Project/Area Number |
22K19323
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 44:Biology at cellular to organismal levels, and related fields
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
岡本 昌憲 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (50455333)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | シロイヌナズナ / 植物ホルモン / アレロパシー / 遺伝学 / アブシシン酸 / 生理活性物質 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Research at the Start |
植物の成育を撹乱するアレロケミカルとしてキノコから単離されたフェアリー分子群は植物にも微量に内在しており、新たな植物ホルモンとしての定義に合致しうる特性を有している。しかしながら、フェアリー分子が生理作用を引き起こすためのシグナル因子は未だ報告がない。そこで、フェアリー分子の分子レベルでの作用機構を目指し、変異株の単離、原因遺伝子の特定、植物分子生物学的解析を通じて、フェアリー分子が新しい植物ホルモンになり得るかどうかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
植物の成育を撹乱するアレロケミカルとしてキノコから単離されたフェアリー分子群は植物にも微量に内在しており、新たな植物ホルモンとしての定義に合致しうる特性を有している。しかしながら、フェアリー分子が生理作用を引き起こすためのシグナル因子は未だ報告がない。そこで、フェアリー分子の作用秩序の解明を目指し、分子生物学研究に優れたシロイヌナズナを使って感受性変異株の単離を目指した。 シロイヌナズナの世界標準系統であるコロンビアはフェアリー分子群への反応は強くないものの、シロイヌナズナの野生系統にはフェアリー分子群への感受性の高い系統が存在することを発見した。E184野生系統はAHXに対して高感受性を示し、400uMで種子の発芽が完全に阻害される。さらに、E185系統は数十uMのAHXに対して根の伸長阻害などが観察さることから、E185系統を用いて遺伝学的な解析を進めることにした。E185系統の種子にエチルメタンスルホン酸(EMS)で変異処理した変異集団から、AHXに低感受性を示す変異株をこれまで39種単離してきた。これら変異株の植物体は大きく分けて、①生育過程で、萎れやすく、葉の形態が丸まった変異株群と②植物体の大きさが若干小さくなったものの、形態的にE185野生株と同等の変異株群の2種類に大別された。 ①の変異株においては、アブシシン酸の欠損変異株あるいは非感受性変異株である可能性が疑われたために、候補となる原因遺伝子について変異を解析した結果、39の変異株のうち、実に25の変異株がABA欠損であることが明らかになった。興味深い事にABA3遺伝子に変異を持つ変異株は15つであった。ABA3はモリブテンコファクター(MoCo)の生合成酵素遺伝子でもあり、ABA生合成酵素のアルデヒド酸化酵素の活性に必要な補因子を供給する。以上の結果から、ABAあるはMoCoがフェアリーの感受性に関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生育過程で、萎れやすく、葉の形態が丸まった変異株群①については、植物の乾燥ストレス応答に必修の植物ホルモンのアブシシン酸(ABA)に関連した変異株である可能性が疑われたために、ABAの欠損変異株あるいはABA非感受性の変異株であるかをジベレリン生合成阻害剤のウニコナゾール上で発芽できる性質を指標に試験した。さらに、浸透圧ストレス後に誘導されるABA応答性遺伝子発現(AtRD29BやAtMAPKKK18)の遺伝子発現誘導の変化や内生ABA量の測定を通じて変異株の特性を明らかにした。その結果、単離された39の変異株のうち、実に25の変異株がABA欠損であることが明らかになった(前年度では、解析が不十分で19の変異株がABA欠損であると判定されていた)。AHXに対して低感受性の変異株のうち、ABA欠損変異株と疑われる25の変異株について、すべてのABA生合成酵素遺伝子(ABA1,ABA2,ABA3,ABA4,NCED3,AAO3)の遺伝子配列を解析した。まず、昨年度に6つ変異株がABA2遺伝子に変異を有していることが明らかになったが、そのうちの2つの変異は塩基レベルでの変異があったものの、アミノ酸配列は変化していなかったことが判明し、最終的に4種の変異株がABA2遺伝子に変異を有していた。残りの21の変異株についての内訳は、ABA1遺伝子に変異を持つ変異株が5つ、ABA4遺伝子に変異をもつ変異株が1つであり、興味深い事にABA3遺伝子に変異を持つ変異株は15つであった。一方、NCED3遺伝子やAAO3遺伝子に変異を持つ変異株は存在しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
残りの14変異株は②に大別されるものであり、そのうちの7つの変異株は、浸透圧ストレス後にABAの蓄積が若干観察されることやABA応答性遺伝子の発現誘導が弱くなっていることからABAシグナル伝達に関連するプロテインフォスファターゼ2C(PP2C)のドミナント変異であることが予想された。また、残りの6つの変異株については、浸透圧ストレス後のABAが十分に蓄積されることや、ABA応答性遺伝子の発現が正常に誘導されることから、ABA生合成やシグナル伝達とは関連性のない因子、つまりはAHXの感受性に関わるシグナル因子の可能性がある。NGSを用いたMutmap法により、候補遺伝子の特定を行い、現在、ゲノム編集によって変異アレルの単離、および変異株に正常な遺伝子を導入し形質が回復するかを確かめている。
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