心理社会的ストレスを起因とした疼痛制御機構の変調解析
Project/Area Number |
22K17170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 57060:Surgical dentistry-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
川崎 詩織 日本大学, 歯学部, 専修研究員 (30876397)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 慢性疼痛 / ストレス / 心理社会的因子 / 疼痛制御 / 中脳水道周囲灰白質 / 心理的ストレス / 疼痛 / 下行疼痛抑制経路 / 心身症 |
Outline of Research at the Start |
慢性疼痛患者では疼痛予期や情動入力を受ける内側前頭前野の活動に変調が生じていることが知られている。さらに内側前頭前野は疼痛下行抑制経路の要衝である中脳水道周囲灰白質腹外側部に密に投射する。しかし内側前頭前野が疼痛下行抑制経路に与える変調の存在については不明な点が多い。本研究では、光遺伝学的手法を用いて内側前頭前野から中脳水道周囲灰白質腹外側部ニューロンへ投射する軸索終末を特異的に刺激し、内側前頭前野の入力が中脳水道周囲灰白質腹外側部からの出力に影響を及ぼすメカニズムを検証する。本研究は心理社会的要因が疼痛制御に及ぼす変調メカニズムを解明することになり、慢性疼痛の新規治療法の開発につながる。
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Outline of Annual Research Achievements |
心理社会的ストレスが疼痛制御機構に及ぼす影響を解明し、治療抵抗性慢性疼痛に対する新規治療法の開発を目的として本研究を開始した。本年度遂行した研究内容は、以下の2つである。 一つ目は、社会的敗北ストレスモデルの確立である。動物には、攻撃性および週齢の異なる、Long Evansラット、Wistarラットのペアを用いた。同ラットのペアを一日一回、10分間対峙させた。14日後にストレス曝露群ラットに出現する、うつ症状および、口腔顔面領域疼痛逃避閾値の変化を、強制水泳試験と口ひげ部へのVon Freyテストで評価したところ、ストレス曝露後の、うつ症状は雌雄ともに出現したものの、口腔顔面領域における疼痛閾値の低下は、雌性ラットにより顕著であることが認められた。このことから、心理社会的ストレスが疼痛制御機構に及ぼす変化には、性差が存在すると推測された。社会的敗北ストレスモデル作製について、安定してうつ症状と疼痛閾値の変化を認める個体を作製する条件設定に苦慮したが、試行を繰り返すごとに、精度を増した社会的敗北ストレスモデルの作製条件が確立できた。 二つ目は、作製した社会的敗北ストレスラットの下行疼痛抑制経路における神経活動に変化が生じているか、免疫組織学的解析方法と電気生理学的解析方法を用いて評価を行った。健常群と比較した際に、ストレス曝露群の中脳水道周囲灰白質では、アストロサイトやミクログリアといったグリア細胞および神経細胞の活性化状態に変化が生じていた。更にストレス曝露群のラットから、中脳水道周囲灰白質を含む急性脳スライス標本を作製しホールセル・パッチ記録を行った。興奮性入力を評価するためにminiature EPSC:mEPSCを記録しており変化の傾向を掴みつつある。今後は、抑制性入力の評価のために、miniature IPSC:mIPSCの記録を行い解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画における実施スケジュールでの達成目標は、(1)中脳水道周囲灰白質内における局所神経回路におけるシナプス伝達特性と薬物反応性の検索と(2)内側前頭前野からの投射神経のオプトジェネティクス法を用いた選択的活性化による中脳水道周囲灰白質の神経応答解析であった。(1)に関しては令和3年度から行った先行実験と令和4年度の前半で中脳水道周囲灰白質腹外側部に存在するコリン作動性神経細胞がムスカリン受容体を介した自己興奮制御機構を有していることを、論文発表した。しかし、(2)に関しては、社会性敗北ストレスモデルの確立が最優先事項と考えられたため、令和5年度に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に社会的敗北ストレスモデルの確立と、中脳水道周囲灰白質における神経活動の変化についての検索を、ある程度進めることが出来た。そこで令和5年度からは、実際に社会性敗北ストレスモデルの内側前頭前野にチャネルロドプシン2(ChR2)を発現させ、中脳水道周囲灰白質におけるシナプス伝達特性に、内側前頭前野からの入力がどのように関与しているのかについて、研究を引き続き行っていく予定である。また、最終的には中脳水道周囲灰白質からの出力神経の活動の変化についても検索していく方針である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)