Project/Area Number |
22K15642
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 51030:Pathophysiologic neuroscience-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱谷 美緒 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (20890809)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | ミクログリア / アストロサイト / 遺伝性白質脳症 / コロニー刺激因子1受容体 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、遺伝性白質脳症について、ミクログリア-アストロサイト連関からその病態を明らかにするものである。ヒト由来サンプルとしてiPS細胞と剖検脳組織を用い、多様な手法による多次元解析を行う。本研究は、ALSPの病態を明らかにし、治療起点の同定ならびにiPS細胞を用いた治療法検索につながるものである。また本研究はミクログリア-アストロサイト連関が注目されている多発性硬化症やアルツハイマー病等、広く中枢神経疾患病態への応用・波及効果が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究での仮説は「軸索スフェロイド及び色素性グリアを伴う成人発症白質脳症(ALSP)におけるミクログリア(MG)は、CSF1R遺伝子変異を背景に老化・感染などの後天的刺激が加わりアストロサイト(AS)を活性化し、白質脳症を発症を誘導する」ことであった。 2022年度にALSP患者・健常者(HC)由来iPS細胞からのiMG分化に成功した。遺伝子発現解析では、ALSP-iMGで解糖系や酸化的リン酸化、脂肪酸代謝に関わる遺伝子の発現がいずれも低下し、細胞内代謝の変化が示唆された。 2023年度はiMGの細胞内代謝に注目した。細胞外フラックスアナライザー解析では、ALSP-iMGではHCに比してミトコンドリア(Mt)呼吸が優位であったが、長期培養によりその優位性は消失し低エネルギー産生状態となった。ALSP-iMGでMt膜電位の低下傾向とMtの量的増加を認め、Mtでの活性酸素種(ROS)産生が増加しており、ALSP-iMGにおけるMtダメージを示唆する。実際ALSP-iMGでは酸化ストレスの指標である過酸化脂質の増加がみられた。また、ALSP-iMGでは非刺激時のサイトカイン産生は低下傾向だったが、LPS刺激下ではIL-1β、TNF、IL-6産生が亢進した。以上より、ALSP-MGではMtダメージを背景にROS産生が増大し、老化が修飾因子である可能性がある。また後天的な刺激により炎症性サイトカイン産生が亢進し、また刺激応答によるエネルギー需要の増大はROS産生をさらに促進しうる。ROSや炎症性サイトカインは軸索輸送阻害によるスフェロイド形成の促進、さらには神経死を招き、ALSP病態に関与しうる。また、ASはROSや炎症性サイトカインにより反応性増殖をするが、ALSP患者の前頭葉白質でアストロサイトの増殖を認め、細胞障害性ASマーカーであるC3、GBP2陽性であり上記仮説を支持する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、2022年夏から2022年末にかけて産後・育児休業を取得した。それに伴い、本事業の実験計画変更を申請した。これらを踏まえて、2022年度(患者剖検脳におけるアストロサイト(AS)の活性化・細胞障害性の獲得の病理学的評価、iPS細胞からのミクログリア(iMG)分化方法の確立と遺伝子発現解析)はおおむね計画通り実行した。遺伝子発現解析の結果、ALSP-iMGの細胞内代謝の異常が機能的異常に関連しうることを発見し、2023年度にはiMGの細胞内代謝、機能(サイトカイン産生能や貪食能)の評価を行った。その結果、iMG由来の活性酸素種(ROS)や炎症性サイトカインが反応性ASや神経軸索輸送障害・神経死をもたらすキー因子であることを同定した。以上より、おおむね実施計画通り順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を受け、現在「ALSP-ミクログリア(MG)ではミトコンドリアダメージを背景に活性酸素種(ROS)産生が増大し、老化が修飾因子である可能性がある。また後天的な刺激により炎症性サイトカイン産生が亢進し、また刺激応答によるエネルギー需要の増大はROS産生をさらに促進し、成人発症の契機となっている。ROSや炎症性サイトカインは軸索輸送阻害によるスフェロイド形成の促進や神経死、アストロサイトの反応性増殖を招き、病態に関与する」という仮説をもっている。 今後は、①ヒト神経細胞株由来の成熟ニューロンとiMGの共培養を行い、ALSP-iMGによる神経障害性を評価する。②リポポリサッカライド等による刺激後、あるいは長期培養(老化惹起)後のiMGとの共培養も行う。また、③ROSスカベンジャーやサイトカイン中和抗体の添付により神経障害性が緩和されること、④野生型のCSF1R遺伝子を過剰発現したALSPではALSP-iMGでみられた細胞内代謝、ROS産生、サイトカイン産生の変化が改善することを証明する。以上について、2024年第2四半期を目途に結果を取りまとめ、学会や学術誌に発表する予定である。
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