Project/Area Number |
22K18463
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 1:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Osaka University of Arts |
Principal Investigator |
五十嵐 公一 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (50769982)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | アート・ロー / 慣習法 / 注文制作 / 誂物 / 手付 / 注文主 / 契約 / 裁判 |
Outline of Research at the Start |
芸術活動の場では、しばしばトラブルが生じる。それを解決する場合、問題となるのは取引慣習や法律判断を含めた法体系である。この法体系がアート・ロー(Art Law:芸術法)である。 近年、日本ではアート・ローに対する関心が高まってきている。ところが、日本でアート・ローの事例として興味の対象となってきたのは、西洋美術史あるいは日本近現代美術史で注目されている作家や作品ばかりである。しかし、日本中近世美術史で知られる作家や作品にもアート・ローに関する興味深い事例が多い。それらは当時の法体系でどのように処理されたのか。この点に注目し、日本中近世に独自のアート・ローの世界と歴史があったことを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
芸術活動の場では、しばしばトラブルが生じる。それを解決する場合、問題となるのは取引慣習や法律判断を含めた法体系である。この法体系がアート・ロー(Art Law:芸術法)である。近年、日本ではアート・ローに対する関心が高まってきている。ところが、日本でアート・ローの事例として興味の対象となってきたのは、西洋美術史あるいは日本近現代美術史で注目されている作家や作品ばかりである。しかし、興味の対象となってこなかった日本中近世美術史の作家や作品も、アート・ローという視点に立った場合に興味深いものが多いはずである。それらは当時の法体系の中でどのように理解できるのだろうか。 このような問題意識のもと、日本中近世美術史でアート・ローを考える事例となりそうなものを広く探ってみた。すると、予想通り、興味深い事例が多数見つかった。今後もこの作業を続けて行く予定であり、事例は更に増えてゆくことが期待できる。 このようにアート・ローを考える事例を集めるのと同時に、集めた事例の分析も進めている。その場合、日本法制史や日本史などの研究成果に学びながら分析を進めることになるのだが、慣習法が大きな問題となりそうなことが見えてきた。慣習法は成文化されない掟なので解明が難しいのだが、この点に焦点を絞り研究を進めている。 また、挑戦的研究(萌芽)なので、今後の新しい研究に繋がるような実験的な試みも行なっている。例えば、日本中近世のアート・ローで(1)贋作問題、(2)契約問題などが、どのように解釈できるのか。これらを考えるための基礎データの集積にも取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
科研費での研究期間は2022年6月30日からだった。しかし、順調にデータが集まったため、2023年1月に美術史学会西支部例会で「「職人誂物之事」と注文制作 狩野永徳の事例を中心として」と題して学会発表を行うことができた。中世の日本で誂物制作が行われる場合、注文主と職人の間に慣習法を背景とした約束事があった。その慣習法を絵画制作の事例に当てはめた場合、どうなるのかを考えた発表だった。この発表で注目した事例は、中世から近世の変革期に活躍した狩野永徳である。その結果として、永徳が描いた「洛中洛外図屏風」(米沢市上杉博物館)、「織田信長像」(大徳寺)、東福寺法堂天井画について、従来とは異なる解釈ができることを示せたように思う。 また、同じ問題意識で日本近世における絵画の注文制作を分析したのが論文として発表した「大乗寺客殿障壁画 消えた嶋田元直の花鳥図」(『藝術文化研究(大阪芸術大学大学院芸術研究科)』27、2023年2月)である。これは円山応挙一門が兵庫県香住の大乗寺障壁画制作を行った際、慣習法に基づいて絵師たちに手付金が支払われていたことを証明したものである。この大乗寺障壁画の事例で面白いのは、応挙の門人である嶋田元直が手付金を受け取っていたにも関わらず、最終的には作品を仕上げることができなかった点である。作品制作中の天明8年(1788)、天明の大火が起きたため制作が続行できなくなったのである。現在、大乗寺には嶋田元直の障壁画がない。そのことについて、これまでその理由がよく分かっていなかった。しかし、慣習法を踏まえた場合、その理由が明らかとなる。そのことを論ずることができた。 科研費での研究期間のスタートが実質的には7月以降だったことを考えると、満足できる成果が残せたように思う。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年7月以降、順調にデータが集まっている。その結果、2022年度中に学会発表と論文発表ができた。これらは今後の研究の中核になってゆくものであるので、満足できる成果だと考えている。今後も、この研究を進めて行くためのテータが更に見つかるはずである。更に順調にデータが集積してゆけば、将来的にはこの研究の体系化も可能になる。そのような期待がある。 ただ、この科研は挑戦的研究(萌芽)である。今後の新しい研究に繋がるような実験的な試みを行うことが目的である。そのため、一つのテーマだけを深く掘り下げるだけで終わりたくない。複数の新しい試みをしたい。例えば、日本中近世のアート・ローで(1)贋作問題、(2)契約問題などがどのように解釈できるのか。これらは興味深い問題だと思う。日本中近世で贋作が作られた社会構造、それに対してどのような罰則が科せられたのか。作品制作の労働に対してどのような契約が結ばれ、制作者の賃金体系に反映されたのか。アート・ローという視点から、今後それらの問題についても積極的にデータの集積を行いたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)