蛍光飛跡検出器を用いたα線標的アイソトープ治療に資する線量評価
Project/Area Number |
22K15831
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 52040:Radiological sciences-related
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
楠本 多聞 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 主任研究員 (90825499)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | 標的アイソトープ治療 / 蛍光飛跡検出器 / α線 / RBE |
Outline of Research at the Start |
ヒト膵臓がん細胞(MIA PaCa-2)を対象とした実験をおこなう。MIA PaCa-2はα線放出核種(At-211またはAc-225)で標識するためのHER2タンパクを発現しない。そのため、HER2タンパクを発現させるための遺伝子組み換えをMIA PaCa-2におこなう。次に重粒子線がん治療装置HIAMCを使用したHeイオンの照射をおこなう。加えて、実際にα線放出核種を利用した照射実験を行い、生存率の評価を行う。HIMACを利用したHeイオンの細胞の生存率が10%になる線量とα線の放出核種を利用した際のそれの値を比較することで、標的アイソトープ治療の治療効果を外照射と比較して議論する。
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Outline of Annual Research Achievements |
放射線がん治療は放射線による電離・励起作用によってがん細胞のDNAを死滅させることによって行うがん治療法であり、外科両方及び化学療法と並ぶがんの三大療法である。治療が困難とされる播種性の転移がんに有効な放射線がん治療として、標的アイソトープ治療がある。標的アイソトープ治療とは、放射性同位元素で標識した薬剤をがんに集積させ、内照射によって治療を行う方法である。使用される放射性同位元素の中でもAt-211のようなα線放出核種はLETが高く飛程が短いことから、がん周囲の正常組織への副作用を抑制しつつ、大きな治療効果が期待できる。これまでに標的アイソトープ治療の効果を定量的に評価するための研究が数多く行われてきているものの、放射性同位元素から放出されるα線の線量の評価手法が確立されていない事及び細胞の生存率が取得されていない事からX線や粒子線治療といった他の外照射による放射線がん治療との効果が定量的に評価されていない。本研究では、ヒトすい臓がん細胞(MIA Paca-2)を用いた細胞の生存率の評価する事を目的とした実験を推進している。 具体的には、MIA Paca-2への遺伝子組み換えを実施し、HER2タンパクを発現するためのトランスフェクションを実施した。生成したコロニーから細胞のセレクションを実施した。いくつかの細胞株に対してX線の照射を行い、細胞の生存率を取得し、MIA Paca-2のワイルド株との放射線感受性の比較を実施した。並行して、断層画像を取得することによるα線の飛跡1つ1つの飛程から入射エネルギーの特定法の開発を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今研究年度では、遺伝子組み換えによってHER2を発現するMIA Paca-2細胞の作製に成功した。DNAのトランスフェクション後シングルコロニーからスケールアップさせた遺伝子組み換えMIA Paca-2に対して200 kVpのX線照射を行い、細胞の生存率曲線を取得した。取得した生存率曲線から生存率が37%, 10%, 1%となる線量(D37, D10, D1)を評価する。取得した値はMIA Paca-2のワイルド株のそれと比較した。結果として、遺伝子組み換えによるMIA Paca-2はワイルド株よりも放射線感受性が若干高い事が分かった。同様の実験を外照射によって実施するために、HIMACの中エネルギービーム照射室においてブラッグピーク近傍のHeイオンの照射実験を実施している。照射実験のマシンタイムは既に割り当てられており、滞りなく本研究を推進できると考えている。 並行して、α線の線量評価手法の確立も進めている。蛍光飛跡検出器内に記録されたα線の飛程を断層画像の取得により評価した。得られた飛程から蛍光飛跡に入射したα線のエネルギーを評価できる。Am-241線源を用いて同実験を実施したところ、線源から放出されたα線のエネルギーと蛍光飛跡検出器内の飛程から求めたα線のエネルギーは概ね一致した。取得した基礎データを展開することで、蛍光飛跡検出器上に細胞を培養した際の、細胞1つ1つに付与されたエネルギーの評価につなげることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、外照射による遺伝子組み換えMIA Paca-2の細胞の生存率曲線を取得する。得られた生存率曲線はワイルド株のそれと比較する。並行して実際にAt-211を用いた内照射による照射実験も進める。蛍光飛跡検出器を用いてα線の線量を評価し、内照射の細胞の生存率を評価する。外照射の生存率曲線と内照射のそれを比較し、α線を用いた標的アイソトープ治療の効果を定量的に評価する。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)