Project/Area Number |
22K18508
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 4:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高宮 広土 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 教授 (40258752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 知 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20253388)
大塚 靖 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 准教授 (00244161)
川西 基博 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50551082)
宋 多情 鹿児島大学, 国際島嶼教育研究センター, 客員研究員 (50840815)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 島嶼文明 / 奄美 |
Outline of Research at the Start |
奄美群島は先史時代に狩猟採集民が定住した島々であることが、近年の研究で明らかになった。このことはこれまでの世界における定説を覆す、まさに奇跡の島々とも言え、申請者らはこの事象を「島嶼文明」と提唱した。本研究では、奄美群島を対象として、先史時代の島嶼文明の成立過程を明らかにするとともに、現代の人の移動、それがもたらす外来種、感染症の歴史と人々の対応、人と自然との共生の変遷を明らかにし、奄美群島がこれまで持続的に発展してきた特性を解明する。本研究は奄美群島での島嶼文明を中心として島嶼研究を通時的に再定義するとともに、これらの島嶼研究の成果が島嶼に暮らす人々に還元できるものであることを示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
先史時代から連続的に続いてきた奄美群島でそれらの問題がどのように変化していき、どのような点が奄美群島の特性であるかをあきらかにするため、野外調査、文献調査、聞き取り調査を実施し、以下の結果を得た。 ①奄美群島における環境教育を効果的に進めるための教材として校庭の植物に着目した。奄美大島,加計呂麻島、喜界島,徳之島,沖永良部島,与論島において合計32校の校庭で植物相調査を行い、合計で887種の維管束植物が確認された.在来種は386種、帰化種(外来種)は140種、栽培種は291種(栽培かつ帰化種1種含む)、同定不能種は70種で,絶滅危惧種も確認された。 ②世界自然遺産に認定された奄美大島の奄美市住用町に位置する市道三太郎線と周辺道路では、アマミノクロウサギをはじめとする夜間に野生動物を観察するナイトツアーが盛んに行われている。住用町の住民は世界自然遺産という外から与えられた価値によって自然を認識しており、また、ナイトツアーの展開をきっかけに,アマミノクロウサギを通じて自然の貴重さに気づいている。前者は自ら獲得したわけではなく、後者は自然全体を体系的に理解した結果でもない。つまり、両者とも間接的な認識によって得られたものである。この二重の間接性が、住用町住民の自然観の大きな特徴であることを明らかにした。 ③クロヌカカは海岸の砂浜周辺に生息するハエ目(双翅目)の吸血昆虫である。体長が2mmほどの小型の昆虫のため通常の網戸をすり抜けて屋内に入り吸血し激しいかゆみを起こすことから、以前からこのクロヌカカの対策に苦慮している。クロヌカカは鹿児島県の奄美大島や加計呂麻島で被害が出ている。この対策として、殺虫剤を使わないトラップでの対策を試み、一定の捕集結果を得た。また、このトラップをブユにも試み一定の捕集が可能であることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「外来種」、「自然との共生」、「感染症」については調査が順調に進んでおり、それぞれの関係性が明らかになってきている。また、それぞれが奄美群島の歴史と深く関与していることもわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
先史時代から現代までの奄美群島での問題の変遷を明らかにする。奄美群島は例外的に先史時代に狩猟採集民が定住した島ではあるが、以下の課題が残されている。①先史時代の奄美・沖縄群島の人々はどこからやってきたのか(人の移動)。②数千年間におよぶ狩猟採集で生活していた人々は何を食べたのか(自然との共生)。③8~12世紀に農耕を受け入れるが、それ以前に「貝の道」を通じて農耕を知っていたにも関わらず、かたくなに農耕を受け入れなかったのはなぜか(外来種)。④狩猟採集民たちは環境への影響を最小限にとどめていた要因(自然との共生)。⑤感染症に耐えられたのか。これら人の移動、外来種、自然との共生、感染症については現代の奄美群島においても形を変えて問題となっている。先史時代から連続的に続いてきた奄美群島でそれらの問題がどのように変化していき、どのような点が奄美群島の特性であるかを、これまでの結果をもとに調査を進めていく。 また、「人の移動」、「外来種」、「自然との共生」、「感染症」の問題は独立して起こっているのではなく、それぞれが深く関連している。これらの問題がどのように関連しながら先史から現代まで奄美群島が変化していったかを考察していき、奄美群島が島嶼としてどのような特性を持っていたのかを明らかにする。これらの結果より奄美群島が将来に向けて、自然、社会システムの何を保全すべきで、どのように発展させていくべきかを提言していく。
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