Project/Area Number |
22K16595
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 55050:Anesthesiology-related
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
黒田 唯 順天堂大学, 医学部, 助教 (70916387)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
|
Keywords | エンドセリンA受容体拮抗薬 / オピオイド受容体 / Gタンパク質共役受容体 / 新規鎮痛補助薬 / オピオイドクライシス / Compound-E / オピオイド / 二量体 / G蛋白共役型受容体 |
Outline of Research at the Start |
エンドセリン(ET)は、血管内皮由来の血管収縮作用を有する生体内物質として知られており、近年ではETは特異的受容体であるエンドセリン A受容体(ETAR)を介して痛みを惹起することが報告されている。さらにETAR拮抗薬は、オピオイド製剤の鎮痛作用の増強ならびにオピオイド製剤の耐性解除に関与することが報告されている。本研究では既存のETAR拮抗薬に比較してETARへの選択性の高い新規ETAR拮抗薬を用いて、in vitroおよびin vivo系におけるオピオイド製剤と新規ETAR拮抗薬の併用による鎮痛作用の評価ならびにそのメカニズムの解明を行い、同化合物の新規鎮痛補助薬としての開発を目標とする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
オピオイド製剤の使用により、痛みを取り除く治療が行われている。しかし、進行がん患者の約80%が中等度から重度の疼痛を生じており、さらにはオピオイド耐性の疼痛も存在しているが、それらの問題を解決するような鎮痛治療薬は未だ上市されていない。また近年米国およびカナダでは、痛みの緩和を優先したオピオイドの処方が蔓延し、オピオイド中毒や乱用、過剰投与により命を落としている患者も多い。オピオイドの不適切な使用はオピオイドクライシスと呼ばれ大きな社会問題となっている。こうした状況の打開には、オピオイドの減量や、副作用の少ない新しい治療法の開発が喫緊の課題となっている。 本研究では、新規ETAR拮抗薬のオピオイドによる鎮痛作用の増強効果、ならびにそのメカニズムについて詳細な評価を行い、新規ETAR拮抗薬をオピオイドの耐性や副作用軽減を示す新規鎮痛補助薬として確立するための基礎的検討を行うものである。 令和4年度は急性痛である炎症性疼痛モデルをマウスで作製し、新規ETAR拮抗薬の効果を評価した。炎症性疼痛モデルでは、新規ETAR拮抗薬単剤では鎮痛効果は示さなかったが、新規ETAR拮抗薬とモルヒネの併用によりモルヒネの鎮痛作用が増強した。現在、神経障害性疼痛モデルおよびがん性疼痛モデルの確立を進めており、令和5年度はこれらのモデルにおいても新規ETAR拮抗薬の薬効について検討を進めていく予定である。加えて、既存のETAR拮抗薬と新規ETAR拮抗薬の鎮痛効果の比較を行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎症性疼痛モデルの実験では8-9週齢の雄性C57BL/6Jマウスに、溶媒投与(0.5 %メチルセルロース)、新規ETAR拮抗薬単剤、モルヒネ単剤、新規ETAR拮抗薬+モルヒネをそれぞれ投与した。マウス左後肢足底部にホルマリンを皮下投与し、投与後のマウスの足を振り回す(flinching)行動および注射部位を舐める(licking)行動の継続時間を計測した。ホルマリン投与により、二相性の疼痛様行動が見られた。新規ETAR拮抗薬単剤では鎮痛効果は示さなかったが、新規ETAR拮抗薬とモルヒネの併用によりモルヒネの鎮痛作用が増強し、二相目の疼痛様行動が減少した。 神経障害性疼痛モデルの実験では、6週齢の雄性C57BL/6Jマウスの右側の坐骨神経を8-0絹糸で結紮して、神経を損傷するSeltzer モデルを作製し、2週間後の8週齢で疼痛評価を行った。Seltzerモデルが正しく作製できているかを評価するために、実験動物を保持し、その術側の後肢に加圧式鎮痛効果測定装置を用いて一定のスピードで圧力を加え、逃避反応を起こす圧力の閾値を測定するRandall-Sellitto法を用いて評価を行った。Sham群と比較しSeltzerモデルでは痛みの閾値が低下していることが明らかとなった。現在、同モデルの確立を行っており、モルヒネの鎮痛効果についての予備検討を行っている。Seltzerモデルは坐骨神経の結紮が強すぎると下肢に麻痺が生じるため、作製時の手技を確立しているところである。来年度からRandall-Sellitto法を用い、ETAR拮抗薬投与後の経時的なモルヒネによる鎮痛作用について評価を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した検討において、炎症性疼痛モデルでは、新規ETAR拮抗薬とモルヒネの併用によるモルヒネの鎮痛作用の増強を確認できた。さらに神経障害性疼痛モデルおよびがん性疼痛モデルを作製し新規ETAR拮抗薬の薬効の評価を行う。また、既存のETAR拮抗薬と新規ETAR拮抗薬を比較検討することにより、ETARへの選択性の違いによる治療効果の差異について検討を行う。さらに今後、炎症性疼痛モデル、神経障害性疼痛、がん性疼痛モデルを用いたモルヒネの鎮痛耐性について、新規ETAR拮抗薬が奏功するかについても動物実験を行い、検討を進めていく。本研究課題により、新規ETAR拮抗薬の臨床応用につながる基礎データの構築を進める。
|