Project/Area Number |
22K18978
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 30:Applied physics and engineering and related fields
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹木 敬司 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00183822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Pin Christophe 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (50793767)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
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Keywords | 光圧 / 単一ナノ粒子 / 超高感度吸収分光 / 運動量 |
Outline of Research at the Start |
光のエネルギーを観測する既存の分光法とは概念が異なり、共鳴吸収による光の運動量変化により発生する力(光圧)を利用した新しい原理に基づく単一ナノ粒子の超高感度スペクトロスコピーを創製する。本手法は、ナノ粒子の電子のミクロな運動(波動関数)が光圧を介して粒子のマクロな運動として現れることに着目し、粒子の運動計測から共鳴吸収の定量解析を実現するものであり、吸収過程の直接観測法であると同時に零位法であるため単一分子レベルの超高感度化が可能である。光圧ナノスペクトロスコピーは、光科学技術にパラダイムシフトをもたらすとともに、ナノ物質科学・材料創製研究においてブレークスルーとなりうる新展開が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
ナノキャピラリー光導波路を用いた光圧共鳴吸収スペクトロスコピーシステムを構築した。ナノキャピラリーは、ガラスキャピラリーに熱をかけて延伸することにより、長さが数mm、外径が光波長程度、内径が数100 nmまで細くしたものである。これはpL~fLの試料溶液を入れるセルであるとともに、回折限界まで集光した高強度な光を長距離均一にシングルモード伝搬させる光導波路の機能を持つ。このナノキャピラリーにナノ粒子を分散した溶液を注入し、端面からレーザー光を入射して単一ナノ粒子の吸収による光圧(共鳴吸収力)を発生させ、粒子の並進運動から吸収断面積を定量解析する手法である。本手法により種々のナノ粒子について単一分子レベルの吸収断面積の定量解析やナノ粒子の分離選別輸送が実現できる。 1)光圧共鳴吸収スペクトロスコピーシステムの理論解析・設計製作・性能評価:昨年度に引き続き、スピン・軌道角運動量の転写・保存・変換特性について解析して円二色性スペクトロスコピーに最適なナノキャピラリー光導波路を設計するとともに、光圧粒子運動の流体力学・熱運動解析による計測感度・吸収解析精度を精査した。また、半導体レーザーの角運動量を制御して入射させ、超高感度CCDカメラを搭載した光学顕微鏡を用いてナノ粒子の散乱から並進・回転運動をnm精度で解析するシステムに改良を加え、キラル構造を有するナノ粒子の光圧選別輸送の実験に挑戦した。 2)光トルク誘起回転運動による円二色性スペクトロスコピー:左右円偏光の共鳴吸収が異なる円二色性をもつナノ粒子について、光トルクによる回転運動の方向と速度から単一ナノ粒子の円二色性スペクトルを超高感度に計測する技術の創製に挑戦した。また、ナノキャピラリーの両端から波長・偏光状態の異なるレーザー光を対向して入射し、キラリティーによる光圧分離選別の実現を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は単一ナノ粒子の円二色性スペクトロスコピー実験に向けた理論解析およびナノキャピラリー光導波路の設計、実験系の改良を行い、「研究実績の概要」に記載した2つの研究項目を実施することができた。 光圧共鳴吸収スペクトロスコピーシステムの理論解析・設計製作・性能評価については、角運動量変換を伴う共鳴吸収過程におけるスピン・軌道角運動量の転写・保存・変換特性について詳細な理論解析を実施することにより、ナノキャピラリーにおけるナノ粒子の回転運動の挙動が明らかになり、円二色性の高精度解析の実現が可能となった。また、光トルク誘起回転運動による円二色性スペクトロスコピー実験については、キラル分子集合体の円二色性・旋光性の定量測定を行い、スピン・軌道角運動量の変換過程の理論解析との整合性を検証することを試みた。これらの成果は、線形な運動量だけでなく、スピン・軌道角運動量による光圧の回転力(光トルク)を利用して、ナノ粒子の回転運動計測から角運動量変換を伴う共鳴吸収過程の直接観測を世界に先駆けて実現する道を拓いた。
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Strategy for Future Research Activity |
光トルク誘起回転運動による円二色性スペクトロスコピーの実現:共鳴吸収過程におけるスピン・軌道角運動量の転写・保存・変換特性に関する理論解析に基づいて最適設計したナノキャピラリーを加熱装置付キャピラリープラーを用いて高精度に作製し、ナノ粒子の回転運動解析による円二色性光圧スペクトロスコピーの実験を実現するとともに、キラル分子集合体の円二色性・旋光性の定量測定を行い、計測精度・感度等の性能について評価する。ナノ粒子のサイズとして、検証実験では粒径50~100 nmではじめるが、最終的には、量子効果や特異な物性が現れる10 nmより小さい粒子の展開を実現する。また、ナノキャピラリーの両端から波長・偏光状態の異なるレーザー光を対向して入射し、キラリティーによる高精度・高感度な光圧分離選別を実現する。さらに、光の運動量・角運動量を利用した新規な計測手法の応用展開として、高機能材料・単一量子センサー・量子通信・量子コンピュータの研究開発について詳細に検討し、光圧共鳴吸収スペクトロスコピーの将来展望についてまとめる。
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