Project/Area Number |
22K18703
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 14:Plasma science and related fields
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
陰山 聡 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (20260052)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 磁気流体力学 / MHDダイナモ |
Outline of Research at the Start |
地球の双極子磁場は数十万年に一度、突然逆転することが知られている。地磁気逆転と呼ばれるこの現象はMHD(磁気流体力学)シミュレーションによって再現されてはいるが、逆転のメカニズムがMHDの物理として十分に解明されたとはいえない。本研究では、現実の地球に近づけるためにモデルを複雑化してきた従来の地磁気MHDシミュレーションとは対極的なアプローチをとり、可能な限り問題を単純化したモデル「正4面体モデル」を構築する。このモデルでは流れのヘリシティが自転の効果なしに対流のみによって自然発生するのが特徴である。本研究は地磁気逆転の古典的なトイモデルとして有名な「力武モデル」の現代化を目指すものといえる。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでに開発したシミュレーションコードの精度を確認するために(正四面体ではなく)立方体容器内部の熱対流の臨界レーリー数を計算した。非圧縮流体(ブシネスク近似)の臨界レイリー数は3446であることがこれまでの研究で分かっている。本研究で開発したコードで求めた値は3450であり、十分な精度を持つことがわかった。なお、開発中のこのコードは圧縮性流体を解くものであるが、マッハ数を0.01のオーダーで計算している。 次に本研究のターゲットである正四面体容器内部での熱対流の臨界レイリー数を求めたところ46500と判明した。この高い臨界値は容器形状の効果である。 この臨界値よりも少し上のレーリー数での熱対流について詳しく調べたところ、正四面体の頂点付近に現れる小構造を除いて基本的には単一の熱対流セルから構成される流れであることが分かった。この流れのヘリシティは小さいので、ダイナモ効果は期待できないし、実際ダイナモ効果は弱かった。 そこでさらにレイリー数を上げた計算を行ったところ、4つのセルをもつ流れ構造が現れた。これは高い空間対称性をもつ層流で、流れのヘリシティが正と負のペアが二つある。非線形飽和した流れは定常状態であり、その流線構造は大変興味深い。一本の流線を追跡すると、ループ状の流線の中を自分自身が貫く、すなわち結び目をもつような流線である。この流線構造から流れがヘリシティを持つことが(ヘリシティの定義から)明らかである。また、本研究の目的であるMHDダイナモ効果についても確認した。弱い種磁場をシミュレーションの初期条件に与えて計算したところ、最終的に飽和した磁場のエネルギーは対流の運動エネルギーを超えて定常状態になった。この強いダイナモの物理機構についても解明することができた。これは流れ場と磁場が高い幾何学的対称性を持っていることから可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正四面体対流系が磁場増幅効果をもつこと(MHDダイナモになっていること)は本研究計画の大前提である。このことは事前の直感的な予想と準備的な計算によりある程度確信はあったが、実際にシミュレーションコードが完成して強い磁場が生成・維持されたことは意義は大きい。この研究のために新たに開発した計算手法とコードが十分な精度を持っていることを定量的に確認したことも本年度の大きな成果である。単一のセル構造がレイリー数の増大につれて4つの対称的なセル構造に遷移することは興味深いものの、このような分岐現象は直方体容器内部での熱対流でも観察されているので特に重要ではなかろう。だが、後者の4セル構造が強いMHDダイナモ効果をもつことは大きな成果である。MHDダイナモ効果の鍵である流れのヘリシティがこの場合、結び目のある流線構造によって実現されていることを可視化を通じて示すことができたことも大きな成果である。 総じて、系の回転がないことでエクマン層を分解する必要がないこと、従って比較的荒い空間解像度でも十分に計算できることがこれらの成果を生む根本的な要因であり、この点も研究開始前の目論見通りである。実際、上述の成果の多くが総格子点数が40^3という小規模な計算でも得られたことは特筆に値する。(もちろん解像度を上げた計算でそれらの結果を定量的に確認している。) 正四面体というシンプルで対称的な形状がシミュレーション計算だけでなくデータの可視化と解析をいかに容易にするかという点については事前の予想以上であった。 また、この研究を進めるために新たに開発したSVGベースの新しい可視化ツールも極めて有効であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはこれまでに得られた以下の成果を論文にまとめる。 (1)正四面体内部を等間隔格子で解く数値傾斜手法について、(2) 正四面体の2次元断面を可視化するために新たに開発したSVGベースの可視化手法について、(3) 正四面体内部の熱対流構造について、(4) その流れによるMHDダイナモ効果とその磁場増幅メカニズムについて。
これまでに見いだした4つの対流セルによるMHDダイナモによって生成された磁場は、正四面体容器の外部に広がる大規模なものである。その空間構造は幾何学的に高い対称性をもち、その対称性を利用して磁場増幅機構の可視化解析を進めることができた。この対称性が崩れ、磁場の極性が反転するようなパラメータを見いだすことが次の目標である。これまでのMHDダイナモ計算の経験から、レイリー数をさらに上げることでそのような逆転が起きると予想している。逆転の起きるパラメータ領域を見つけた後は、磁場逆転のメカニズムを明らかにするための可視化が鍵となるであろう。そこでは本研究を通じて開発したSVGベースの2次元可視化ツールに加えて3次元のin-situ可視化ツール(既に開発済み)が威力を発揮することになるであろう。なお、レイリー数を上げた計算は必然的に計算規模の増大を伴うので、これまでのよりも格子点数を増やした計算が必要となるが、開発済みのシミュレーションコードは既にMPIとOpenMPによる並列化が終了しているので、計算の大規模化には特に問題は生じないと予想している。
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