動物モデルを用いた後付け的知覚生成の神経基盤の解明
Project/Area Number |
22K15618
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 51010:Basic brain sciences-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石津 光太郎 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (80880137)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 知覚生成 / 知覚意思決定 / オプトジェネティクス / マウス / Postdiction / 後付け的知覚 / 連続聴錯覚 / 再入力仮説 / 移動エントロピー |
Outline of Research at the Start |
われわれの知覚は,脳が感覚器からの情報をもとに「もっともらしい世界像」として推定・生成したものである.ときに脳は知覚生成の過程において,現在の感覚情報から過去にさかのぼって後付け的に知覚を補完する.そのような後付け的な知覚の例である「連続聴錯覚」をマウスに聞かせた際の神経伝達の流れを解析,および人工ニューラルネットワークモデルで活動を再現することにより,連続聴錯覚を生起する神経基盤および神経伝達ダイナミクスの同定を目指す.後付け的知覚生成のメカニズムや神経動態が明らかになれば,知覚システム全体の理解が深まるとともに,ニューラルネットワークや人工知能研究への応用などの展開が期待される.
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Outline of Annual Research Achievements |
われわれは外界からの刺激を時間遅れなく知覚している。脳は感覚器からのぼってきた感覚信号に対して脳内の予測や事前知識を統合することで、もっともらしい知覚を生成する。これらを鑑みると、知覚は後付け的に起こる現象だといえる。本研究は、知覚意思決定課題中のマウスの神経活動にオプトジェネティクスによる摂動を加えることで、マウスの脳内で感覚刺激と事前知識の統合処理がどのように行われているかを明らかにすることを目的とした。 マウスには頭部拘束下で教示音の高低に応じて左右のスパウトを舐め分けさせるfrequency-discrimination taskを課した。加えて、左右のスパウトから得られる報酬量に差を設けることで報酬バイアスがマウスの選択に与える影響を観察した。マウスは自分の選択に自信があるときは報酬量に関わらず正しい解答をし、自信がなければ報酬量が多く設定された選択肢に偏った。これは、マウス脳内で感覚情報と報酬量の事前知識との統合が行われている証左といえる。また、課題中のマウスの神経活動を電気生理計測によって計測したところ、マウスの知覚・意思決定プロセスにおいて、聴覚情報の処理は聴覚野で、感覚情報と報酬の事前知識との統合が内側前頭前野で行われることが示唆された。 次に,タスク中のマウスの聴覚野、前頭前野の神経活動をオプトジェネティクスによって任意のタイミングで抑制する実験を行った。教示音を提示している間に前頭前野を抑制すると、報酬差による選択バイアスの増加が見られたものの選択感度には変化が見られなかった。一方で、教示音が提示される直前に聴覚野を抑制すると報酬差による選択バイアスの減少が見られた。これらの結果は、聴覚情報処理は(主に)聴覚野で行われる一方で、報酬差の情報を選択に反映される過程において前頭前野のみならず、聴覚野も関係することを示唆しており、大変興味深い結果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、オプトジェネティクスによって聴覚野(感覚処理領域)もしくは前頭前野(感覚、事前知識統合領域)を任意のタイミングで抑制を行うことで、知覚の生成から意思決定に至るどの過程にそれぞれの領野が寄与するかを明らかにすることを目的としていた。 教示音を提示している間に前頭前野を抑制すると、報酬差による選択バイアスの増加が見られたものの選択感度には変化が見られなかった。一方で、教示音が提示される直前に聴覚野を抑制すると報酬差による選択バイアスの減少が見られた。これらの結果は、聴覚情報処理は(主に)聴覚野で行われる一方で、報酬差の情報を選択に反映される過程において前頭前野のみならず、聴覚野も関係することを示唆しており、大変興味深い結果といえる。 本研究の全体の計画では2年度にオプトジェネティクス課題をクリアすることを想定していたため、計画の進行度としては予定通りのものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、動物の知覚意思決定課題の実装、検証、課題中の神経活動の計測、および、オプトジェネティクスによる聴覚野、前頭前野の抑制実験を完了した。次年度から、得たデータを再現できるようなリカレントニューラルネットワーク(RNN)の作成に取り組んでいく。まずはタスク中の動物の行動および神経活動を再現するRNNを構築し、その上でオプトジェネティクスによる神経摂動を加えたときに、実際のオプトジェネティクスの行動結果を再現できるか試していく。この試みがうまくいけば、知覚の生成から意思決定に至るプロセスがより精緻にシミュレーションできるようになると考える。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)