SSCを用いた運動制御について:前腕屈筋における腱動態特性の解明
Project/Area Number |
22K17683
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 59020:Sports sciences-related
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小澤 悠 東海大学, スポーツ医科学研究所, 研究員 (10881344)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 腱動態 / 上腕三頭筋 / slack length / toe region / linear region / transition point / 超音波Bモード法 / 伸張短縮サイクル / スポーツバイオメカニクス / バレーボール / オーバーハンドパス / 超音波画像診断 / 運動制御 |
Outline of Research at the Start |
本研究においては、これまで着目されてこなかった前腕部の伸張短縮サイクル(SSC)に着目する。これまで腱の弾性については、アキレス腱や大腿直筋の腱など、太く大きい腱において多く研究されてきた。前腕筋群の付着腱は下肢の腱などに比べると細く、その弾性によって蓄えられる力も小さくなることが考えられる。さまざまな動作中における前腕筋群の腱動態を測定し、比較、検討することで、前腕筋群における腱の動態特性を明らかにする。特に、実際のスポーツ動作における腱動態の測定は下肢筋などの部位においてもあまり見られず、細かい力の調整が求められる動作における腱動態の解析は運動制御の面からも有益なデータとなる。
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Outline of Annual Research Achievements |
「本研究の目的」本研究においては、これまで着目されてこなかった前腕部や上腕部の伸張短縮サイクル(SSC)に着目する。これまで腱の弾性については、アキレス腱や大腿直筋の腱など、太く大きい腱において多く研究されてきた。上肢筋群の付着腱は下肢の腱などに比べると細く短いため、その弾性によって蓄えられる力も小さくなることが考えられる。さまざまな動作中における上肢筋群の腱動態を測定し、比較、検討することで、上肢筋群における腱の動態特性を明らかにする。特に、実際のスポーツ動作における腱動態の測定は下肢筋などの部位においてもあまり見られず、細かい力の調整が求められる動作における腱動態の解析は運動制御の面からも有益なデータとなる。 「研究実績」 令和4年度において前腕筋の腱動態を超音波画像診断法により分析することが困難であることが明らかになった。そこで上腕三頭筋における腱動態を調査したところ、その伸張特性を捉えられることが明らかになった。そこで令和5年度においては上腕三頭筋の腱動態を調査した。これまで屍体を対象に上腕三頭筋の腱長を調査した研究においては、上腕三頭筋の遠位腱は10mm程度であることが明らかになっており、本研究においても同様な結果を得られた。このことから、上腕三頭筋の遠位腱を正確に超音波画像によって捉えられていることが確認された。 さらに、下肢の腱において、腱に筋の張力がかかっていない場合は腱組織が緩んだ状態であり、その緩み(slack length)がなくなることで筋の張力が骨などへと伝わることが明らかになっている。上腕三頭筋の遠位腱においても同様の現象が確認されたため、まずは上腕三頭筋をさまざまな強度で収縮させた際の腱のslack lengthの変化動態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下腿の腱を対象に行った腱のslack length中の動態を調査した研究においては、筋収縮が最大努力(MVC)に対して、60%MVCまでの強度においては、腱の変長が曲線的であり、60%MVCを超えると腱にかかる負荷と腱の変長が直線的に変化することが明らかになっている。腱長変化が曲線的から直線的に変化するポイントをtransition point と呼ぶ。そこで本研究においては、MVCに対して、30%、60%、90%で肘関節を進展させた際の上腕三頭筋遠位端に付着する腱の動態を調査した。その結果、筋弛緩時と比較して筋収縮時の腱長は30% MVC時は102.5 ± 1.7 %、60% MVC時は106.3 ± 1.5 %、90% MVCは107.5 ±1.9 %であり、30%と60%、30%と90%試技において、腱長変化に統計学的に有意な差が見られた。この結果から、下腿の腱と同様に上肢の腱においてもtransition pointがあることが推察される。一方で、神経支配比(Motor Neuron: MN)が極めて高い下腿の腱とその15分の1程度の神経支配比である上腕三頭筋の腱で同様なslack lengthの変長が観察されたことから、上肢においても腱の弾性特性を加味した筋の出力の調整が必要であり、筋への収縮命令は腱の緩みを考慮した強度での命令がなされていることが示唆された。 これらの研究成果はさまざまな学会や研究会での発表をしており、これらの学会では分析方法の改善やさらなる実験の必要性などの助言を受け、新たな実験を計画している。また、すでに明らかになった研究成果については論文投稿準備をしている。 上記の通り、本研究の進捗は概ね計画通りである。しかし、令和5年度に購入予定であった小型の筋電図センサは、研究室にて新たに購入したもので代替することができたため購入しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、上腕三頭筋の遠位腱において下肢腱と同様な腱長変化が見られることが明らかになった。しかし、腱にかかる負荷を細かく変化させたわけではないため、腱にかかる負荷に対して腱長が曲線的な変化から直線的な変化へと切り替わるtransition pointの同定までには至っていない。そのため、これまで30、60、90%MVCにおける腱長を分析してきたが、より細かく努力度を変化させた際の腱長変化を分析する必要がある。そこで令和6年度にはまず10から90%MVCまで10%毎に筋収縮レベルを変化させたときの腱長を分析する。これにより、上肢筋における腱のslack lengthのtransition pointを明らかにすることができる。 さらに、腱長変化は筋の収縮レベルだけではなく、筋が弛緩している状態でも筋が伸びた状態(肘関節においては肘を屈曲させた状態)と筋が縮んだ状態における腱長は変化する。そこで、令和5年度にこの研究のために購入した関節角度測定装置を用いて研究を行う。また、腱長については収縮速度にも影響される可能性も考えられる。そこで、筋の収縮レベル、実験肢位、収縮速度をそれぞれ変化させた際の腱動態変化を明らかにする。 これらの実験結果をEuropean College of Sports Sciencesやバイオメカニズム学術講演会、日本体育学会などで発表する予定である。また、令和5年度に行った研究結果を体力医学会誌に投稿する予定であり、令和6年度は実験だけでなく、研究成果のアウトプットを積極的に行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)