Origin of photosynthetic oxygen evolution on ancient Earth
Project/Area Number |
22K19270
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 43:Biology at molecular to cellular levels, and related fields
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野口 巧 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (60241246)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 光合成 / 光化学系Ⅱ / 酸素発生 / 水分解 / アミノ酸変換 / 進化 / マンガンクラスター |
Outline of Research at the Start |
約24億年前のシアノバクテリアにおける酸素発生型光合成による酸素放出(大酸化イベント)は、地球大気を酸化型大気に変え、その後の酸素呼吸生命の進化を促した。一方、「大酸化イベント」の数億年前から酸素が存在していた痕跡が報告されており、光合成酸素発生の起源は謎として残されている。本研究では、シアノバクテリアへの変異導入によって、酸素発生の触媒部位であるMnクラスターの配位子系が未完成の祖先型光化学系Ⅱを再現し、光合成酸素発生の起源と進化過程を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究において、光化学系Ⅱの光合成酸素発生系において、Mn4CaO5クラスターのカルボキシレート配位子を他のアミノ酸に改変すると、タンパク質レベルでアミノ酸変換を起こし、本来のアスパラギン酸/グルタミン酸に戻るという、翻訳後アミノ酸変換現象を見出していた。しかし、これまでの実験では、変換を起こすアミノ酸は、ヒスチジンやアスパラギン、グルタミンなどの活性置換基を持つアミノ酸に限られていた。そこで、この光合成酸素発生系における翻訳後アミノ酸変換現象の一般性を調べるため、MnとCaを架橋するアスパラギン酸配位子(D1-D170)を、炭化水素鎖で構成され、活性置換基をもたない脂肪族アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)に変換した変異体(D1-D170A, D1-D170V, D1-D170L, D1-D170I)を作成し、これらのアミノ酸が翻訳後アミノ酸変換を起こすか否かを調べた。その結果、D1-D170A変異体では酸素発生は見られなかったが、D1-D170V, D1-D170L, D1-D170I変異体では10-40%程の酸素発生活性が確認できた。また、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)解析により、アラニンでは変換が起こらず、バリン、ロイシン、イソロイシンではアスパラギン酸または、アスパラギン酸/グルタミン酸誘導体への変換が認められた。これらのアミノ酸は、Mn4CaO5クラスター構築過程で生成する活性酸素によって酸化され、カルボキシレート配位子が形成されると予想された(アラニンは炭素数が足らずに変換ができない)。これらの結果から、光合成酸素発生系における翻訳後アミノ酸変換は一般的な現象であることが示された。本研究の結果は、この翻訳後アミノ酸変換現象が、光合成酸素発生の起源と進化に関与したという我々の仮説を支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光化学系Ⅱの酸素発生系におけるアミノ酸変換によるMn4CaO5クラスターのカルボキシラート配位子形成が、DNAレベルではなく、タンパク質レベルで翻訳後に起こる現象であることを、同位体置換アミノ酸とLC-MSおよびFTIR解析を用いて確実に証明した。また、イミダゾールやアミド基などの活性置換基を持つアミノ酸(His, Asn, Gln)だけではなく、炭化水素鎖のみで側鎖が構成される脂肪族アミノ酸(Val, Leu, Ile)に改変した変異体についても、翻訳後アミノ酸変換によるカルボキシラート配位子形成と酸素発生活性の回復を観測することができた。これらの結果から、光合成酸素発生系における翻訳後アミノ酸変換現象がMn4CaO5クラスターのカルボキシラート配位子を形成する一般的な現象であることを示すことができた。このように、祖先型光化学系Ⅱにおける翻訳後アミノ酸変換が、24億年前の大酸化イベント以前の太古の地球における酸素発生の起源である、という我々の仮説を支持する結果が順調に得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、光化学系Ⅱの光合成酸素発生系の配位子位置における、イミダゾール基を持つヒスチジン、アミド基をもつアスパラギンおよびグルタミン、炭化水素鎖から成る脂肪族アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)のアスパラギン酸/グルタミン酸、あるいはその誘導体への変換と酸素発生活性回復が確かめられた。そこで、芳香族アミノ酸や含硫黄アミノ酸など、他のアミノ酸に改変した変異体を作製し、その翻訳後アミノ酸変換の可能性をさらに追求する。また、アミノ酸の位置依存性(どの配位子位置でも変換可能か、あるいは配位子位置以外のアミノ酸残基でも変換可能か)を調べる。さらに、アミノ酸変換の中間体をLC-MSを用いて検出する、遊離アミノ酸と活性酸素の反応による生成物を調べるなどして、翻訳後アミノ酸変換の化学機構を調べ、本アミノ酸変換現象の全貌を明らかにする。そして、翻訳後アミノ酸変換の酸素発生系の起源と進化における役割についての洞察を得る。
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Report
(2 results)
Research Products
(31 results)