Project/Area Number |
22K18099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 80020:Tourism studies-related
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
梶谷 彩子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 基幹研究院研究員 (90867441)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | フランス / ガストロノミー / 地方主義 / ツーリズム / 19世紀 / 20世紀 / 美食 / 文化史 / 近代フランス / ガイドブック / 観光資源 / パリ郊外 / ヴィシー / 温泉 / 食文化 / 近代 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、地域の食文化をめぐる旅の形態「フード・ツーリズム」のルーツを探ることを目的としている。食を観光資源にしている国々の中でも、フランスは長らく「美食の国」として人気を集めている。それはフランスが自国の食文化を自ら様々な方法で文化的特徴としてPRした成果であると言えるが、この傾向は、フランスの長い食文化史の中でも20世紀に入ってから本格化した新しい動きであった。 本研究では20世紀フランスを中心に、いかにして「観光資源としての地方の食」が確立し、人々が郷土料理や名物を求めて旅をするようになったのかの分析を通して、名実ともにフランスを「美食の国」へと押し上げた要因を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度はガストロノミーの言説が「地方の食」へと目を向ける契機となった「地方主義」の検証を行なった。 フランスにおける地方主義は19世紀後半、「ル・プレー学派」と呼ばれる社会学者たちの一連の調査により、社会生活における地域や職場などの社会活動を共にする集団の重要性が説かれたことに始まる。第一次大戦後には、当時の商務大臣クレマンテル(1864-1936)がフランス経済立て直しのために地域再編を行ない、地方の経済的格差問題への対応を試みた。農村の振興や地域開発に着目して経済的地方主義を唱えたのは「フランス地方主義連盟」で、地方への関心維持を理想とする地方主義の広報を目的とした活動を展開した。地方ごとに存在する特色ある文化や産業を守り、振興しようとする活動も見られるようになり、ここで見直された地域の特徴の中にはのちに観光資源として広く全国へ伝わるものもあった。 食の分野においては18世紀からすでに地方の味に対する言説が確認できるが、19世紀初頭からは各地の特産品を地図上に描きこむ『美食地図』が断続的に出版されたほか、美食家グリモ・ド・ラ・レニエール(1758-1837)を筆頭に地方の食材を高く評価する言説が見られ、20世紀には美食ガイドブックが出現する。このことから、食に対して関心が高い人々は「地方の味」を「地方主義」顕在化以前から注目すべきものであると考えてきたことを指摘できる。そしてこの「味」を実際に体験しに行ったと考えられるのが20世紀初頭を生きた美食家たちであり、「美食家クラブ」の活動や郷土料理を振興する「食の地方主義」の発足にその片鱗を見ることができる。 美食家たちによる活動が現代の「フード・ツーリズム」につながるものであったのかについては更なる調査が必要であるものの、「ツーリズム」と「地方主義」が「食」を通じて交差する契機となった可能性を明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査は概ね順調に進んでおり、昨年度延期したフランス・パリでの資料収集も2023年11月に実施することができた。しかし、とりわけツーリズムに関わる検証では、その発展に絡む事象(交通、産業、技術、広告など)ごとに歴史的背景の調査が必要となるため、当初予定していたよりも多くの文献にあたる必要が出ている。この影響により、計画していた分析の段階に入るタイミングがやや遅れてしまっているため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進については、計画的に文献の読み込みと分析を行うこと、得られた考察はこまめにデータとしてまとめるなど、研究を進めるための時間を改めて意識的に確保することで対応していきたい。また、研究計画書には適宜立ち返り、実施状況を把握することに努める。 資料調査については、2024 年度もフランスでの現地調査を実施する予定である。しかし現在のフランス渡航を取り巻く環境(オリンピック開催、円安による航空券及び滞在費の高騰)は課題であると考えている。延期せざるを得ない場合に備え、箱根ラリック美術館(神奈川県)、トヨタ博物館(愛知県)、北澤美術館(長野県)などでの国内調査を計画している。これらの美術館・博物館では、19世紀から20世紀フランスにおける調度品、自動車に関する資料、地方工芸の推進にかかる一次資料を見ることができる。この調査もツーリズムや郷土振興に関わる研究の進捗に必要である。
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