Project/Area Number |
22K16126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 53020:Cardiology-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 大樹 東北大学, 大学病院, 助教 (70925627)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 運動誘発性肺高血圧症 / 肺血管拡張薬 / 心不全 |
Outline of Research at the Start |
肺高血圧症は未だ内科的根治治療が確立していない予後不良の進行性疾患である。今日では、安静時に肺高血圧症がみられない患者の中で、運動時に肺高血圧症を発症または増悪をすることがわかっており、肺高血圧症もしくは心不全患者の予後、心血管イベントの発症率が改善されない一つの要因と考えられている。この運動誘発性肺高血圧症については動物モデルが存在せず、運動時の肺動脈の機能や、その分子レベルでの機序が未解明であった。本研究は、肺高血圧症動物モデルの運動時の肺血管、心臓の役割を検索する。また培養肺動脈平滑筋細胞を用いて、RNA sequenceなどの網羅的な解析を行い、肺動脈機能と運動時の役割を解析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
計画通り、当院の呼吸器外科で行われる肺癌手術の際に摘出される肺組織の中で、外科医が正常部位と判断した組織から肺動脈を剥離し、コントロールの肺動脈として平滑筋細胞の初代培養を行った。 また、当院で新規に肺移植を行われた患者からも同様に肺動脈を単離し、培養細胞を樹立した。新規と当科で保存していた肺移植患者由来の肺動脈平滑筋細胞と上記のコントロールの細胞を用いてRNA sequenceとメタボローム解析を施行した。後述のように複数の院生とともに、細胞、動物実験を施行している。 詳細は進捗状況に記載しているが、肺血管拡張薬の主要な3経路である、プロスタグランジン経路(PGI2受容体選択的作動薬:代表的薬剤はセレキシパグ)、NO-sGC-cGMP経路(PDE5阻害薬やsGC刺激薬)、エンドセリン経路(エンドセリン受容体拮抗薬)の各受容体の発現を評価すると、プロスタグランジンの経路が肺高血圧症由来細胞で発現の低下がみられた。更なる機序の解明のため循環器内科の大学院生とともに研究をしている。 また、伸展刺激を受けた肺高血圧症由来細胞においては、メタボローム解析においてTCA回路が働いていないことがわかったため、RNA sequenceと合わせて、同経路の原因因子の解析を行っている。 同研究データの一部について2023年3月に開催された日本循環器学会のシンポジウムで発表し、今後、2023年6月に開催される日本肺高血圧・肺循環学会のYoung investigator Awardで発表予定である。 また、今回施行したRNAシーケンス、メタボローム解析は、当科のメインデータになるものであり、今後複数の研究の礎になると考えられる。複数の院生の博士課程のプログラムの報告に使用しており、下記のように予定されている動物実験が終了後、積極的に学会発表を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、肺癌手術の際に外科医が正常部位と判断した動脈をコントロールの肺動脈として平滑筋細胞の初代培養を行った。新規に肺移植を行った患者からの肺動脈平滑筋細胞と当科で保存していた肺移植患者由来の肺動脈平滑筋細胞を用いてRNA sequenceを施行した。mRNAレベルでは、sGC、エンドセリン受容体シグナルは健常者と比較し有意な変化はなく、プロスタサイクリン受容体(PTGIR)とアラキドン代謝に関わるホスホリパーゼAの中のPLA2G2Aの低下がみられた。 しかしながら、細胞実験において、PLA2G2Aの発現自体を蛋白レベルで評価し、血管内の局在を明らかにすることは技術的にも困難であり、PTGIRを制御していることを示すことが困難であった。そのため、同様にRNA sequenceで肺高血圧症症例において健常群と比し32倍の発現上昇をしていたCTRP7(Complement C1q tumor necrosis factor-related protein,C1q/TNF-related protein)に着目した。CTRP7が肺高血圧症や肺高血症動物モデルの肺において、蛋白レベルにおいても発現が上昇していることがわかり、同様にPTGIRは低下していることがわかった(挿入図)。SiRNAによる実験でも、CTRP7のdown regulationはsGCやエンドキサン受容体シグナルに影響をしなかったが、PTGIRを上昇させることがわかった。更にIL-6刺激によりこのCTRP7の上昇と、PTGIRの低下が再現された(挿入図)。また少数例の確認であるが、血漿におけるCTRP7値の評価では、膠原病由来肺高血圧症症例において高値であることがわかった。上記実験により炎症反応によるCTRP7の上昇を介したPTGIRの制御機構を示唆する結果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
当院では肺高血圧症症例のカテーテル検査時の血漿検体は全て保存されており、PGI2受容体選択的作動薬であるセレキシパグを投与された症例の血漿検体においてCTRP7を測定し、同値とセレキシパグの反応性を評価する。 また動物実験においては、CTRP7をダウンレギュレーションするアデノ随伴ウイルスベクターAAVをベクタービルダーに発注・作成した。肺高血圧症動物モデルにおいてCTRP7の発現が上昇していたため、AAVによってCTRP7の発現を抑制して、セレキシパグの効果が増強し、肺高血圧症の血行動態、運動耐容能などが改善するのか評価を行っている。既報に沿って、AAVの投与方法は経気管支投与とし、セレキシパグの投与方法は経口投与とした。同実験は、6月には動物データを終了する予定である。 また、別なプランとして、伸展刺激を加えた培養細胞のメタボローム解析を行った際に、肺高血圧症由来の平滑筋細胞ではラクテートの上昇がみられ、アシドーシスが進行していた。詳細な機序について更なる解析を加える為、RNAシーケンスのデータから原因となる因子の探索を行っている。また血管弛緩反応に関わる因子の変化を評価している。 また、当院では肺高血圧症患者に対して、運動負荷検査を行い、上記と同様に血漿検体を運動前後で回収している。肺高血圧症症例が運動負荷前後でどのような因子の変化がみられるか、またその変化が細胞で得られた結果とどのような相関があるのか、メタボローム解析も含めて評価する予定である。
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