Project/Area Number |
22K18349
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 40:Forestry and forest products science, applied aquatic science, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
潮 秀樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50251682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小南 友里 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30803572)
五十嵐 圭日子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80345181)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥26,000,000 (Direct Cost: ¥20,000,000、Indirect Cost: ¥6,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,450,000 (Direct Cost: ¥6,500,000、Indirect Cost: ¥1,950,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,450,000 (Direct Cost: ¥6,500,000、Indirect Cost: ¥1,950,000)
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Keywords | ヒドロキシフェニル成分 / リグニン / カンパチ / ゼブラフィッシュ / 水圏生態系 / ヒドロキシフ ェニル成分 / フェニル プロパノイド |
Outline of Research at the Start |
本研究は,森林圏由来のヒドロキシフェニル成分による水生生物の生理・代謝調節という全く新たな観点からのアプローチであり,森林圏と水圏との関係を再構築する挑戦的研究である.また,石炭紀後期の白色腐朽菌の出現によって多様な森林圏由来有機物が作り出されたものと予想され,直前に全ゲノムの2倍化が起こり,ゲノムの可塑性が増したと考えられる真骨魚類の進化にも深く影響を及ぼした可能性がある.このことからも本研究は森林圏と水圏という分別されてきた生態系を総合的に理解するための研究であり,将来的に古生物学などとも連携した学際的研究へとつながる.
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Outline of Annual Research Achievements |
森林圏から水圏に供給されるヒドロキシフェニル成分としてヒドロキシ桂皮酸を含有する飼料を作製し,カンパチに投与する試験を実施し,体重・体長測定,遺伝子発現解析などを実施した. いずれの試験区においても,ヒドロキシ桂皮酸区で有意な体長および体重の増加は認められなかった.そこで,冬季の低水温期における成長に及ぼす影響について解析したところ,有意な体重の増加,体長の伸長が認められ,ヒドロキシ桂皮酸が低水温期の成長に効果を示すことが明らかとなった. 遺伝子発現では,ヒドロキシ桂皮酸区の肝臓でigf1 mRNAの発現が上昇する傾向が認められ,AktおよびErkのリン酸化レベルも上昇することが明らかとなった.これらの細胞内情報伝達が成長促進につながるものと推測された. ゼブラフィッシュの腹腔内にヒドロキシ桂皮酸を投与し,肝臓におけるigf1 mRNA発現量を測定したところ,ヒドロキシ桂皮酸投与区において有意にigf1の発現上昇が認められた.昨年度の成果と併せて考察すると,ヒドロキシ桂皮酸がigf1シグナル伝達系を活性化し,魚類の成長を促進するものと考えられた.この作用は,淡水魚であるコイ科魚類のゼブラフィッシュと海産魚であるスズキ目カンパチに共通して認められる現象であることから,広く水圏に生息する硬骨魚類全般に共通する応答であるものと推察された. 現在,異なる生態系を有する森林圏から生じる水系の採水を順次行っており,含まれるヒドロキシフェニル成分の分析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒドロキシ桂皮酸がカンパチおよびゼブラフィッシュの両種の成長を促進することが明らかとなった.また,ヒドロキシ桂皮酸区のigfで有意な遺伝子発現上昇が認められ,筋原線維タンパク質の産生増大が起こるとともに,成長も促進されるものと推定された.以上のことから,森林圏はヒドロキシ桂皮酸のようなヒドロキシフェニル成分を水圏に供給し,淡水および海水域で生息する魚類等の成長に影響を及ぼしているものと推定された.
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Strategy for Future Research Activity |
異なる生態系を有する森林圏から生じる水系の採水を順次行っており,含まれるヒドロキシフェニル成分の分析を進める.得られた成分について,昨年度同様に飼育試験を実施し,遺伝子発現などに及ぼす影響を明らかにする.IGF1の下流に存在する情報伝達系の活性化状況についても解析を進める予定である.また,培養細胞を用いた簡易な確認法も立ち上げる予定である.さらに,各ヒドロキシフェニル成分が魚類腸内フローラに及ぼす影響についても検討を加える予定である.
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