Project/Area Number |
22K18021
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 63010:Environmental dynamic analysis-related
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
Wong KuoHong 金沢大学, 物質化学系, 助教 (80907238)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
|
Keywords | 環境汚染 / 水生生態系 / 大槌湾 / 有明海 / 能登半島地震 / 植物プランクトン / 銅 / バイオマーカー / チオール類 / 北太平洋 / シングルセルICPMS / 有機配位子 |
Outline of Research at the Start |
最先端技術であるSC-ICP-MSを用いて細胞内銅含有量の測定法を検討する。培養中の植物プランクトン細胞内の銅と様々なチオール類の含有量の経時変化を観察することで、それらのチオール類が銅の環境毒性に対するバイオマーカーとしての有用性を評価する。最後に、これまでに銅の環境毒性を従来法であるCLE-AdCSV法で評価した大槌湾、東シナ海と北太平洋亜寒帯における銅の毒性をチオールバイオマーカーで再評価する。CLE-AdCSV法により得られた結果と比較検討し、バイオマーカー法の有効性と効率を検証する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
環境汚染が生態系に与えるストレスの評価方法には未だに課題が多い。水中の汚染物質の濃度を定量することにより、特定の物質が水生生態系に与える影響を評価することは可能であるが、複数の汚染物質がもたらす影響を評価することは困難である。本研究では、水生生態系の基盤となる植物プランクトンがストレスの応答として生産するチオール類をバイオマーカーに利用する新規評価法を開発している。本法によれば、ストレス因子の種類や濃度に関わらず、水生生態系の正確な評価が可能である。 チオール類は、植物プランクトンの細胞内において有害金属を錯体化し、その毒性を抑制する機能を持つ。特に、チオール類の一種であるグルタチオン(GSH)は、銅などのストレス因子にさらされた植物プランクトンの一種であるシアノバクテリア(Synechococcus sp.)によって多量に生産されることを培養実験で明らかにした。 今年度、岩手県の大槌湾および有明海のフィールド観測において、バイオマーカーを適用した。また、金沢大学臨海実験施設では、能登半島地震が沿岸域生態系に与える影響を調査した。人間活動が少ない大槌湾においてはバイオマーカーが検出されなかったが、漁業や養殖業が盛んな有明海の一部において高濃度のチオール類バイオマーカーが検出された。また、海底すべりが発生した珠洲沖においてもストレスバイオマーカーが大量に検出された。 バイオマーカーの実用化に向け、マレーシアとの国際共同研究を実施し、自然保護区にあるマングローブ域において水試料を採取し、チオール類バイオマーカーを用いてストレス評価を行った。人間活動がほとんどない水域においてはストレス反応が検出されず、水中の植物プランクトン組成は環境ストレスに対して弱いラン藻類が優勢となっていた。バイオマーカーの評価から、調査水域は汚染されておらず、自然状態で保たれていることが示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度には、海洋植物プランクトン(Synechococcus sp.)を自然条件および銅添加条件下において単一株無菌培養を行い、銅の毒性に対する応答として特定のチオール類の生産を確認できた。 また、岩手県の大槌湾、有明海、能登半島沿岸域、北太平洋のフィールド調査において、バイオマーカーの適用に成功した。その中で、北太平洋の調査は国際GEOTRACESプロジェクトの一環で行われた。北太平洋の外洋域ではバイオマーカーによって水生生態系に与えるストレスを正確に評価できた。それらの研究成果は現在、国際論文誌に投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、チオール類バイオマーカーの信頼性を向上させるために、光合成色素とアミノ酸の2種類のバイオマーカーを開発し、チオール類を加えて3種類のバイオマーカーを併用する。また、バイオマーカーの実用化と社会実装を推進する。 近年、気候変動に伴う海洋酸性化、貧酸素化といった一連の水圏環境問題が水生生態系に与えるストレスが懸念されている。本研究で開発しているバイオマーカーは、こうした問題に対応するために社会的なニーズが高い技術であると予想される。特に、栄養塩が豊富で経済的に価値の高い水産業や漁業を支える沿岸域に適用可能な、効果的かつ効率的な水生生態系評価技術が求めらている。 本研究では、国内外での共同研究を通じて、沿岸域を中心に様々な水圏環境中における3種のバイオマーカー性能を評価する。
|