Project/Area Number |
22K15479
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 49060:Virology-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平野 順紀 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (50899101)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | エンテロウイルスA71 / 3Aタンパク質 / 小胞体 / ゴルジ体 / 細胞死 / 宿主因子 / エンテロウイルス71 / 小胞体ストレス |
Outline of Research at the Start |
中枢神経に病態を引き起こすエンテロウイルス感染症に着目し、エンテロウイルスA71の特定のウイルスタンパク質が、小胞体の強いストレス状態と細胞死を誘導することを見出している。このウイルスタンパク質がエンテロウイルスA71の神経病態に深く関与することが予想されたため、このタンパク質の発現が神経細胞に与えるダメージの分子生物学的な解析と、病態誘導に関与する宿主因子の同定を試みる。本研究課題により、エンテロウイルスA71による神経病態発症機構の解明と病態緩和に向けた知見が得られることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、エンテロウイルスA71(EV-A71)の非構造タンパク質である3Aタンパク質が、細胞内小器官の1つである小胞体を強いストレス状態に誘導する現象に着目し解析を実施している。これまでの検討により、3Aタンパク質がEV-A71の宿主因子であるGBF1と相互作用し、GBF1の機能を阻害することで小胞体にストレスを誘導することを明らかにしている。また、3Aタンパク質とGBF1の相互作用には、3Aタンパク質のN端領域に位置する特定のアミノ酸が必須の役割を果たすことを明らかにしている。これまで本研究では、3Aタンパク質を細胞に直接発現させて各種の性状解析を実施してきた。本年度は、遺伝子組換えEV-A71作製技術を使用し実際のEV-A71感染下において、これまで得られた結果を検証した。3Aタンパク質にタンパク質タグを付加し、細胞内における3Aタンパク質の局在を検証可能な3Aタンパク質を発現する遺伝子組換えEV-A71を使用し、3Aタンパク質とGBF1の細胞内局在を評価した。この結果、EV-A71の感染にともない、GBF1の局在はゴルジ体から3Aタンパク質の集積した構造体へと変化し、GBF1が空間的に隔離されることでその機能が阻害されることが示唆された。また、GBF1と3Aタンパク質の相互作用に必須な3Aタンパク質内のアミノ酸をアラニン置換し、GBF1との結合能を欠いた3Aタンパク質を発現する遺伝子組換えEV-A71を作製し感染実験を行った。実験の結果、この遺伝子組換えEV-A71を細胞に感染させた場合には、野生型のEV-A71の場合と比較し、小胞体へのストレスの誘導が顕著に低いことを見出した。これらの結果から、実際のEV-A71感染時においても、3Aタンパク質がGBF1と相互作用し、小胞体にストレスを誘導していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、遺伝子組換えEV-A71作製技術を利用し、3Aタンパク質の惹起する小胞体のストレス経路の活性化メカニズムについて解析を実施した。タンパク質タグを付加した3Aタンパク質を発現する遺伝子組換えEV-A71および、3Aタンパク質領域にアミノ酸変異を導入し、GBF1との相互作用能を欠いた3Aタンパク質を持つ遺伝子組換えEV-A71を作製し、これらのウイルスの性状解析を実施した。本研究で用いた遺伝子組換えEV-A71の作製には、EV-A71遺伝子全長をコードするプラスミドの遺伝子編集が必要であることや、増殖能を持った組換えウイルスが得られる保証がないことから、計画当初は実験に困難が伴うことが予想されたが、実際に検討を行った結果、実験で使用可能な遺伝子組換えEV-A71を得ることに成功した。これらの遺伝子組換えEV-A71を使用し、実際のEV-A71感染下における3Aタンパク質の動態や機能の詳細を解析できたため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、3Aタンパク質がGBF1を介して小胞体に強いストレスを惹起することで、細胞死経路が活性化されることを見出している。また、この細胞死経路の活性化には、小胞体ストレスセンサータンパク質の1つとして知られるPERKが関与することを明らかにしている。PERKの阻害剤を細胞に処理した場合には、EV-A71の感染時に観察される細胞死が顕著に阻害された。このことから、3Aタンパク質およびPERKを介した細胞死経路の活性化は、EV-A71感染時に実際に起こる細胞死に特定の生物学的意義を有していると考えられる。一方で、EV-A71の誘導する細胞死にはこれまで、EV-A71非構造タンパク質の2Aタンパク質や3Cタンパク質が関与することも報告されており、その全体像は明らかではない。このため、2A・3A・3Cタンパク質が誘導する細胞死のシグナル伝達経路を比較解析し、それぞれが独立して活性化するのか、互いに影響を及ぼしてEV-A71感染時の細胞死が成立するのか知見を得る。また、EV-A71感染時に2A・3A・3Cタンパク質の細胞死のシグナル伝達経路の活性化状態を経時的にモニタリングすることで、それぞれの非構造タンパク質が誘導する細胞死経路が、ウイルス生活環のどの段階で実際に起こっているのか特定する。これらの検討により、3Aタンパク質にみられる細胞死誘導経路の特徴や、その生物学的意義を明らかにする。また、本研究で得られた知見はEV-A71によるものに限定されているが、EV-A71の属するエンテロウイルス属はヒトに多様な病態を誘導する様々なウイルス種で構成され、これらのウイルスもアミノ酸配列が類似する2A・3A・3Cタンパク質を有している。これらのウイルス種間で2A・3A・3Cタンパク質の細胞死誘導能に差があるか検証し、エンテロウイルス間の性状の差異との関連性について知見を得る。
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