Project/Area Number |
22K17332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 58010:Medical management and medical sociology-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
北尾 良太 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 客員研究員 (30505095)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | ケア倫理 / 看護倫理 / 研究倫理 / 臨床倫理 / 現象学 / 臨床研究 / 看護研究 / 倫理審査 / 現象学的アプローチ / インタビュー / フィールドワーク / 研究対象者ケア / 倫理的配慮 / 当事者視点 |
Outline of Research at the Start |
人を対象とする研究の倫理的配慮に関する指針については、これまで研究者側の視点から、特に生命科学・医学系研究の倫理指針に則って対応が進められてきており、研究対象者の側からみた倫理的配慮に関してはあまり論じられていない。そこで本研究は、人を対象とする学問領域の研究全般において、被験者(研究対象者)となった経験のある人を募り、研究対象者の側からみた研究活動の経験の構造を、現象学的アプローチによるインタビューやその分析過程において明らかにし、研究者および研究対象者が相互に安心・安全に研究課題の解明に取り組むことのできる倫理的配慮をガイドライン化する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究参加者が臨床研究において経験することは、計画的なプログラムに従って進めているにもかかわらず、参加者一人ひとりが別様の意味をもっていた。例えば、糖尿病の新薬治験に参加するある一般の人は、はっきりと「治療できてお金がもらえるから」といい、意識消失発作に見舞われるといった事態を経験しつつも、「担当医が<想定範囲内の有害事象だから大丈夫>といわれたから」といい、「安心して」治験参加を継続している、と語る。 また、(教育心理学専門の研究者である)本研究の参加者は、自身の研究を進めるにあたり、調査先の現場内の「政治的なしがらみ」に翻弄されつつも、柔軟に軌道修正を試みていた。そして規模が拡大し現場からも自身の研究の意義が認められてきた時、逆にさまざまな「(自身の研究を利用しようとする)思惑」の介入を感じて「自身の研究を他者に手放す」行動をとったと語った。 さらに、一般的に「治療を要する」人が治験や臨床研究に参加すると考えられていたが、本研究では、「病院へ行くほどでもないが、症状が気になるから治験に参加する」人も現れている。このまま通常治療を受けずに、治験による未確定な治療を継続していたり、医療へのアクセスが困難な人の救いの手段としての治験が国内でも存在している。 以上の分析から、研究倫理や生命倫理に関する規制の枠組みを超えた、潜在的・顕在的に様々な倫理的ジレンマを、研究者・研究対象者双方が経験している。この結果は、普遍的な倫理の原理原則にもとづく規制の一方で、時代の要請に都度応じた、学問分野にとらわれない共通の、倫理的行動指針ガイドの存在が必要になっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023.10.18_東京都立大学荒川キャンパス倫理委員会にて承認(承認番号23043)。現在、研究者2名、被験者経験者3名にインタビュー調査を終了。治験実施施設へのフィールドワーク調査依頼を検討・交渉中。インタビューデータを現象学的アプローチにて分析中。2024(令和6)年度には分析データをもとにした学会発表、論文投稿を予定。当事者らからは、倫理的な配慮が通用できたと実感できた経験や、逆にジレンマを感じた経験など多彩な語りがきかれている。これまであまり実施されてこなかった、現象学的アプローチによって、「研究被験者や研究実践者当事者らの経験目線からみた臨床研究を実施したり協力することの意味」が明らかになりつつある。この視点から、「彼らにとって研究実施や研究参加を通じて本当に大事にしていること」に基づいた、一人ひとりの倫理的行動が導き出されるのではないかと期待しつつ分析を進めている。 また、過去の経験のナラティブと合わせて、現在の実践場面の参与観察(フィールドワーク)によるデータも蓄積し、思考と行動両側面から、倫理的配慮の実態とその経験構造を導き出していくために、いわゆる「治験病院」とよばれる、治験の第1相試験等を実施している医療機関や、モニター調査と称して企業からの新製品試験を受託し運営している現場に、フィールド調査交渉することを検討中。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での調査結果から、人を対象とする研究の関係者全般に通用する倫理的配慮ガイドライン構築には、「研究参加者一人ひとり特有な病気療養生活に関連する実状を尊重する姿勢をもって研究者が関わる」ということが理念的な土台になるのではないか、という見通し(仮説)を立てている。ただ、この「実状を尊重する」という理念が、具体的にどういった行動をすることになるのか、研究を行なっている現場のフィールドワークも取り入れながら、検証調査も必要。現在のデータの分析強化と、さらなるデータの蓄積を今後も継続することで、社会情勢等の変化による人々の価値観の変化もつかめる可能性がある。そうなると、半永久的に固定化されるような倫理的行動ガイドラインではなく、むしろ時代要請に応じた、解釈変更が可能で動的なガイドラインの構築が重要になってくると考えられる。ミクスドメソッド(質的/量的アプローチもしくは現象学とは別の質的なアプローチ)の組み入れも視野に入れて、動的なガイドラインの構築のための研究方法論も打ち立てつつ、多角的・重層的に研究を継続する必要がある。
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