Project/Area Number |
22K18327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 32:Physical chemistry, functional solid state chemistry, and related fields
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 康裕 東京工業大学, 理学院, 教授 (60213708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雅明 東京工業大学, 理学院, 助教 (90909384)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥26,000,000 (Direct Cost: ¥20,000,000、Indirect Cost: ¥6,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,190,000 (Direct Cost: ¥6,300,000、Indirect Cost: ¥1,890,000)
Fiscal Year 2022: ¥13,000,000 (Direct Cost: ¥10,000,000、Indirect Cost: ¥3,000,000)
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Keywords | 分子分光 / 超高速分光 / 回転コヒーレンス / 量子波束イメージング / 高分解能分光 |
Outline of Research at the Start |
マイクロ波からテラヘルツ領域における高分解能分光は、分子構造の精密決定や構造異性化の解明にとって最有力な実験手法である。一方で、高感度な検出手法と組み合わせることが本質的に困難であったため、赤外~紫外領域の分光法と比較して大幅に不利な状況に留まっている。本研究は、光学遷移により引き起こされる輻射場と分子系とのエネルギーのやり取りを観測量としてきた従来の分光法とは全く異なり、分子の空間配向分布の時間変化からスペクトル情報を得る「量子波束イメージング分光」を開拓し、反応性が極めて高く極微量にしか生成できないため回転スペクトル測定が困難だった分子種の高分解能分光を展開する。
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Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波からテラヘルツ領域における高分解能分光は、分子構造の精密決定や構造異性化の解明にとって最有力な実験手法である。一方で、高感度な検出手法と組み合わせることが本質的に困難であったため、赤外~紫外領域の分光法と比較して大幅に不利な状況に留まっている。本研究は、輻射場と分子系とのエネルギーのやり取りを観測量としてきた従来の分光法とは全く異なり、分子の空間配向分布の時間変化からスペクトル情報を得る「量子波束イメージング分光」を開拓し、反応性が極めて高く極微量にしか生成できないため回転スペクトル測定が困難だった分子種の高分解能分光を展開する。研究2年度である2023年度は、以下の成果があった。 1)多量体に関するスペクトル観測:エチレンの2量体および3量体について、回転スペクトルの測定に成功し、赤外分光によるこれまでの計測と比較して1ケタ程度精度の高い分光定数の決定を実現した。この研究においては、サイズの異なる多量体がイメージング画像上では異なる位置に信号を与えることが確認され、分子種の特定に利用できる可能性が示された。 2)異なる分子から構成される分子錯体への展開:今までは単一の分子から構成される分子錯体のみを対象としてきたが、今年度は初めて、異なる分子から構成される分子錯体であるN2-Arについて回転スペクトルの測定に成功した。この際、画像の位置を選択することにより、超音速ジェット中に共存するAr2や(N2)2からの信号を抑制した。 3)分子間振動の観測:時間分解能を向上させた測定を行うことにより、Ar2ならびにN2-Arについて分子間振動スペクトルの観測に成功した。当該スペクトルは他の手法ではほぼ測定不可能であり、本手法の高い有効性を示す結果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績に記載の通り、 1)2量体よりもサイズの大きな分子錯体についてのスペクトル測定に成功した、 2)分子間振動に関するスペクトルの測定に成功した、 という、当初の計画では想定していなかった成果を上げることができた。この事実は、我々が独自に開発した「量子波束イメージング分光」の有するポテンシャルの高さを明示するものと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の3つのプロジェクトに取り組む。 1)分子間振動の観測の展開:これまでの研究から、N2-Arについていくつかの分子間振動バンドが観測されている。本年度は、より詳細な計測によって各遷移の帰属を行い、その上で、分子間相互作用ポテンシャルの実験的な特定へとつなげる。また、(N2)2などに対しても、分子間振動の観測を目指す。 2)分子間振動波動関数の実験的特定:Ar2に対する結果から、2次元の画像をフルに利用すれば、振動波動関数のかたちそのものを実験的に決定しうることが示されつつある。特に、励起状態の振動波動関数の特定が実現されれば大きなインパクトを与えると期待されるので、本年度中に解析を完了させる。 3)これまでは中性の安定分子およびその分子錯体についてもっぱら研究を行ってきたが、それと並行して、分子イオンの回転スペクトルの取得を目指して、各種の改良に取り組んできている。引き続き、イオンの効率的な生成、質量分析によるイオンの選別、ならびに、イオンの冷却が行えるように、現有の真空チャンバーの改良を行う。その上で、N2+のような簡単な分子イオンを手始めに、クラスターイオンの回転スペクトルの測定という世界初の研究成果の実現を目指す。
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