Project/Area Number |
22K16546
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 55020:Digestive surgery-related
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
奥井 紀光 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60648864)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | クローディン / 膵癌 / 上皮間葉転換 / クローディン7 / 肝転移 / 上皮間葉系転換 / Claudin7 |
Outline of Research at the Start |
細胞間結合タンパクのクローディン(CLDN)が、転移の前段階である上皮間葉系転換(EMT)に関連する可能性は高い。先行研究では高悪性度の膵癌細胞株でCLDN7の高発現を確認しており、臨床上の膵癌急性増悪にCLDNが関わる可能性がある。本研究は、CLDN7がもつ膵癌転移、膵癌増悪シグナルに対するメカニズムを明らかにし、新たな治療標的分子の解明を行うことを目標とする。具体的には、膵癌の進展においてCLDN7の細胞悪性度に関わる分子生物学的役割を、EMT、細胞増殖シグナル、細胞周期の側面から明らかにする。また動物モデルを用いて、CLDNノックダウン膵癌細胞株の増殖抑制、化学療法抵抗性改善を検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は腹部臓器に発生する固形悪性腫瘍のうち最も悪性度の高い癌腫である。FOLFIRINOX療法や分子標的薬剤を始めとする新規化学療法レジメンにより生存期間の延長が得られているが、その治療効果はいまだ限定的であり、膵癌に対する新たな治療標的分子の特定は急務である。肝転移を含めた遠隔転移は膵癌の予後を規定する最大の因子である。化学療法施行中においても多臓器転移の出現や転移巣の急速増大などの急性増悪をしばしば経験する。血行性転移は原発巣における細胞相互の接着が解離→細胞外基質を分解する浸潤→血管内への接着・侵入→標的臓器への生着と増殖といった多段階のステップを経ると考えられており、中でも細胞間接着は転移機構の制御のキーとなる。 近年、細胞間結合タンパクの一種であるクローディン(Claudin: CLDN)が種々の癌の増殖シグナル、転移機構に関与する可能性が示されているが、膵癌における機能は未解明である。細胞接着因子であるCLDNが、転移の前段階である上皮間葉系転換(EMT)に関連している可能性は高いと考えられる。また先行研究では高悪性度の膵癌細胞株においてCLDN7の高発現を確認しており、臨床上の膵癌急性増悪にCLDNが関わっている可能性がある。さらにCLDN9は細胞間接着、タイトジャンクションに寄与する膜貫通たんぱくであり、子宮体癌において予後不良因子であることが報告されている。さらにCLDN9がTyk2/Stat3シグナルの活性化を介して、転移能に寄与するという報告もされているが、いまだ報告数がごく少量で詳細な解析が望まれる。本研究は、CLDN7/9がもつ膵癌転移、膵癌増悪シグナルに対するメカニズムを明らかにし、難治癌の代表格である膵癌に対して新たな治療標的分子の解明を行うことを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CLDN7は大腸癌、肺癌では低発現が悪性度に寄与するとされるが胃癌では逆の報告があり、癌腫により見解は一定しない。先行研究では、CLDN7は複数のヒト膵癌細胞株で高発現していた。特にCLDN7高発現クローン集団は高い細胞増殖能を示した。さらにCLDN7高発現細胞は動物実験モデルにおいて腫瘍の急速増大を認めた。一方で、siRNAによるCLDN7のノックダウンにより細胞増殖が有意に抑制され、CLDN7が細胞増殖を促進させる因子であることが明らかになった。膵癌細胞におけるCLDN7のEMT、細胞増殖シグナルに及ぼす影響を分子生物学的に解析し、CLDN7の膵癌の発育伸展・転移浸潤における作用と分子メカニズムを明らかにすることで革新的治療標的分子を確立することを目指す。CLDN7は小腸粘膜に広く高発現していることが知られ、生体でのCLDN7ノックダウンは小腸への重大なダメージが懸念される。しかしながら膵癌の治療戦略を検討するうえで抗癌剤耐性や転移浸潤能の亢進機序の解明とその制御は急務の課題であり、CLDN7の分子生物学的解明により得られる意義は極めて大きい。CLDN7の新規治療標的分子としての可能性を確立出来れば、その先に抗体治療への応用も期待される。CLDN7高発現細胞株のゲムシタビンへの強い薬剤耐性を確認した。 さらにCLDN9に関して検討を開始した。公開データベースでは、CLDN9は卵巣癌、子宮体癌で発現多く、種々の癌でCLDN9高発現は予後不良であった。肝細胞癌でも高発現で予後不良の傾向あるが、有意差は認めなかった。細胞間接着、タイトジャンクションに関与する膜貫通たんぱくであり、管腔構造を形成する腺癌でより重要である可能性が示唆された。今後は、臨床検体および膵癌細胞株を用いて、CLDN9の予後予測因子としての有用性と、その分子生物学的意義について解明する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト膵臓癌細胞株(Panc-1, MIA Paca-2)を用いて、CLDN7/9強発現細胞株とCLDN7/9ノックダウン細胞株に対してRNAシークエンスを施行して、細胞増殖シグナルやEMT関連タンパクの発現を網羅的に解析する。RNAシークエンスにおけるパスウェー解析で同定した細胞増殖シグナルに関して、ヒト膵癌細胞株を用いて、CLDN7/9ノックダウンによる影響を確認する。CLDN7/9ノックダウンによる細胞増殖に関与する転写因子NF-kB, STAT3, Erk 1/2, Aktの活性化阻害効果をELISA法で定量的に評価する。細胞増殖因子の評価は以下の解析法で行う。タンパク質:アポトーシス (Cleaved caspase-3, -8, -9, Bcl-2, Cytosolic cytochrome c)、細胞周期 (p53, p21, cyclin D1, C-myc)、血管新生 (VEGF)、浸潤・遊走 (MMP-9, ICAM-1, VCAM-1)。アポトーシスはFACS(Annexin V/FITC assay)、細胞周期停止効果(Cell cycle analysis)、細胞増殖抑制効果(MTT assay)でそれぞれ行う。 CLDN7/9ノックダウンによるEMTの抑制効果を検討する。EMTはMigration assay、Scratch assayに加え、EMTマーカー(Vimentin, a-SMA, E-cadherin)の 蛋白定量および遺伝子発現を測定する。マウス膵癌細胞株を免疫正常マウスの脾臓に局所注射することで、肝転移モデルを作成し、CLDN7/9ノックアウトもしくは過剰発現を行い、小動物専用MRIで転移能について評価する。最終的に、膵切除検体において、CLDN7/9の免疫染色を行い、予後予測因子として有用か評価する。
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