Project/Area Number |
22K18253
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 4:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野塚 知二 東京大学, エグゼクティブ・マネジメント・プログラム室, 特任教授 (40194609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 辰史 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (00362400)
新原 道信 中央大学, 文学部, 教授 (10228132)
山井 敏章 立命館大学, 経済学部, 教授 (10230301)
北村 陽子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (10533151)
高橋 一彦 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (20197130)
芳賀 猛 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20315360)
宮崎 理枝 大月短期大学, 経済科, 教授(移行) (20435283)
渡邉 健太 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (20582208)
鈴木 鉄忠 東洋大学, 国際学部, 准教授 (20726046)
梅垣 千尋 青山学院大学, コミュニティ人間科学部, 教授 (40413059)
長谷川 貴彦 北海道大学, 文学研究院, 教授 (70291226)
石井 香江 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (70457901)
西村 亮平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80172708)
井上 直子 城西大学, 経済学部, 准教授 (80727602)
永原 陽子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (90172551)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥25,090,000 (Direct Cost: ¥19,300,000、Indirect Cost: ¥5,790,000)
Fiscal Year 2026: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2025: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 野良猫 / 自由猫 / 「野生の猫」 / 家族形態 / 介護形態 / 「猫おばさん」 / 室内飼い猫 / 野良猫の消滅 / 帝国主義経験 / 地域猫 / 野猫 / 動物愛護思想 / 帝国主義 |
Outline of Research at the Start |
野良猫の有無とその消滅過程に注目して、人間・社会の諸特質(家族形態、高齢化態様と介護形態、高齢者の孤独、猫餌の相対価格、帝国主義・植民地主義の経験とその変容、動物愛護思想、住環境、衛生意識、動物観など、従来はそれぞれ個別に認識されてきたことがら)を総合的に理解する。猫という農耕定着以降に家畜化した動物(犬と比べるなら家畜化の程度が低く、他の家畜よりも相対的に人間による介入・改変が及んでいない動物)と人との関係を、「自由猫」という概念を用いて、総合的に認識し直すことによって、新たに見えてくるであろう人間・社会の秘密を解明し、家畜人文・社会科学という新しい研究方法・領域の可能性を開拓する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究には、Ⅰ現在、野良猫のいる社会といない社会の比較、Ⅱ現在は野良猫のいない社会における野良猫の消滅過程の解明、Ⅲ現在は野良猫のいる社会のうち日本やイタリアのように野良猫の存在態様が狭められている現状の解明、Ⅳ上記3領域の成果を踏まえた家畜人文学・家畜社会科学の新たな方法体系の開拓の四側面がある。 2022年度に研究組織外の専門家から示唆された点も踏まえて、猫(広くは家畜)と人間の関係に関する文献・資料調査、上記Ⅱに関する史料調査、上記Ⅲに関する実態調査・聴き取り調査を実施した。 3回の研究会は外部関係者の希望に基づき、柴内晶子氏(赤坂動物病院院長)、藤垣裕子氏(東京大学教授)、および岩合光昭氏(写真家)に開かれた形で実施した。内部では、井上直子、鈴木鉄忠、宮崎理枝、小野塚知二、山井敏章、石井香江が担当した調査の中間的な成果を報告した。 以下四点が明らかにされた。(1)野良猫が、問題化し始めた1950年代以降、「野良猫(stray cat, streunende Katzen, gatti randagio)」 という語が貶化させられ、忌避される傾向が共通に検出された。(2)人に伴われずに独りで外を歩く猫を指示するのに、「野良猫」に代わりうる概念として「自由猫(Freiganger, gattli liberi)」、「野生の猫(gatti selbatici)」や「外猫」などの語も登場している。(3)野良猫が消滅したと当初仮定した英国・ドイツなどでも、野良猫の存在を確認した。それらは郊外の家庭菜園、工業団地、墓地など特定の場所に棲息して、認識対象・言語化対象となりにくい。(4)野良猫の「保護」活動を特徴づけるのが捕獲・去勢であるが、その活動に携わる者は野良猫の絶滅を自覚的に目指しているわけではないが、「飼主のいない猫は不幸な存在である」という言説は例外なく観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
野良猫の有無と消滅の原因や、それらに関わる諸要因について基礎的な情報を収集し、猫と人の関係の歴史の再構成に着手し、研究実績の概要欄に記したような仮説を得るにいたった。 それらを通じて、①「野良猫」および類似の概念を比較史的に整理し、仮設する必要を認識するにいたった。2年目にして学問の新しい領域を開拓する際に必須の課題を掴みつつあるのは、当初の予想を越える進展具合である。②野良猫が北西ヨーロッパ諸国で完全に消滅したわけではないことが相当の証拠をともなって明らかにされ、当初の仮説を疑うに足る材料を得た。③野良猫(人に伴われずに独りで外を歩く猫)と中高年女性とを結び付ける言説が日本のみならず、英語圏、ドイツ語圏、イタリアにもあることが判明し、その関係や共通の基盤を探るという新たな作業課題を獲得した。 また、国内および海外での実態調査と史料調査のさらなる計画策定も順調に進んでおり、ヴィーンのVier Pforten International本部職員への聴き取り調査から、オーストリアよりも東側の欧州諸国(歴史人口学におけるヘイナル(サンクトペテルブルク=トリエステ線)の東側)やアジア諸国の調査の必要性を示唆された。 おもに英語圏を中心とした猫と人間の関係に関する研究者ネットワークと接触を始め、来年度に予定している国際シンポジウムの企画も徐々に具体化しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
実態調査と史料調査を進め、野良猫の有無を隔て、また、野良猫を消滅させてきた要因を析出する。また、「野良猫の有無」とは何を意味するのかを、猫の存在態様についての概念整理と「野良猫」等の呼称の比較史的研究を踏まえて、確定する。 そのために、まず第一に、英・独などで野良猫が消滅する以前の猫に関する言説や規範と、野良猫の消滅過程に作用した力学を、社会史、文化史、経済史、法制史、行政史、福祉史、獣医学史、家畜疫学史などの歴史研究諸分野の知見と方法を用いて明らかにする。第二に、英・独では現在も統計上は、人の管理・飼養下にない猫は存在することから、「野良猫の有無」とは何を意味するのかについて、法的観点と猫の存在態様の双方から迫ることで、飼い猫、野良猫、野猫などの猫の存在態様を表す概念を再定義することを試みる。ここが、2024年度以降の本研究企画の理論上の最大の挑戦点となるものと予想している。 第三に、猫をめぐる人間・社会の側の制度や取組について現状と近い過去を知るために、国内(長崎市など)と海外(イタリアとスロヴェニア・クロアチア・セルビアとの境界領域、中東欧諸地域、アジア諸地域)での調査を実施し、また系統的な調査を行うための計画を策定する。 第四に、研究成果の公開方法を具体化するとともに、国際シンポジウム等の外部に開かれた成果発表の機会を積極的に設け、また、関連諸学会での報告やパネルなどの企画も進める。
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