励起状態分子に作用する光圧の計測に基づく単一ナノ粒子の超高速光力学分光法の開拓
Project/Area Number |
22K19007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 32:Physical chemistry, functional solid state chemistry, and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊都 将司 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (10372632)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
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Keywords | 光マニピュレーション / 励起状態ダイナミクス / 光トラッピング / 時間分解分光 |
Outline of Research at the Start |
吸収分光は非常に高い時間分解能が実現でき,励起状態分子の挙動を計測する有効な手法であるが,試料通過前後の光強度差を検出する分光法であるため,微小領域での少数分子や単一ナノ粒子などを対象とした超高速時間分解吸収分光は一般には困難である。そこで本研究では,従来とは全く異なるアプローチ,即ち「分子が光を吸収することで生じる力(光圧)の測定」によって,励起状態分子の光吸収や誘導放出(負の吸収)などの電子状態ダイナミクスや多光子吸収断面積を単一ナノ粒子レベルで検出する手法を開拓する。
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Outline of Annual Research Achievements |
時間分解分光法のうち過渡吸収分光法は原理的に全ての化学種が検出可能であり,フェムト秒オーダーの非常に高い時間分解能が達成可能であるため,一般に非常に短寿命(フェムト秒からミリ秒)の励起状態分子のダイナミクス解明に非常に強力なツールとして多様な反応系に適用されている。しかしながら,サンプル入射前後の光強度差を検出する吸収分光法においては,対象分子数が少数の場合,サンプルへの入射光と出射光の光量差が小さくなるため信号/雑音比が減少し,したがって非常に少数の分子を対象とした微小領域での計測は一般に困難である。そこで本研究では,光吸収によって光子の運動量が分子に受け渡されることで発生する光圧を測定することによって過渡吸収や誘導放出などの電子励起状態ダイナミクスや多光子吸収断面積を単一粒子レベルで検出する手法開拓を目指す。 今年度は,昨年度までに構築した,フェムト秒マルチレーザー光捕捉装置を用い,高分子などの微粒子に内包された色素分子を対象として,過渡吸収による光圧の結果生ずるミクロな機械運動の検出と光圧の評価を行った。近赤外レーザーパルスで光捕捉した色素内包高分子微粒子に,色素励起用の可視パルスを種々の光学遅延を与えて照射し,励起状態分子数の変化に伴う捕捉微粒子の光軸上の微少変位を測定した。変位が色素の励起状態数変化と対応することを確認し,観測された微少変位が確かに過渡吸収に起因することを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は,昨年度に引き続き単一微粒子内の励起状態分子の吸収(過渡吸収)により微少機械運動が誘起されることを実験的に示すとともに,その定量評価を行った。フェムト秒可視レーザーパルスとピコ秒近赤外レーザーパルスを同軸に顕微鏡下に導入し,ピコ秒近赤外レーザーパルスにより捕捉した粒子内の色素の励起状態を可視パルス照射により生成した。これら2パルス間に時間的遅延を種々与えることで,捕捉用近赤外パルス(色素の基底状態は吸収しないが,励起状態は吸収する波長)が粒子に到達する時刻における内包色素分子の励起状態濃度を制御した。粒子の並進運動は粒子内の色素の蛍光をワイドフィールド顕微鏡によりイメージングすることで追跡した。特に光軸(Z軸)方向のナノメートルスケールの変位検出にはシリンドリカルレンズを結像系に挿入した非点収差イメージング法を用いた。近赤外域に過渡吸収を示す分子を内包させた微粒子においては,そのZ位置が色素の励起状態寿命に対応して変化し,蛍光の減衰曲線と非常に良い一致を示したこと,また内包された色素数や近赤外及び可視パルスの強度分布などを理論的に見積もり,そのZ変位とも大きな矛盾がないことから,観測されたZ変位は過渡吸収に由来するものと結論づけることができた。さらに,誘導放出による「負の光圧」による過渡吸収の場合とは逆方向のZ変位の観測と評価にも成功した。これらの結果は,微小空間での系の過渡吸収特性と光圧測定とを結びつける重要な研究成果であり,本研究で提案する新たな励起ダイナミクス測定手法の実現に向けて,そのコンセプトの有効性を示すことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,本研究課題の目標である,「微粒子の光力学的測定から微小領域における分子の励起状態ダイナミクスに関する情報を取得する」新たな測定手法の開拓に対して,励起状態分子の光吸収や誘導放出に起因する光圧が誘起する微少な機械運動の計測と,その励起ダイナミクスとの相関に関する情報取得を実証し,コンセプトの有効性を示すことができている。これまでは粒子の光軸方向の変位と微小空間の少数分子の励起ダイナミクスとの相関に対して注目し研究を進めてきたが,微粒子の分極率が励起状態分子生成により変化することに着目すれば,Z変位のみならずXY面での粒子の位置の変化を励起状態ダイナミクスと関連させ,その結果を微小空間励起ダイナミクス計測へ展開することも期待でき,ごく最近の研究によりその有効性を示唆する結果が得られ始めており,今後はそのような新しいアプローチの実験的評価にも挑戦する。さらに多光子吸収などの非線形吸収プロセスによる光圧に基づく微小変位測定と計測への展開にも取り組む。
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Report
(2 results)
Research Products
(34 results)
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[Presentation] Single-Particle Fluorescence Measurement of Perylendiimide Nanoparticles2023
Author(s)
Tsukimi Iteya, Hirotaka Kageyama, Ali Eftekhari, Aude Bouchet, Michel Sliwa, Syota Hamatani, Daichi Kitagawa, Seiya Kobatake, Hikaru Sotome, Syoji Ito, Hiroshi Miyasaka
Organizer
The 31st International Conference on Photochemistry (ICP2023)
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[Presentation] ペリレンジイミド誘導体ナノ粒子の発光特性2023
Author(s)
射手矢 つきみ, 蔭山 浩崇, Eftekhari Ali, Bouchet Aude, Sliwa Michel, 濱谷 将太, 北川 大地, 小畠 誠也, 五月女 光, 伊都 将司, 宮坂 博
Organizer
2023年光化学討論会
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