Project/Area Number |
22K18616
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 9:Education and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
並木 重宏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (40567757)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
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Keywords | アクセシビリティ / 車椅子 / 実験室 / 障害者 / インクルージョン |
Outline of Research at the Start |
実験室では,通路が狭い,収納の位置が高い,流し台が車椅子でアクセスできないなど,障碍者にとってさまざまなバリアが存在しており,実験の作業を行うことが難しい.このため多くの学生が進学をあきらめている現状があり,障害者権利条約で掲げられている平等な機会が確保されているとはいえない.本研究では,将来的なバリアフリー実験室の実現に向け,日本の法律と文化を考慮したうえで,国内における実験室のバリアフリー基準を提案することを目指し,バリアフリー実験室のモデルを大学内に設置する.将来的に障害のある学生が研究を行うことが出来る環境を提供する.
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Outline of Annual Research Achievements |
車椅子で使用することができる実験室什器のデザインを検討した。昇降式で円形の実験テーブル、昇降式の収納棚のプロトタイプを開発した。緊急用シャワーシステムを開発し関連する知財に関して特許を取得した。車椅子利用者の動作分析を行い、プロジェクトで開発した昇降式流し台の有効性を評価した。流し台については、2022年度のグッドデザイン賞を受賞した。またこれまでに大学の研究室、企業と共同開発した介助者なしで単独で利用できる車椅子階段昇降装置が、IAUD国際デザイン賞2023銀賞を受賞した。 これまでに開発してきたアクセシブルな実験室を利用して、障害のある高校生を対象とした科学実習を実施した。この実習では電動車椅子の生徒2名、発達障害の生徒1名、弱視の生徒1名が参加した。基本的に生徒自身が実験に取り組み、自分で行うことが難しい場合は、実験をしながら生徒と話し合い、みんなで合理的配慮を考えた。 こうした本事業による物的・制度的環境の整備の取り組みと、障害者の科学技術分野への参加の現状に関して、Nature Reviews Chmistry誌の特集Disability inclusion in chemistryにおいて招待論文「Towards accessible science laboratories in Japan」を寄稿した(https://www.nature.com/articles/s41570-023-00553-3)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昇降式流し台の有用性を評価するため、TOTO株式会社・ユニバーサルデザイン研究所と共同で研究を行った。車椅子利用者に慣性計測装置を身体の9か所に取り付け、流し台を異なる高さで使用する際の動作を分析した。手洗い、ビーカーの洗浄、メスシリンダーの洗浄の試験動作を計測し、その際の身体への負担の指標として、肘関節の動きを評価したところ、天板高さによって、作業時に肘関節が移動する軌跡が変化したことから,天板高さによって洗面台使用の動作負担が変化することが分かった。天板高さが適切な場合は、肘関節の位置は低く、横方向の変化が多かった。このことは、天板高さの調整により、流し台の使いやすさが変わることを示唆する。 緊急用シャワーには,漏水を防ぐため排水パンが設けられることがある。通常金属製で10 cm程度の高さの防液堤であるが、車椅子の利用者はこれを乗り越えることができないため、シャワーを使うことができない。この課題を解決するため、車輪で乗り越えることができる柔軟性のある防液堤として、ポリ塩化ビニルを用いることを着想し、日本エンコン株式会社と共同で検証を行った。車輪通過時は塩ビがつぶれ、通過後に元の形状に戻る。塩ビを丸めていくつかの高さを検討したところ、5cm程度の高さまで車輪が乗り越えることができたものの、車輪通過時の漏水がある程度認められたため、3㎝の高さで試作を行った。給排水の設備を有する日本エンコン株式会社の南相馬工場で塩ビによる防液堤の排水試験を行い、5cm口径の排水口に対して30L毎分までの水量を止水できることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きアクセシブルな実験什器の開発を進める。先行事例を調査し、本研究の知見を加えた、障害学生の実験室利用のガイドラインを整備する。同じマイノリティ属性をもつ生徒を集めた研究経験はSTEM分野の選択につながることが報告されている。本研究の障害のある生徒を対象にした科学実習の実践例を活用し、障害のある高校生がSTEM分野の研究を体験する機会を提供する。普通校に通う高校生に対しては、構築した大学のアクセシブルな実験室を提供し、特別支援学校の高校生に対して、各校に出張して実習を行うプログラムを整備する。
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