Project/Area Number |
22K19206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 40:Forestry and forest products science, applied aquatic science, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河本 晴雄 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (80224864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 英治 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (00649204)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | バイオ炭素 / 2050年カーボンニュートラル / 木質バイオマス / 熱分解分子機構 / 土壌機能 / バイオ炭 |
Outline of Research at the Start |
“バイオ炭”とは、炭素の貯留を目的に土壌に施用されるバイオマス由来の炭化物である。大気CO2の実に10%近くを森林が毎年固定していることから、廃棄される森林バイオマスの一部を安定なバイオ炭として土壌に隔離することが、大気中のCO2の削減技術として注目されている。本研究では、木材の熱分解分子機構の知見をベースに、植物の生育に必要な土壌機能を目的に応じて強化できる、テーラーメイドなバイオ炭製造技術を創出する。本技術が創生されることで、植物の生育が促進され、大気からのさらなるCO2除去が期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
“バイオ炭”とは、炭素の貯留を目的に土壌に施用されるバイオマス由来の炭化物である。大気CO2の実に10%近くを森林が毎年固定していることから、廃棄される森林バイオマスの一部を安定なバイオ炭として土壌に隔離することが、大気中のCO2の削減技術として注目されている。本研究では、木材の熱分解分子機構の知見をベースに、植物の生育に必要な土壌機能を目的に応じて強化できる、テーラーメードなバイオ炭製造技術を創出する。本技術が創生されることで、植物の生育が促進され、大気からのさらなるCO2除去が期待される。 令和5年度には、種々の金属の塩化物と硫酸塩をスギ木材に含侵後に乾燥させた試料を用い一定の昇温速度で400℃あるいは500℃にまで昇温させる条件で炭化し、炭化物収量に及ぼす添加剤の影響について検討した。その結果、ある種の添加剤が炭化物収率を増大させ、同じ金属カチオンでは硫酸塩よりも塩化物において炭化物増収効果が高いことが判明した。また、その増収メカニズムに関連して、木材多糖(主にセルロース)より揮発生成するレボグルコサン(無水糖)の2次重合促進作用と相関があることが明らかになった。また、木材構成成分の官能基(カルボキシ基とフェノール性OH基)の生成挙動との関連を調べるために、スギKlasonリグニンより400~600℃の温度で調製した炭化物についてBoehm法を用いて検討した結果、リグニンの芳香核のメトキシル基が脱メチル化してカテコール基に変化する400~500℃の温度域でフェノール性OH基量が増大し、カテコール基が分解する600℃で急激に減少することが判明した。セルロースの炭化ではこのような挙動は認められず、構成成分の熱分解挙動が官能基組成に影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、熱分解分子機構の知見から炭化を制御・改変することで、バイオ炭の性質(細孔分布、官能基など)をテーラーメードに制御できる新規な技術の提案を目指している。 令和5年度には、種々の金属の塩化物と硫酸塩をスギ木材に含侵後に乾燥させた試料を用いた検討により、木材多糖の熱分解により生成するレボグルコサンを揮発させずにできるだけ炭の方に誘導することが、炭化物収量を増大させる上で重要であることが判明した。この考え方は、炭化物収率を飛躍的に増大させる手法を考案する上で重要な視点である。また、カルボキシ基やフェノール性OH基などの官能基の生成に対して、リグニンの熱分解反応を用いて説明できる結果が得られており、構成成分の熱分解を制御することで官能基の組成を制御できる可能性が示唆された。一方、炭化により表面の化学的性質が親水性から疎水性に変化し、水溶液のアクセシビリティが低下することが、細胞壁のナノ集積構造に由来する細孔中に生成した官能基の定量評価を困難にしている可能性も示唆され、官能基の評価方法をさらに検討する必要があることも示唆された。このように当初予想していなかった課題があることがわかったが、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
炭化物収率の増大とバイオ炭機能のテーラーメードな制御を可能にするような基盤サイエンスを見出すことが本研究課題の目的であるが、最終年となる令和6年度には以下の検討を予定している。まず、炭化物収率の増大については、これまでの研究で判明しているポイントを整理し、木材の70%を占める木材多糖を、無水糖や断片化物およびCOやCO2などのガスとして揮発除去させないような方法論を主に添加物を用いることで提案したいと考えている。官能基については、まずは、表面疎水性化の問題を解決し、細胞壁のナノ構造を持たない単離リグニンで確認されたフェノール性OH基の生成、消失挙動が木材細胞壁の炭化でも起こっているのかどうかを明らかにする。また、バイオ炭として土壌中で機能するためには、表面の親水性化が重要であると考えられ、その手法についても検討を進める。
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