Project/Area Number |
22K19093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 36:Inorganic materials chemistry, energy-related chemistry, and related fields
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
菊川 直樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, マテリアル基盤研究センター, 主幹研究員 (00442731)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 磁気トポロジカル物質 / 単結晶 / 浮遊帯域法 / 異常ホール効果 / トポロジー / 磁気ワイル物質 / 単結晶育成 / 物性測定 / 磁性物質 / 水素液化 |
Outline of Research at the Start |
水素は次世代クリーンエネルギーとして,その利活用の期待が高まっている.液体水素は気体の約1/800の密度であり,その純度から,貯蔵・運搬・利用に利点をもつ.一方,常圧化での液化温度は20ケルビンと低温であり,その液化効率の向上に向け,磁気冷凍方式が注目されている.磁気冷凍方式での水素液化では,高効率な磁気熱量効果を示す磁気冷凍材料,さらには液化の際,蒸発の抑制に必要な水素分子間の核スピン変換を促進する材料開発が求められている.本研究では,トポロジーの概念を導入した,水素液化に貢献しうる機能性材料開発とその評価について基礎研究をおこなう.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究「トポロジーの概念にもとづく水素液化機能性材料の開発」の目的は,磁気冷凍方式で水素液化を促進する物質を「トポロジー」の概念 により開発し,その基礎物性を評価することである.これまで,空間反転対称性・時間反転対称性のどちらも破り,磁性ワイル物質としての候補と見られているNdAlGeに着目し,浮遊帯域法による単結晶育成に成功した.これらを用い,13.5ケルビンに磁気転移を持つこの物質の,熱力学量を中心としたバルク物性を詳細に明らかにしてきた.特に,イジング異方性に関連し軽希土類Nd を含む系において,5 T,9 T までそれぞれ-4.2, および-5.7 J/mol Kと比較的大きな磁気エントロピー変化を有する.さらに今年度は,トポロジカル物性について,40ミリケルビン,17.5テスラまでのホール効果,磁気トルクを測定した.13.5ケルビンの磁気転移温度以下より明確な異常ホール効果を観測し,温度の低下とともにそれが増強した.飽和磁化と比例関係,すなわちKarplus-Luttingerの関係式が成立することから,この物質の異常ホール効果が従来強磁性の枠組みである,内因性機構に由来することを示唆する.さらに1ケルビン以下においては,異常ホール効果にプラトー構造を見出した.このプラトー構造は,磁気トルクの結果から磁化と相関を持つこと,さらにホール抵抗の磁場方向依存性から,ホール抵抗は磁化容易軸方向の磁場成分にスケールされることもわかった.一方で,特に最初のプラトー(約0.07テスラ)について,ホール抵抗では飽和した値の60%近くを示すのとは対照的に,磁化ではほとんど値を持たない.つまり,ホール伝導度と磁化の比が従来型強磁性体に基づく経験則より増強されている.この結果はMn3Snと同様であり,今後その機構についてさらに研究を進める必要がある.これらの結果を論文発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁気ワイル候補物質NdAlGeについてこれまで成功した浮遊帯域法での単結晶を用い,これまでの磁化,比熱,および熱膨張の熱力学測定に加え,今年度は当初の計画通り,40ミリケルビン,17.5テスラまでのホール効果,磁気トルクの詳細な測定をおこなうことができた.それにより,磁気転移温度以下で異常ホール効果を観測し,さらには異常ホール効果と磁化との相関について直接評価できた.つまり,この物質の異常ホール効果がKarplus-Luttingerの関係式を示し,異常ホール効果が内因性機構に由来することを見出した.さらには,予想外の結果として,1ケルビン以下の異常ホール効果について,プラトー構造を観測したことである.このプラトー構造は,今まで報告されておらず,特に最初のプラトーについては,ホール抵抗では飽和した値の60%近くを示すのに対し,磁化ではほとんど値を持たない.つまり,ホール伝導度と磁化の比について従来型強磁性体に基づく経験則よりも大きく増強されていることがわかった.この結果の解釈はまだ十分ではないが,浮遊帯域法で育成した試料での磁気構造など,今後のさらなる研究につながる成果を得られた.これらの結果から,この物質のトポロジカル物性について明らかにしつつあり,この研究の実施について,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
磁気ワイル候補物質NdAlGeについて,これまで基礎熱力学物性と磁気輸送測定を進めてきた.1ケルビン以下で見出された異常ホール効果のプラトー構造について,磁気構造や磁気ワイル候補物質RAlT (R: 希土類元素,T: Si, Ge)について研究対象を広げ,整合性のある解釈へと進めていく予定である.この際,研究の第一歩である試料育成については,育成中にアルミニウムの蒸発が見られているため,その対策もおこなう.浮遊帯域法での合金試料育成についても視野を広げ,さらなる知見を得ていく予定である.
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