膵癌におけるミトコンドリアダイナミクスに注目した革新的治療法の開発
Project/Area Number |
22K16501
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 55020:Digestive surgery-related
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
坂本 太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60366234)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | ライソゾーム酵素 / ミトコンドリア / マイトファジー / 膵臓癌 / 膵癌 / オートファジー |
Outline of Research at the Start |
膵臓がんは他のがんに比べて予後が著しく悪いため、様々な角度から治療法の研究が試みられています。がんは自身が生き残るためにオートファジーと呼ばれる再生機能を駆使しています。我々はがん細胞内のエネルギー産生を行う小器官であるミトコンドリアの代謝とオートファジーの関連に着目しました。 本研究では、動物実験で膵臓がんのオートファジーに関わるミトコンドリア関連遺伝子を発見し、それを標的とした新規治療法の開発が可能かどうかを検証していきます。
|
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓癌患者は年々増加しており、医療技術の進歩にかかわらずその予後は依然として不良である。またその悪性度の高さにより診断時に手術可能な症例は全体の10-20%にとどまっており、化学療法の進歩により予後の改善が望まれている。 膵癌は乏血性の腫瘍であり、血管新生が乏しく、低酸素状態では、細胞は細胞質で行われる嫌気的解糖系によってATPを産生している。がん細胞は増殖や細胞活動に大量のエネルギーを必要とするが、なぜ効率的なエネルギー産生系であるミトコンドリアの酸化的リン酸化を使わずに、解糖系を使用するのかは未解明である。その理由として、がん細胞の増殖に伴う虚血による低酸素の環境に抵抗するため、もしくはTCA回路ならびに酸化的リン酸化に関与する遺伝子の変異などにより、ミトコンドリア機能の低下やオートファジーの亢進が考えられている。一方PET検査で検出されない腫瘍も存在し、癌のミトコンドリアにおける呼吸機能障害は稀でがんの産生するATPの大部分はミトコンドリア由来であることも報告されており、がん細胞においてもミトコンドリア機能の重要性が見直されている。 ミトコンドリア選択的オートファジーであるマイトファジーの最終段階はライソゾームに依存した分解系であり、特定のライソゾーム酵素を選択的に阻害することにより、マイトファジーの分解不全を誘導し、抗がん剤の効果を高める方法を着想した。本研究では酸性βグルコシダーゼ(GBA)による糖脂質代謝ネットワークを解析し、抗がん剤耐性の原因を明らかにするとともに、膵癌治療における基礎的知見を提供する。また、いまだに解明されていない抗がん剤投与下のGBAの機能を解明する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GBA酵素活性とタンパク質発現量の評価を行った。膵癌細胞株(PANC-1, BxPC-3, AsPC-1)と正常膵管細胞(HPNE)に関してGBA酵素活性を測定し、癌細胞株間での酵素活性の相違がGBA蛋白発現量との相関を示した。またsiRNA法を用いてGBAをノックダウンしたところ、GBA酵素活性と蛋白発現量が有意に減少した。GBAをノックダウンしたことにより、もともとのGBA酵素活性の大きさにかかわらず細胞増殖抑制効果を認め、同時にアポトーシス細胞の増加、アポトーシスシグナルの増強を認めた。 神経細胞においてはGBAの遺伝子変異でミトコンドリア障害を認めることが報告されているため、膵癌細胞株においてGBAノックダウンによる形態学的評価を行った。GBAノックダウンにより、各細胞株の細胞質で膨化したミトコンドリアの蓄積が確認され、蛍光顕微鏡下でのミトコンドリア蓄積と、ライソソーム活性の低下を確認した。 蓄積したミトコンドリア機能の評価として、細胞内の活性酸素種(ROS)を評価したところ、フローサイトメトリーでの細胞内ROSの蓄積が確認された。ミトコンドリア内においてもROSの蓄積が確認され、ミトコンドリアの機能不全を示唆した。マイトファジーの最終分解系であるライソゾーム変性機能をLysoTracker Red DND-99染色で評価した。同時にミトコンドリア染色をMitoTracker Green FMで実証した。GBAノックダウンによりミトコンドリア増加が促進される一方、ライソゾーム機能は全体的に低下しており、GBAノックダウンでミトコンドリア分解が減少することが示唆された。次にマイトファジー特異的色素 (Mtphagy Dye) を用いたフローサイトメトリーによりマイトファジーを測定した。GBAノックダウンにより、Mtphagy Dyeの蛍光強度が低下した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究でGBAノックダウンにより不良ミトコンドリアが蓄積されることが明らかとなっており、さらに不良ミトコンドリアの蓄積の原因を評価することを検討している。具体的に、ミトコンドリアの選択的オートファジーであるマイトファジー機構を検索する。方法として、オートファジー関連タンパク質であるLC3とp62の発現量をウエスタンブロッティング法で評価する。 次にマイトファジーのアポトーシス誘導との関わりを検討する予定である。GBAノックダウンによるアポトーシス誘導はマイトファジーが必要であるかを検討するために、マイトファジー阻害剤(Mdivi-1)を用いることにより、阻害剤単独で用いた際と比較して、GBAノックダウンとの組み合わせが、アポトーシス細胞を誘導するのかを検討する予定としている。さらにマイトファジーの阻害が、GBAノックダウン後の不良ミトコンドリアのクリアランスをブロックするかを検出する。その検出が可能であれば、ライソゾーム酵素と抗がん剤耐性の関与に関して、ライソゾーム酵素活性低下と抗がん剤(塩酸ゲムシタビン、5-FU)による細胞増殖能抑制効果を評価し、中期的にはGBA酵素活性への依存度が高い膵癌を標的として研究を進めていく予定である。 最終的なin vivoでの検討として、shGBAを搭載したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を作成する。AAVによる膵癌細胞株への遺伝子導入効率を確認する。ベクターの安全性を確認したのちにヌードマウス皮下担癌モデルを作成し、皮下腫瘍にベクターを局注し、抗癌剤の抗腫瘍効果を確認する。抗腫瘍効果が増強することを確認ののち、癌細胞特異的に遺伝子導入可能なプロモーターを導入する。膵臓癌腹膜播種モデルに対し遺伝子導入し、予後改善効果を確認する。
|
Report
(2 results)
Research Products
(9 results)