OMVに着目した脳バリア破綻とアルツハイマー病におけるジンジパイン仮説の検証
Project/Area Number |
22K15287
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 47030:Pharmaceutical hygiene and biochemistry-related
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
野中 さおり 安田女子大学, 薬学部, 講師 (40767787)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | ジンジバリス菌 / ジンジパイン / outer membrane vesicle / 血液脳関門 / ZO-1 / オクルディン / OMV / アルツハイマー病 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、代表的な歯周病菌であるジンジバリス菌のプロテアーゼのジンジパインがouter membrane vesicle(OMV)に結合した形で脳血管内皮細胞内に入って密着結合構成タンパク質を分解し、脳血管透過性を高めると予想し、これをin vitroの実験系で検証する。また、OMV上のジンジパインがin vivoで脳血管のバリア破綻及びアルツハイマー病様病態を引き起こすかを動物実験で検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、これまでに、アルツハイマー病の発症・増悪を招くとされる代表的な歯周病菌のジンジバリス菌が分泌するプロテアーゼのジンジパインが、密着結合構成タンパク質のZO-1やオクルディンを直接分解することで、脳血管内皮細胞の透過性を上げ、菌自体や病原性因子の脳実質への侵入を可能にすることを発見した。しかし、これらジンジパインの標的タンパク質のアミノ酸配列を調べたところ、ジンジパインによる切断可能配列が、細胞外に出ていないことが分かった。このことは、ジンジパインが細胞内に入ってこれらタンパク質を切断することを示唆するが、その仕組みはわかっていなかった。2022年度はその解明に取り組み、以下のような実験により、ジンジバリス菌が分泌するouter membrane vesicle(OMV)を運び屋としてジンジパインが細胞内に侵入し、ZO-1やオクルディンといった密着結合構成タンパク質を細胞の内側から分解することを明らかにした。
1. ジンジパインの結合したOMVのヒト脳血管内皮細胞株への侵入:ジンジバリス菌の培養上清からエキソソーム抽出キットを用いて調製したOMVを蛍光色素のCy5でラベルした後、ヒト脳血管内皮細胞株(hCMEC/D3細胞)に添加し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、Cy5のシグナルが細胞内から検出された。また、同じ細胞に対して、抗ジンジパイン抗体を用いた免疫染色を行ったところ、そのシグナルが細胞内のCy5シグナルと重なっていた。以上のことから、ジンジパインはOMVに結合した状態で脳血管内皮細胞に侵入すると考えられた。
2. ジンジバリス菌OMVによる密着結合タンパク質の分解:OMVのみを添加しても、hCMEC/D3細胞におけるZO-1及びオクルディンレベルの減少が見られることがウエスタンブロッティングで確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vitroの実験は終わり、目的の一つであったジンジパインが細胞内に入る仕組みは解明できたが、当初、2022年度に予定していたin vivoでもジンジバリス菌OMVが血液脳関門のバリア機能の破壊に関わるかを調べる実験までは進めなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、マウスを用いて、OMV上のジンジパインがin vivoにおいて血液脳関門のバリア機能の破壊及び、アルツハイマー病様病態に関わるかの検証を行う。具体的な方法は以下の通りである。
OMV上のジンジパインがin vivoにおいて血液脳関門のバリア機能の破壊及び、アルツハイマー病様病態に関わるかの検証: ジンジバリス菌野生株の培養上清から調製したOMVを静脈内投与した後、エバンスブルーを静脈内投与する。エバンスブルー投与後数時間~1日後に灌流固定して脳を取り出し、PBS投与群よりも脳実質への色素の漏れ出しがあるかを脳ホモジネートから抽出した色素量を測定して調べる。また、OMV投与後に、蛍光ラベルしたOMVまたは、ジンジバリス菌を静脈内投与した後、灌流固定して取り出した脳からこれら由来の蛍光が検出されるかを調べ、OMV投与後のOMV及び、ジンジバリス菌の脳移行も確認する。また、ジンジパイン欠損株のOMV投与時ではこれらの現象が阻害されるかを調べ、ジンジパイン依存性を検証する。さらに、ジンジバリス菌の野生株由来のOMVを静脈内投与した加齢マウスの凍結脳切片を作製し、アルツハイマー病に特徴的なAβの蓄積や脳内炎症程度が増加するかを抗Aβ抗体及び炎症性サイトカインに対する抗体を用いた免疫染色で調べる。また、同じ処置を行ったマウスに対し、学習・記憶障害が生じるかをステップスルー型受動的回避試験により調べる。また、ジンジパイン欠損株由来のOMVの投与では、上記のアルツハイマー病様症状が抑制されるかを調べることで、ジンジパインの関与を検証する。上記実験は、OMVの代わりに、ジンジバリス菌自体を投与する群も置いてその効果を比較し、OMVの重要性を検証する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)