロールユニットをベンゼン環に置換したベンジテトラアザポルフィリンを初めて合成した。この分子は近赤外吸収を持たない18π非芳香族構造と強い近赤外吸収を有する20π反芳香族構造の2種類の構造を安定にとれることを示した。これを利用し、穏和な条件における酸化還元反応による近赤外光吸収スイッチングに成功した。さらに環中心にさまざまな遷移金属を導入できることが明らかになり、近赤外領域の吸収波長や酸化還元特性がそれに応じて変化することが示された。 また、フタロシアニンの周辺ベンゼン環に補助配位部位を導入した新規芳香族配位子を合成した。この配位子をパラジウムや白金などの遷移金属と反応させることで、メソ位窒素原子を含みキレート配位した遷移金属―フタロシアニン錯体を合成し、18π芳香族共役系の外側に金属が配位していることをX線結晶構造解析により明らかにした。これはフタロシアニンのメソ位窒素原子に遷移金属を配位させた初の例である。これらの錯体は重原子効果によりほとんど蛍光を発しないのに対し、対応するフタロシアニン配位子は非常に強い近赤外蛍光を示すことから、近赤外領域における蛍光スイッチングの可能性を示す結果として重要であると考えている。 さらに、ヘテロ芳香環であるアクリジン骨格にホスフィノ基を導入した新規2座配位子を設計し、パラジウム触媒を用いた可視光クロスカップリングを開発した。この反応において、配位子のπ共役系を拡張することで低エネルギーの赤色光でも反応を駆動させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では当初の計画どおり、フタロシアニンの外側に遷移金属が配位した錯体を合成することができた。その芳香族性・近赤外光特性の解析も順調に進みつつある。加えて、新規の大環状π共役分子であるベンジテトラアザポルフィリンが、18π酸化型構造と20π還元型構造の双方で安定に存在することを予想外にも見出した。ポルフィリンやフタロシアニンの類縁体で酸化還元活性なものは多く存在するが、両方の構造で空気中安定に存在することができるものはわずかであることから、本結果は近赤外色素への応用を展開する上で非常に意義深いものと考えている。さらに、ホスフィノアクリジン―パラジウム触媒を用いて長波長の赤色光でもクロスカップリング反応の進行が確認できたことは、低エネルギーである近赤外光を用いた遷移金属触媒反応を実現する上で重要な成果であると言える。以上の研究結果を踏まえ、本年度は当初の想定以上に研究が進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた新規の大環状芳香族分子を基盤とし、引き続き遷移金属錯体を合成しその芳香族性・近赤外特性といった物性解析に取り組む。特に外部刺激に応じた芳香族性・非芳香族性・反芳香族性の制御により近赤外光吸収・蛍光・リン光のスイッチングを実現し、癌の光線力学療法や生体イメージングといった応用研究につなげていく。 また、近赤外光エネルギーで駆動する遷移金属触媒反応の実現に向けて、新たな遷移金属―芳香族分子の合成に挑戦する。
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