Project/Area Number |
22K18738
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 17:Earth and planetary science and related fields
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾崎 和海 東京工業大学, 理学院, 准教授 (10644411)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
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Keywords | 古生代 / 大気 / 海洋 / 酸素 / アノキシア / 物質循環 / 数理モデル / 生物地球化学 |
Outline of Research at the Start |
古生代カンブリア紀からオルドビス紀の時代(約5.4億年前~4.2億年前)は、多細胞生物の門レベルの多様化や生物大放散事変、および苔類・維管束植物の進化といった生命の躍進が生じた時代として知られている.しかしながら、生命進化に密接に関連していると考えられる大気海洋中の酸素濃度についてはよく分かっていない.本研究は、古生代の大気海洋系の酸化還元状態について物質循環に基づく理論的見地からアプローチする.本研究によって大気海洋化学進化と地質学および古生物学を結び付ける科学的知見が得られることが期待できる.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、古生代前期(カンブリア紀からオルドビス紀)の大気中酸素(O2)濃度の安定性について、物質循環に基づく理論的見地から明らかにすることを目指している。特に、大気O2濃度が海洋酸化還元状態の遷移領域(アノキシアの縁)に位置するように決まっていたのではないかという仮説を検証する。この目的達成のため、大気海洋系の酸化還元状態を規定する主要生元素(C, P, S)の物質循環過程に内在するフィードバック機構の応答特性を考慮した理論モデルを構築し、これを古生代地球環境へと適用することで、当時の大気海洋系がアノキシアの縁に位置するよう自己調整されていた可能性を定量的に評価する。これにより古生代地球表層環境が貧酸素状態にあった必然的理由が明らかになれば、その後の富酸素な大気海洋状態へと至る地球環境と生命の共進化の全容解明への足掛かりになると期待される。 初年度に引き続きモデル開発を行った。海洋物質循環モデルCANOPSと地殻進化モデルCOPSEおよび炭素循環モデルを結合した新規の理論モデルの開発が完了し、その検証作業を進めた。このモデルによって、地質学的時間スケールで生じる大気海洋酸化還元状態と気候状態を同時にシミュレートできる新規の理論モデルとなった。開発したモデル(地球システム進化モデル)を用いて古生代の地球環境変化のシミュレーションも実施した。その結果、カンブリア紀からオルドビス紀にかけて海洋は貧・無酸素環境にあり、陸上植物の進化によって大気海洋系が酸化的環境へと変化する結果が得られた。また、海洋循環速度や粒子状有機物の分解速度および海水準などが結果に及ぼす影響を評価するための数値実験も実施した。その結果、いずれの場合でも古生代海洋がアノキシアの縁に沿って変化していった様子が示された。これらは、本研究で目的とする古生代の大気O2濃度の安定性解析を行うための重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気海洋酸化還元状態、炭素循環および気候状態を同時にシミュレートしながら古生代の地球システム進化をシミュレート可能な理論モデルの開発が完了した。これにより本研究の目的である古生代の大気O2濃度の安定性を解析する準備が整った。標準実験のほか、大気O2濃度に影響を及ぼす重要なパラメータについての感度実験も順調に進展していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
開発された理論モデルを用いた数値実験と解析を進める。標準実験ではカンブリア紀からオルドビス紀にかけて海洋はアノキシアの縁に位置し、陸上植物の進化に伴って大気O2濃度が上昇することで海洋も参加されていく様子が示されている。また、海洋循環速度や有機物の分解速度および海水準といった不定パラメータについての感度実験を行った結果も、古生代前半の海洋がアノキシアの縁に位置するように大気O2濃度が変化していく様子を示している。これらは海洋の酸化還元状態に応じて必須元素であるリンの物質循環が変化していることで説明できると考えられるが、詳細な解析を進める必要がある。また、モデルのもつ不定パラメータについての系統的な感度実験も引き続き実施する。 開発された理論モデルは数百年から億年スケールの地球システム進化を扱うことができるモデルであり、当該分野で様々な応用が期待できる。モデル開発については国際学術誌への投稿準備を進めているほか、プログラムをコミュニティで広く利用できるようにオープン化する作業を進める。また、国内外の学術会議で研究成果を報告する。
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