低出生体重仔の成獣期高血圧・慢性腎臓病発症機序の解明とタウリンによる予防効果
Project/Area Number |
22K15908
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 52050:Embryonic medicine and pediatrics-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 翔一 日本大学, 医学部, 助教 (90793216)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 子宮内虚血 / 胎児期低栄養 / 低出生体重 / エピジェネティクス |
Outline of Research at the Start |
低出生体重児は将来、慢性腎臓病や高血圧を発症しやすい。そのメカニズムの解明と予防法の開発を目指す。低出生体重児は胎生期の組織幹細胞や前駆細胞のエピジェネティクス異常が原因で慢性腎臓病や高血圧を発症し、それらは母体のタウリン投与で予防できるという仮説を立てた。 子宮内虚血操作により低出生体重の産仔マウスが出生し、高脂肪食飼育によりメタボリック症候群となる動物モデルを用い、血圧の推移と組織幹細胞や前駆細胞の機能およびエピジェネティクスの評価を行う。その結果、低出生体重児の胎生期の環境が、成体の慢性腎臓病や高血圧発症に関与する新しいメカニズムおよび、タウリン補充での予防効果を証明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、低出生体重児は、腎臓由来間葉系幹細胞や血管内皮前駆細胞のエピジェネティクスの異常により、血管内皮前駆細胞の機能低下から高血圧、腎尿細管修復細胞異常による腎障害および、腎間葉系幹細胞の修復機能低下から慢性腎臓病が発症するのかという問いを解明することにある。そのことにより、低出生体重児の胎生期の環境が、成体の慢性腎臓病や高血圧発症に関与する新しいメカニズムを明らかにし、さらに母体や出生後早期にタウリン補充を行うことで予防できることの証明を目的としている。 ICR系統のマウスを用いて、低出生体重-メタボリック症候群発症モデルマウスを作成し、実験を行っている。妊娠マウスに普通食+普通飲水を与える母体について、妊娠16.5日において子宮動脈の血流を15分間遮断する虚血群、腹部切開のみを加えた非虚血群ともに作成した。 出生した産仔マウス自然経過に関して検討を行った。新生仔マウスについては離乳後は普通食を与え体重計測や8週齢での体組成、血液、尿検査、腎臓の摘出を行い解析した。虚血群では子宮内虚血によって低出生体重仔が産まれるが、虚血群では8週齢において、非虚血群と比べて低体重のままであるものの高血糖を認めた。一方、尿中β2マイクログロブリン、尿中微量アルブミンにおいては、虚血群で非虚血群より有意に高値であった。腎臓病理を解析したところ、糸球体数や、硬化糸球体割合には有意差はなく、糸球体長径が虚血群で有意に高値であった。 後述する理由において、進捗が遅れているエピゲネティクス解析については、腎臓組織のメタボローム解析にて検討を、またタウリンの効果については、ヒトにおける低出生体重児の臍帯血や脳の磁気共鳴スペクトロスコピーを用いて検討を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究以前にラットを用いた実験系で行っていた、腎臓由来間葉系幹細胞や腎尿細管修復細胞、血管内皮前駆細胞についての実験が、マウスにおいて困難な状況にある。ラットとマウスの個体差によるものが大きいと考えられた。具体的には腎臓由来間葉系幹細胞や腎尿細管修復細胞では十分な細胞数を得られず、血管内皮前駆細胞の実験では十分な血液量の採取が困難であった。 以上より、エピジェネティクス解析のためのin vitroな実験について再考を余儀なくされた。そこで、生体内に含まれる代謝物質の種類や濃度を網羅的に分析するできるメタボローム解析を、虚血群、非虚血群それぞれの腎臓組織を用いて行うこととした。そのことで、虚血群と非虚血群の差、つまり低出生体重児における成体での慢性腎臓病発症の原因検索を行うこととした。 またタウリン投与についても、その実験系の確立が困難となった。マウスの飼育における飲料への一定のタウリン負荷の問題と、虚血マウスの新規の作成計画が進んでいないことに起因する。そのためタウリンの効果をみるという、この課題の2つ目のテーマについては新たな切り口を求めることとした。 具体的にはヒトにおける低出生体重児の臍帯血及び、脳の磁気共鳴スペクトロスコピーを用いて、タウリン濃度の測定を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
虚血群、非虚血群それぞれの腎組織を用いたメタボローム解析では、現時点で主成分分析にて2群間に明らかな違いがあり、虚血ひいては、低出生体重による影響が如実に反映されていると思われる。具体的には17の代謝化合物が2群間で有意差を持っていた。コハク酸、N1-Methyl-4-pyridone-5-carboxamide、S-アデノシルメチオニンは、腎障害との関連の深い物質である。それらの物質についてさらに関連を精査する予定である。 また、ヒトの低出生体重児における、臍帯血検体を用いた、タウリンを含めたアミノ酸分析の解析をすでに開始している状況にある。また磁気共鳴スペクトロスコピーによる脳のタウリン濃度測定も今後行っていく予定としている。 すでに判明しているin vivoの結果に、メタボローム解析の結果を統合することで、低出生体重-メタボリック症候群発症モデルマウスにおける、成獣期の腎臓病発症のメカニズムを明らかにすべく実験を完結させて行く予定である。 また胎生期の充分なタウリンによる成獣期の腎臓病発症の予防効果については、母胎マウスにタウリンを負荷することでの直接的な確認は難しい状況となった。しかしながら、既報や以前のラットを用いた実験系では、その効果があると考えられ得る。そのため出生体重と臍帯血中のタウリンの関係を明らかにする。また低出生体重児の磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた、出生児の脳内タウリン濃度測定を併せることで、出生体重とタウリンの関係性を見出すことで、胎児期のタウリンの役割を評価したい。 それらの統合することにより当初の目的である、低出生体重児の胎生期の環境が、成体の慢性腎臓病や高血圧発症に関与する新しいメカニズムに迫るべき実験を続けている。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)