Project/Area Number |
22K19173
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 39:Agricultural and environmental biology and related fields
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
入枝 泰樹 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00749244)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
|
Keywords | 植物-微生物間相互作用 |
Outline of Research at the Start |
炭疽病菌やイネいもち病菌は、植物への侵入に付着器のメラニン化を必須とする。この考えは植物病理学分野の長年の定説であり、メラニン合成阻害剤は有効な農薬として機能する。しかし、驚くことに、農薬存在下でメラニン化を阻害された付着器から宿主植物に侵入して壊死斑を形成する炭疽病菌株を発見した。メラニン合成欠損株においても植物侵入能が維持されており、定説の普遍性に疑義が生じた。本研究では、この新奇菌株の生態を詳細に解析し、付着器を介した植物侵入におけるメラニン化の役割を再考する。また、植物への侵入過程で付着器のメラニン化を必須としない炭疽病菌株を網羅的に探索し、炭疽病菌の侵入機構の本質的理解を進める。
|
Outline of Annual Research Achievements |
コスモス炭疽病菌C. fioriniae CC1、ウリ類炭疽病菌C. orbiculare 104-T、アブラナ科炭疽病菌C. higginsianum Abr1-5、リンゴ炭疽病菌C. siamense MAF1のSCD1遺伝子を破壊したメラニン生合成欠損株(アルビノ変異体)を活用し、付着器を介した植物侵入におけるメラニン化依存性を各菌株間で比較したデータを前年に継続して取得した。3種類のメラニン生合成阻害剤を処理した場合の解析結果も統合し、メラニン化が様々な付着器機能(膨圧の発生、人工基質への侵入能、細胞壁分解酵素への耐性、植物上での正常な付着器の維持能力、植物侵入能および壊死斑形成能)に果たす役割は各炭疽病菌間で異なることを明らかにした。これら4菌株のなかで、付着器のメラニン化に依存せずに植物に侵入できる新奇炭疽病菌はコスモス炭疽病菌CC1だけである。一方で、コスモス菌CC1、リンゴ菌MAF1、ウリ類菌104-Tの付着器細胞壁におけるオスモライト透過性をメラニン化の有無でそれぞれ調査した結果、菌株間で類似の結果が得られた。このことは、メラニン化付着器内部に蓄積して膨圧を発生させるオスモライトが炭疽病菌株間で異なり、コスモス菌CC1やリンゴ菌MAF1では既報のグリセロールより高分子の物質が蓄積することで、非メラニン化条件でも膨圧が維持される可能性が考えられた。今後、コスモス菌CC1の付着器内部に蓄積するオスモライトを同定する。付着器のメラニン化に依存せずに植物に侵入できる新奇炭疽病菌として、コスモス炭疽病菌の他にサクラ炭疽病菌C. nymphaeae PL1-1-bを同定しているが、コスモス炭疽病菌、サクラ炭疽病菌以外に同様の特性をもつ炭疽病菌が存在する可能性を探るため、様々な炭疽病菌株に対して網羅的な調査を継続する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、令和4年度に引き続き、非メラニン化付着器から植物に侵入できるコスモス炭疽病菌の付着器機能とメラニン化の関連性解析を実施した。様々な付着器機能(付着器内部の膨圧、人工基質への侵入能、細胞壁分解酵素耐性、植物上の付着器形態)を解析、従来の炭疽病菌(ウリ類菌、アブラナ科菌、リンゴ菌)と比較した。また、具体的には、メラニン生合成阻害剤の処理だけでなく、各炭疽病菌のメラニン生合成欠損株(アルビノ変異体)を活用して、非メラニン化条件で各機能が維持されているか各炭疽病菌間で比較した。また、コスモス菌、リンゴ菌、ウリ類菌の付着器細胞壁におけるオスモライト透過性をメラニン化の有無でそれぞれ調査した。一方で、付着器のメラニン化に依存せず植物に侵入する新奇炭疽病菌の網羅的探索を継続している。現在までに、サクラ炭疽病菌をコスモス炭疽病菌と同様に、非メラニン化付着器から植物に侵入できる菌として同定しているが、引き続き探索を継続する。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、コスモス炭疽病菌の付着器内部に蓄積するオスモライトを同定し、ウリ類炭疽病菌より高分子であるために、非メラニン化条件でも膨圧が維持されることを証明する。また、付着器のメラニン化に依存せず植物に侵入する新奇炭疽病菌の網羅的探索を継続する。当研究室保有の炭疽病菌71菌株に加え、農業生物資源ジーンバンクから必要に応じて菌株を入手し、薬剤添加区の壊死斑形成および顕微鏡観察による侵入菌糸の形成を指標とするスクリーニングによりメラニン化非依存株を選抜する。各菌の宿主植物に加え、侵入抵抗性が低下した多数のシロイヌナズナ免疫変異体も活用する。取得された候補菌株に対しては形質転換系を新たに構築してSCD1遺伝子破壊によるアルビノ変異体を作出し、上記解析を通して付着器機能の維持を調査する。さらに、多種にわたるColletotrichum属菌の系統樹上でメラニン化非依存性と系統進化の関連性に言及する。さらに、メラニン化に依存しない植物侵入を可能にする病原性候補遺伝子の探索を実施する。コスモス炭疽病菌および上記の網羅的探索により同定するメラニン化非依存型炭疽病菌のゲノムおよびトランスクリプトーム解析を行い、従来菌と比較する。非メラニン化付着器からの植物侵入に特異的な遺伝子を抽出後、当該遺伝子の破壊により病原性への寄与を証明し、新しい感染モデルを提唱する。
|