Project/Area Number |
22K17670
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 59020:Sports sciences-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鷲谷 洋輔 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60786276)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 質的研究 / アート / アウトドア / エスノグラフィー / 自然 / プロセス社会学 / 移民 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、カナダにおける移民が展開するアウトドア実践のエスノグラフィーを通じ、自然に関する「全体的な知」が涵養されるプロセスをとらえることを目指すものです。特に、<都市/スポーツ>という構図から<非都市/身体実践>という新たな構図へ移行することで、身体と自然とが交錯するアウトドア実践、越境者としての移民という二つのコンテクストならではのスキルと知が育まれるプロセスを、T.Ingoldの”enskilment”概念を援用しながら社会学的に検証します。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に調査依頼をしていた対象グループのリーダーが都合により研究に参加できなくなったことから、現地調査の途中で依頼対象者を改めて検討する必要が出るに至った。このことから、再度研究対象者の選定をオンラインで続け、おおよそ10名の対象者に参加許諾を得ている。現地調査は改めて2024年に行うこととなった。 また、現地調査に並行して、質的調査法の検討を続けている。UBCのフォード助教とアートを用いたエスノグラフィーに関する共同プロジェクトを立ち上げ、オンラインでの会議、先行研究の検討を継続的に行った。これについては、国内のプレ調査を行い、今後の調査研究実施の承諾を得るに至っている。さらに、生物学の研究者や学部学生と「手しごとの博物学」と題した新たなプロジェクトを立ち上げており、学内の助成(SOKAP-Seeds)を得ている。さらに、2024年2月にUBCにおけるセミナーで「In Between the Academic and Artistic – Opportunities from fieldwork」と題して発表を行った。2024年7月には国際学会( International Society of Qualitative Research in Sport and Exercise)でのセッションを共同担当し、発表する予定となっている。 それらの成果を元にしながら、質的調査法に関する方法論についての論考を執筆した。この論考はエスノグラフィーにおけるオーディオビジュアルメソッドの方法論的な可能性を取り上げたもので、SAGE Handbook of Qualitative Research in Sport & Physical Activityの章として加わることになっている。既にドラフトは提出済みで、2025年度中に発行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型ウィルスによる現地調査の制限はほぼ解消された一方で、予期できなかった事柄に大きな影響を受けている。調査対象グループのリーダーの家庭の事情(家族の健康問題)など、研究を進めるうえでは十分に見通すことができなかった。また、調査対象候補を複数設定できなかったことも、現状の遠因となっている。ただし、国外に研究対象を設定した以上、日常的なやり取りには限界もあり、予期せぬ事態による調査の変容はやむを得ない部分もあると考える。 一方で、カナダの移民に特化した問題設定をしていたことが研究の限定性につながっている点は見直さなければならない。具体的な研究対象が決まってから検証のポイントや考察すべき論点などを帰納的に拾い上げていくアプローチをとっているが、具体事例を用意できないことで先行研究の検討に進めぬまま足踏みをしている状態となっている。調査法などに関する検討や、特に海外の研究者とのディスカッションの場はできる限り設けているが、どうしても総論的になってしまっており、当該の研究を具体的なフィールドで行う直接的な助けには結びついていない。 幅広い移民研究を行うのは難しい一方で、特定の移民集団に特化した研究を行う可能性が開けている点は評価したい。特に旧ユーゴスラビア出身の移民に関するデータが得られているが、「移民のアウトドア」のみならず、広く「旧ユーゴスラビア」における身体活動を研究対象として取り扱う可能性は小さくないと考えられる。というのも、旧ユーゴの研究は世界的にも蓄積が少なく、独特の地理歴史的背景や文化的土壌と、それに根差した(アウトドア)スポーツ実践には、注目すべき点が多々期待できるからである。 調査法や方法論に関する検証は併行して続けており、それらは今後の研究に最終的に還元できるものであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年8月に現地調査を行う予定となっているが、それに先立って調査対象者へのプレ調査を進め、一定の調査対象者を確保するところから始めていく。前述の通り、約10名の調査協力を得ているほか、継続して対象者を募る予定である。 また、現地での参与観察に関わる時間が限定的になることから、時間の限定性に縛られないデータ収集の方法を検討している。例えば、モノに関するストーリーを聞き取るというアプローチを採用することにより、通常の聞き取りとは異なる視点や参与観察の方法から検証、考察の深化を目指したい。 これらに加え、アートを用いた方法論の展開を模索したい。これまでの成果については、章の執筆者として参加している共著にて発信することになる。さらに、7月に予定している国際共同発表を足掛かりにしながら、本学にて12月に開催予定の学術会議(日本学国際共同大学院)につなげたい。領域横断的なネットワークの形成や、新しいプロジェクトの創出へとステップを踏むことが今年度の課題となる。 また、領域横断的でかつ社会実装につながるような実践として、前述の「手しごと」研究のプロジェクトをスタートをさせることになる。これは学術研究と社会実践とを橋渡すような研究活動を模索する一つの試みとして位置付けられる。本年5月に参加する日本学術振興会主催の国際会議(先端科学FoSシンポジウム)での発表機会などを有機的に結びつけながら、「新しい博物学」のようなフィールドワーク主体の研究エリアを開拓していきたいと考えている。先行研究の検討や現場での参与観察の実施も勿論だが、国際会議や領域横断的なイベントへの参加を通じて築かれているネットワークを用い、グローバルで領域横断的な研究をローカルな立ち位置から展開したい。
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