ヒトiPS細胞由来小腸オルガノイドを用いた次世代食品栄養学・食品科学研究の開拓
Project/Area Number |
22K18342
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 38:Agricultural chemistry and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 隆一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (50187259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 裕 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30835377)
清水 誠 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (40409008)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥26,000,000 (Direct Cost: ¥20,000,000、Indirect Cost: ¥6,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,060,000 (Direct Cost: ¥6,200,000、Indirect Cost: ¥1,860,000)
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Keywords | 小腸オルガノイド / ヒトiPS細胞 / コレステロール |
Outline of Research at the Start |
国内外を見渡して食品栄養学・食品科学研究領域でヒトiPS細胞を駆使した研究は皆無であり、本研究構想は先駆的な挑戦と言える。代表らは培養に要する高額コストを1/30~1/100に低減化するiPS由来オルガノイド培養法を独自に確立していて、食品機能をin vivoに極めて近いヒト細胞オルガノイドで解析する試みは、斬新な方法論の導入と言える。昨今、国内のほとんどの食品企業では動物実験を停止しており、代替研究法の導入が急務とされている。このニーズに応えるべく、同時にヒトBiology解析と強く連動した次世代食品栄養学・食品科学領域の開拓のためにも、本研究課題は意義を有している。
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Outline of Annual Research Achievements |
オルガノイドは臓器特異的幹細胞ならびにその分化細胞群により構築された、極性を持った三次元構造体であり、in vivoで培養可能なミニ臓器ととらえられている。代表者らはヒト小腸組織から、もしくはiPS細胞から小腸オルガノイドを樹立し、種々の実験に用いた。ヒトiPS細胞を分化させて樹立したオルガノイドは組織由来オルガノイドに比べて未熟とされているが、小腸オルガノイドではそのような差異は見られなかった。ヒト組織のように入手に手間取ることもなく、倫理的なハードルも低く、サンプルの個人差が無いなど、ヒトiPS細胞を用いることには多くの利点が見いだされた。 本実験系の最大のハードルは培養コストが高額である点にある。この問題点を解決すべく、Wnt3a、R-spondin1、Noggin、Hepatocyte growth factorの遺伝子をレンチウイルスシステムによりL細胞に同時発現させ、その培養上清を回収し、オルガノイド樹立に供した。その結果、培養コストは1/30以下に抑えることに成功し、比較的利用が容易な実験系となった。さらに従来から用いられているマトリゲルを安価なコラーゲンゲルで代替することにより、コストを1/100程度まで削減することに成功した。 ヒトiPS細胞小腸オルガノイドより単層上皮細胞を調製し、これまで多用されてきたヒト小腸様培養細胞Caco2と比較検討を行った。その結果、グルコース取り込み、キロミクロン分泌など重要な小腸機能について、iPS由来細胞がよりin vivoに近い活性を有することを明らかにした。以上の知見を学術論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトiPS細胞由来小腸オルガノイドを樹立するに際して、培養コストの軽減化を目標にして複数の試みを行った。一つは樹立に必須な複数の高額リコンビナントタンパク質を培養細胞の培養上清に分泌させ、その上清を用いる系のさらなる最適化を行った。これまで3種類のタンパク質を分泌させる系を確立してきたが、さらに4番目のタンパク質を発現・分泌させる系を確立し、培養コストのさらなる軽減化に成功した。同時にオルガノイド培養に必須なマトリゲルについて改良を行った。コロナ禍で世界的にマトリゲルの供給不足が生じたこと、比較的高額であること、またマウス肉腫細胞から単離した複数成分からなる成分組成が不確であることなどを勘案して、代替基質の探索を行った。その結果、マウスコラーゲンがオルガノイド培養に遜色ない活性を有することを認めた。その結果、さらなるコスト軽減が可能となり、また研究材料の不安定供給に対応できることとなった。 オルガノイドより単層小腸上皮細胞をトランスウエル上に培養し、吸収・透過を評価する系の樹立にも成功した。これまで数少ないヒト小腸上皮様細胞として多用されてきたCaco2細胞との活性比較を行った。その結果、グルコース吸収、カイロミクロン分泌等の重要な小腸機能について、ヒトiPS細胞由来の上皮細胞がよりin vivoに近い活性を有することを認めた。これまで小腸機能解析の数少ない評価系であったCaco2細胞に代わり、iPS細胞由来の上皮細胞の有用性を示すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題1:小腸オルガノイドを用いたコレステロール排出機構の解析 ヒトiPS由来小腸オルガノイドより小腸上皮細胞をトランスウエル上に単層培養し、基底膜側から頂端膜側(腸管腔への排出)への分泌を追跡する。近年存在が明らかにされた小腸管腔内へのコレステロール排出機構(TICE)の詳細を分子レベルで解析する。 研究課題2:小腸上皮細胞からカイロミクロン分泌の調節機構解析 ヒトiPS由来小腸オルガノイドより小腸上皮細胞を調製し、基底膜側へカイロミクロンの分泌が行われることを確認している。この分泌を抑制することは脂質代謝改善に結びつくことから、その機構解析を進める。具体的には、乳酸菌により不飽和脂肪酸が水酸化された複数の脂肪酸にカイロミクロン分泌抑制作用を見出しており、その作用の詳細を解析する。これまでの検討では、カイロミクロン合成を担うMTPの活性を抑制し、分泌低下をもたらしている可能性が想定され、その機構を追跡する。腸管内での乳酸菌による不飽和脂肪酸代謝産物が新たな生理作用を発揮する機構について明らかにする。 研究課題3:小腸上皮細胞での吸収・代謝を調節する食品成分探索系の樹立と成分探索 課題1/2で追跡した種々の脂質成分の吸収あるいは分泌を抑制(稀に促進)する食品成分を探索する評価系を構築する。研究代表者のグループではこれまでにも機能性食品成分探索を行っており、およそ~400種類の精製食品成分ライブラリを活用することができる。ヒト小腸管腔内での生理作用を再現できるアッセイ系として、その実用性、信頼性を提示する。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)