骨髄不全症における標的オトリ人工抗体開発に向けたネオエピトープ反応性T細胞の検出
Project/Area Number |
22K15599
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 50020:Tumor diagnostics and therapeutics-related
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野上 彩子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師(キャリアアップ) (30754890)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 骨髄不全 / 血球減少 / 再生不良性貧血 / 発作性夜間ヘモグロビン尿症 / 自己反応性T細胞 / ネオエピトープ / PNH / CAR-T療法 / エピトープ |
Outline of Research at the Start |
再生不良性貧血等の骨髄不全症は、T細胞集団のごく一部の変化が原因と思われるが、細胞集団を対象とした網羅的解析では原因分子の特定に至っていない。また、近年普及したCAR-T療法後にも二次性の骨髄不全症が認められ、原因分子やその検査法が明確になっていない。一細胞解析技術は、遺伝子配列に加えて表面タンパクの同時解析が可能となった。またネオエピトープの予測法も発展がある。これらの技術による知見により疾患特異的な免疫病態分子に基づく治療戦略の実現は急速に高まると考える。本研究では、骨髄不全症における自己反応性T細胞とその抗原エピトープを特定し、新たな治療法および検査法の開発に繋げることを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
骨髄不全症は、T細胞集団のごく一部の変化が原因と思われるが、細胞集団を対象とした網羅的解析では原因分子の特定に至っていない。また、CAR-T療法後にも二次性の骨髄不全症が認められ、原因分子やその検査法は臨床的なアンメットニーズである。本研究では、CAR-T療法を施行後の血球減少から解析に着手した。同意を得た患者から経時的に採取した末梢血検体からPBMCおよび血清を採取当日に分離し解析に供した。解析に先立ち、試験系の陽性対象細胞としてCD19CAR陽性の株化細胞(CD19CAR-Jurkat細胞)を用いた。CD19CAR-Jurkat細胞は、当研究室で樹立された。2020年~2022年まで当院血液内科でCAR-T療法を施行された患者26名を対象とした後方視的解析では、1ヶ月または3ヶ月遷延する血球減少は、解析可能な者のうち各々85%および92.3%に認めた。遷延する血球減少の内訳はNeu減少61.5%、Hb減少84.6%、PLT減少53.8% であった。血球減少症例では末梢血中CAR-T細胞のexpansion以降にCD45RA-/CD196+細胞、CD159a+/CD56+細胞の比率および絶対数の上昇を認めた。CRS期に上昇したサイトカインには、自己反応性細胞の動員を司るサイトカインが含まれ、実際に自己反応性細胞の誘導が観察された。さらに、これらの結果に加えて、実際の骨髄不全症の患者から同意を得て検体を提供して頂き、ネオエピトープ推定に必要なWES, RNAseqデータの解析までを終え、複数の骨髄不全状態に対して多方面にわたる解析データを入手することができた。特にHLAタイピングでは、既報で疾患特異的抗原が提示される可能性が極めて高いと推定されたTypeI HLA型を認めた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRS期に上昇したサイトカインには、自己反応性細胞の動員を司るサイトカインが含まれ、実際に自己反応性細胞の誘導が観察された。さらに、本研究課題では、骨髄不全症の原因となる自己反応性T細胞と、その抗原を特定し、発症機構を解明するとともに、最終的には抗原またはT細胞受容体を捕獲して自己反応性T細胞による認識や攻撃を回避する画期的薬剤の開発に挑戦する。本研究課題によって明らかにする疾患特異的T細胞と抗原ペアの特定と発症機構の解明は、特異的な治療コンセプトを提示するためだけではなく、非特異的な免疫抑制による、医原性の腫瘍発生や重症感染症を回避するためにも重要である。この目的のため、実際の骨髄不全症の患者から同意を得て検体を提供して頂き、推定に必要なWES, RNAseqデータの解析までを終え、複数の骨髄不全状態に対して多方面にわたる解析データを入手することができた。本研究助成金により専門的な受託解析に切り替えた成果であると考えられる。特にHLAタイピングでは、既報で疾患特異的抗原が提示される可能性が極めて高いと推定されたTypeI HLA型を認めた。異常細胞におけるRNA-seqの結果を用い、公開健常対象PBMC群 と比較した発現変動遺伝子(DEG)解析した結果、発現抑制遺伝子に共通したプロファイルを認めた。体細胞遺伝子変異を各々SNV, INDEL,およびfusion に複数認め、患者固有のHLAに対する結合予測値低値となる候補配列を決定に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の情報から配列の推定を、重複除去後配列の中から検証実験に進む。初期フェーズでは、まずは発作性夜間ヘモグロビン尿症について、proof of conceptの研究を行い、良好な結果が得られた場合、再生不良性貧血、赤芽球ろう、骨髄異形成症候群などの他の骨髄不全症の臨床検体のクリニカルシークエンスを行い同様の解析を付すことで展開する。次フェーズでは、同一個体から経時的に得た免疫細胞について、一細胞解析等によって詳細なプロファイルを作成し、フェーズ1で同定した、性質についてプロファイルをモニタリングし、疾患活動性や治療による影響、治療効果等との関連を検証する。最終フェーズでは、遺伝子変異と発現タンパクの関係性と背景のゲノム異常等を横断的に解析し、多施設での大規模コホートによる解析結果を用い、バイオマーカーの開発を含めた超早期診断、予後予測アルゴリズム、共同研究による治療薬の開発に繋げる。治療薬の開発では、抗体薬の開発経験がある企業との共同研究が不可欠となってくるため、企業の開発対象として取り上げられ難い希少疾患について、proof of conceptを強固に示しながら、日本発の自己免疫調整に基づく骨髄不全治療薬の開発に取り組みたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)