Project/Area Number |
22K16076
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 53020:Cardiology-related
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂井 千恵美 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (90827982)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | 心不全 / 炎症 / DNA損傷 / HFpEF / マクロファージ / 細胞老化 |
Outline of Research at the Start |
収縮能を保持した心不全(HFpEF)は心不全のなかでも加齢に密接に関連した疾患であるが、病態理解が未だ不十分で特異的治療法が確立されていない。本研究では、HFpEFにおいて老化マクロファージの極性化の変化が心臓構成細胞に肥大化・繊維化・炎症を誘導するという仮説を検証するため、ゲノム修復不全により細胞老化を呈するマウスのマクロファージを用いた心筋構成細胞との共培養実験や、本マウスを用いた骨髄移植モデルによって老化マクロファージと心筋構成細胞とのクロストークを検討する。また、マクロファージ-心筋構成細胞連関の鍵となる因子をマクロファージ由来細胞外小胞から解析し新規HFpEF治療標的を探索する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)の病態において細胞老化、特にマクロファージの老化が心臓構成細胞に細胞肥大、繊維化、炎症を惹起するかを探索することを目的としている。 HFpEFマウスモデルの作成に難渋したため、マウスの左冠状動脈前下行枝を永久結紮し心筋梗塞モデルを作成し心筋梗塞後の心筋リモデリングにおける細胞老化の影響を検討した。マウスは野生型とDNA二本鎖切断の修復に関与するタンパクKu80をノックアウトしたKu80+/-を用いた。Ku80欠損マウスではDNA損傷修復の不全により細胞老化が加速している。 Ku80+/-マウスは野生型に比べ心筋梗塞後の予後が悪く、心機能低下を認めた。心筋梗塞後24時間ではKu80+/-マウスは野生型と比較して梗塞面積の有意差を認めなかったが、1ヶ月後では梗塞面積が有意に増加した。各種炎症性サイトカインの発現を時系列(心筋梗塞後6,24,48,72時間)で解析すると、Ku80+/-マウスではIL-10の発現増加の遅延を認めた。IL-10は抗炎症あるいは炎症収束に関与していることから、Ku80+/-マウスではIL-10の発現遅延により、心筋梗塞後の炎症応答に不全をきたしている可能性が示唆された。このマウスの骨髄由来単球をマクロファージに分化させ炎症性(M1)あるいは抗炎症性(M2)マクロファージへの極性化をサイトカインの発現解析により解析したが、Ku80欠損細胞でM1あるいはM2マクロファージの極性化の調節不全は認められなかった。これらの結果からDNA損傷蓄積に誘導される細胞老化は心筋においてIL-10の発現遅延により心筋梗塞後の炎症応答の調節に異常をきたす可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HFpEFマウスモデルの作成に難渋したため、心筋梗塞モデルを作成し解析することとした。心筋梗塞は心不全の主原因である。Ku80ノックアウトマウスを用いた心筋梗塞モデルの解析から、DNA損傷修復不全は心筋梗塞後の予後を悪化させ、心機能低下を増悪させることが示された。心筋梗塞後早期(24時間)では野生型と比較して梗塞巣のサイズに有意差は認められなかったが、1ヶ月後ではKu80欠損マウスで梗塞巣サイズが有意に増加した。さらにKu80欠損心筋組織では心筋梗塞後のIL-10の発現増加が野生型に比べ遅延ししていた。これらのことから、DNA損傷修復不全はIL-10の発現遅延により心筋梗塞後の炎症応答の収束に異常をきたし心機能低下や心筋梗塞後の予後を悪化させる可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずIL-10の発現遅延がどの細胞で起きているのかをマウス心筋組織の免疫染色により特定する。マクロファージではアポトーシスを誘導するとL-10の発現が増加することが報告されているが、心筋細胞でも同様のことが起こるかをヒト心筋初代培養細胞を用いて検討する。これまでの検討からIL-10の発現に寄与する細胞として浸潤性のマクロファージではない可能性が示唆されたが、心筋組織常在のマクロファージがIL-10の発現に寄与するかを検討する。さらに心筋梗塞後のリモデリングにおけるIL-10の機能について解析を行い、心筋梗塞後のIL-10の補填によってKu80欠損マウスで予後が改善するかを検討する。DNA損傷応答とIL-10シグナルの連関についても探索していく。
|