転写因子TFAP2Eによる口腔がん細胞の細胞周期制御機構の解明
Project/Area Number |
22K17028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 57020:Oral pathobiological science-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
稲垣 喜則 日本大学, 医学部, 研究医員 (30836325)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 口腔がん / TFAP2E / 細胞周期 / 転写因子 |
Outline of Research at the Start |
転写因子TFAP2Eは多くの悪性腫瘍においてがん抑制遺伝子として機能していることが知られているが、その作用機序については不明な点が多い。最近私は、口腔がん細胞におけるTFAP2Eの発現を抑制すると、G2/M期の進行が早まることを見出した。また、TFAP2EがTP53の関与する経路に作用して細胞周期を制御している可能性を示唆するデータを得た。本研究ではTFAP2Eによる細胞周期制御の詳細な分子機序を解明することを目的とする。これにより、TFAP2Eの機能はもとより、TP53の機能についても新たな知見を得ることが期待でき、口腔がんの新たな治療標的の発見につながると考えている。
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Outline of Annual Research Achievements |
転写因子TFAP2Eは多くの悪性腫瘍においてがん抑制遺伝子として機能していることが知られているが、その作用機序については不明な点が多い。これまでに、口腔がん細胞でTFAP2Eの発現を抑制すると、増殖速度が進行すること、さらにその原因がG2/M遷移の速度の上昇である可能性が高いことを見出していた。そこで、TFAP2Eによる細胞周期制御の詳細な分子機序を解明することを目的として本研究を進めてきた。令和5年度までに、TFAP2E shRNAを安定的に導入した細胞株を樹立して解析を行ったが、細胞株によっては二重チミジン法で細胞周期が同期しないものがあった。一方、siRNAを用いた実験では、二重チミジン処理によりTFAP2E siRNAの効果が消失する現象が観察された。そこで令和6年度は、siRNAを導入した細胞を二重チミジン法で同期させず、ノコダゾールを入れた培地で培養し、継時的に細胞を回収することで、M期進行までの細胞周期の進行速度を調べる方法で解析を行った。Propidium iodide で細胞内DNAを染色しFACSにより定量的に解析した場合は、TFAP2E抑制細胞とコントロール細胞の間で細胞周期の進行速度に差は見られなかった。なお、G2期とM期はDNA量が同じであり、この解析では見分けられないことから、M期初期のマーカーであるリン酸化ヒストンH3 セリン28(P-H3Ser28)が陽性である細胞の割合をFACSで解析した結果、どちらの細胞でも、細胞周期の進行にともないP-H3Ser28陽性細胞の割合が増えたが、TFAP2E抑制細胞でその増加速度が明らかに早いことが確認できた。さらに、TFAP2Eがどのような経路で細胞周期を行っているのかを調べるために、網羅的発現解析を行い、候補経路の絞り込みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、TFAP2Eの発現抑制により口腔がん細胞でG2/M遷移の進行が速まることを示唆するデータを得ていたが、令和5年度に行った実験から、TFAP2E抑制細胞では細胞周期の進行に伴うP-H3-Ser28陽性細胞の増加速度がコントロールよりも早いことがわかり、G2/M遷移が速まっていることが証明できた。また、研究を始めた当初はTFAP2Eによる細胞周期の制御にはTP53が関与しているとの仮説に基づいて解析を進めていたが、途中の過程でその可能性が低いことを示唆するデータを得た。そのため、TFAP2Eの絞り込みが難航した場合に備えて計画していた通り、網羅的発現解析を行う手法に切り替え、解析を進めた。この解析ではsiRNA を用いてTFAP2E抑制細胞した細胞とコントロールsiRNAを導入した細胞からRNAを抽出し、RNA-seqを行った。これまでの時点で、二つのグループ間で有意に発現レベルの異なる遺伝子群のスクリーニングが終了したところである。以上のことから、おおむね順調に進展していると判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
TFAP2Eが細胞のG2/M遷移の進行を制御する分子メカニズムを知るために、RNA-Sequence(RNA-seq)を行い、TFAP2E siRNAを導入したHSC4細胞とコントロールsiRNAを導入した細胞の間で発現量に差のある遺伝子を網羅的にスクリーニングした。それらのうち、細胞周期の進行に関連があることが報告されているものをピックアップし、さらに、転写開始点上流2kbp以内にTFAP2Eの結合部位がある遺伝子をデータベース解析により絞り込んだ。令和6年度は、TFAP2Eがこれらの遺伝子の発現を制御することで、G2/M遷移を制御しているのか否かについて検討するために、各候補遺伝子の発現をsiRNAで抑制し、これによりG2/M遷移の速度が変化するか検討を行う。さらに、クロマチン免疫沈降試験を行い、TFAP2Eがこれらの候補遺伝子の上流に結合しているか否かについて調べる。以上の解析に加えて、上述のRNA-seq解析でTFAP2Eの発現を抑制した細胞とコントロール細胞の間で発現に差のあった遺伝子群について、エンリッチメント解析を行い、特徴的なGene ontology やPathway に属する遺伝子が含まれているか検討を行う。この解析により、TFAP2Eが関与する経路について絞り込みを行い、前半の候補遺伝子の解析結果と総合的に照らし合わせて、TFAP2Eの役割の解明を目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Knockdown of TFAP2E results in rapid G2/M transition in oral squamous cell carcinoma cells.2024
Author(s)
Sakai R, Fujiwara K, Nagasaki-Maeoka E, Inagaki Y, Yamaoka B, Muto-Fujita E, Kamidaki Y, Koshinaga T, Uehara S, Takayama T, Sato S.
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Journal Title
Oncology Letters
Volume: 27
Issue: 3
Pages: 128-128
DOI
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Peer Reviewed / Open Access